目眩まし
夜の戦場は動き続ける。
止む事のない金属のぶつかり合う音が通りに響く。
「ふっ…、はぁっ!」
「フィア アルゥ! 火よ、飛べっ」
レミアータとフィリアは互いにフォローし合う形で五人の影と渡り合っていた。
前に出たレミアータが影の多くを引きつけ、フィリアが残りを捌きつつ、前衛の彼女の援護に回る。
「………」
影もさる者。その道のプロだと思わしきだけあり、その連携や動きは油断がならないものだ。
入れ替わりに攻め入り、多方向からフィリアたちの動きを崩しにかかる。
「レミさん、10追だけ時間を稼げますか?」
再び背中合わせになったとき、フィリアが背中を預けているもうひとりに小声で問う。
「この技量の相手五人に10追ですか…。分かりました、なんとかやってみましょう」
「10追後、合図をしたら目を瞑って、宿の方に走ってください。何があってもです」
背中越しのフィリアの言葉にレミアータは黙って頷く。
「――行きますっ」
「フォース イルヤル アルゥっ。明かりよ、瞬けっ」
ふたりの声に合わせてレミアータは剣を地面に向けて自分たちを囲うように振るう。
剣より放たれるのは一筋の波動。
波動が石畳を切り裂き、砕かれた石が空中に飛び散って壁を作った。
スキル《土隆》
「…………っ!」
これに不意を打たれた形となった影たちだったが、すぐに動揺を抑えきり、壁も関係なく前に突撃をする。
しかし石に阻まれ、僅かに出来た隙をレミアータは見逃さず、飛び込んできた影のひとりを叩き切った。
(入ったが…、浅いっ)
振った剣は影を切り裂いたが、咄嗟に身体を無理矢理に捻り、地面に足を付けて後ろに下がった相手に致命傷は与えられなかった。
だが、その一撃に警戒した他の影たちが一旦スピードを落とす形でたたらを踏んだことで、時間に余裕が生まれる。
石の壁が収まると同時に動き出そうとした影たちよりも早く、フィリアの魔法が発動した。
「レミさんっ」
フィリアの声を合図に段取り通りに目を瞑るレミアータ。そうして一瞬にして夜の闇に広がる閃光。
突然の光に目を潰された影たちが動きを止めると、目を開いたフィリアとレミアータは先に確認しておいた宿の方向へと駆け出した。
「追いつかれるかもしれませんが、近くまで行けば誰かと合流できますっ」
走りながら懐から照明弾を取り出したレミアータがそれを空に向けて打ち出す。
これで場所を知った部隊の仲間から応援が来るはずだ。
それまであとは宿に向けて走ればいいと、ふたりは駆け続けた。




