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魔法使いの雑貨屋  作者: 狸寝入り
《第二章 王女様とレイビィトの霊薬》
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回収採集

  崩れ落ちる巨大なフィオの身体。

 本来ならば流れ出すような液体状の身体も半ば凍っていたので、そこまで凄まじい事態にはならずにすんだ。


「証拠ももしかしたら必要かも知れないし、粘液を回収しましょう。……未知の素材っていうのも勿体無いし」


 戦闘が終わり、一遍に気が抜けた一同はフィリアの発した声に、再び動き始めた。

 最後に小さく本音が交えられたが、それでも彼女の言うことも最もだと判断したためだ。 

 ここはまだ安全地帯とはいえない場所であり、気を抜くには早いと皆がもう一度、気を引き締めなおした。


保管器プリサーバーの数にも限りがあるから、そこは忘れないでくれよ。皆、傷を受けた者は治療を受けておけ。余力があるやつは素材の回収だっ」


 新しい素材に夢中なフィリアの様子に苦笑しつつ、カイオールが部隊の人間に指示を飛ばす。

 先の戦闘で傷を受けた者は、軽傷ならば自身の手持ちの下級治癒薬で、それ以外はフィリアたちから薬を預かっているレミアータたちのもとに向かった。

 重傷者もすでに上級治癒薬で治療が完了したようで、体力的に不安は残るが素材の回収くらいならば手伝うと申し出てくる。


「しかし、未知の素材だけあって何に使えるかは研究が必要だろうな。根気のいる作業だ…」

「それが楽しいんだし、いいの。 ロニール師だってきっと同じだと思うよ」 


 ネイトが保管器プリサーバーに入れた凍った粘液の塊をしげしげと眺めながら呟くと、それにフィリアが楽しげに笑いながら応える。

 魔法使いには研究好きが多い。

 フィリアもその例に漏れずに雑貨屋の商品開発などにも積極的だ。新しい薬や素材は特に彼女が好きな分野でもある。


「それにしてもフィリア嬢、見事な魔法と作戦だったね。気になっていたんだが、あの塩はどうして持っていたのかな?」

「ジ、ジルオニクス様っ!? そんな、素材の回収なんてわたしたちでやりますから殿下は休んでいてくださいっ」


 未だに少し緊張する声に振り向けば、他の人たちと同じように保管器プリサーバーを片手に、素材を回収している殿下が見えてフィリアは目を剥いて驚いた。


「気にしなくていいよ。これは私がやりたいと思ったからやっているんだしね。何より、戦闘で気を張っていた身体には丁度良いほぐし方だ」


 命を懸けた戦いが終わった後とはとても思えないような、きらきらしい微笑を湛えながらもジルオニクスは回収を続ける。

 それを慌てて止めようとフィリアが動こうとするが、ネイトにそれを阻止された。


「ネイトっ。なにっ!?」

「フィーはいいから回収だ。……今は人手も足りない。ジルオニクス様は必要だったら副団長が止めているしな」

「……うぐぅ」


 変な声を出しながらもフィリアはしぶしぶ引き下がる。

 一応、納得してもらえたかとジルオニクスは隠れて笑っていたが、先ほど聞いていたことを再度聞くことにした。


「それで、塩のことはどうしてか聞いてもいいかな?」

「え、あ、申し訳ありません…、お答えしていませんでした…。塩はですね、先日市場で大量に買い付けた物なのです。家に帰ったら荷物から出そうと思っていたのですが、そのあと色々とありまして、出し忘れていたんです」


 恥ずかしそうに俯きながら質問に答えるフィリア。

 買い物した物を忘れてそのままにしていたなんて、本来ならば恥ずかしくて堪らない出来事だ。

 その様子にジルオニクスはしかし、得心がいったように何度も頷いた。


「なるほど。今回は偶然に助けられたということだね。……本当に貴女があれを持っていて助かった。ありがとう」


 王子殿下からの直接の感謝の言葉にフィリアは目を見開き、そのあと頬を赤くして固まった。

 その様子をネイトが隣でどこか面白く無さそうに見ていたのは、当然といえば当然である。

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