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魔法使いの雑貨屋  作者: 狸寝入り
《第二章 王女様とレイビィトの霊薬》
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吹雪と剣閃

(この機会チャンスを逃すわけにはいかない―っ!)


 カイオールの合図に反応して、フィリアは待機させていた魔力を解き放った。


「凍って!」


 半ば願いにも似た言葉を発しながら杖を振る。

 大半の騎士たちは先の一撃の際にすでに後方に下がっていることと、まだ目標の近くにいるジルオニクスも盾の騎士がその身を護っていることは確認済みだ。

 あとは暴走しないように魔法を自分が制御しきればいいとフィリアはより深く集中した。



「ネイトくん、行くぞっ」

「はい、行きましょう」


 フィリアの魔法が発動される直前、コルベとネイトも自身の役割を果たすために麻袋を大量に抱えて走り出していた。目標はもちろん猛威を振るっているグランレイフィオだけだ。


(こっちは任せろ。フィー、やれっ)


 心の中でネイトがフィリアに向けてエールを送ったと同時、グランレイフィオの周囲に冷気が殺到した。



  グランレイフィオを凍てつく空気が包む。

 すでに周りの地面は凍りついている。場所が湿地帯ゆえに水気があるのも幸いした。水は氷となり、地面を走る。

 グランレイフィオの周囲は吹雪というのも生易しい状態になっていた。

 直に冷気を当てられて、さしものグランレイフィオもその身を凍らせていく。

 自身が凍りついていくことに気付いたところで、生命核を激しく明滅させて身体の熱を高めていくが、完全には追いつかない。

 やがて吹雪が収まったときには、ゲル状の身体の表面から一部内部までが凍りついたグランレイフィオの姿があった。


「今だっ」


 あれが身体に熱を取り戻すまでそう時間はかからない。すでにその身からは氷を溶かすために熱を発し始めているのが分かるほどだ。

 その前にさらにあれの動きを鈍らせなければならないとネイトとコルベは持っていた麻袋をグランレイフィオの頭上へと放り投げる。

 それを周りの騎士たちが遠距離系攻撃スキルで切り裂くと、白い粉のようなものが巨体に降り注いだ。

 粉を浴びたグランレイフィオの動きがさらに鈍くなっていく。熱を取り戻し始めていたはずの身体が再びそれを失っていっているのが分かった。

 降りかかった粉の正体は塩だ。本来、塩を溶かした水などは凍りにくいのだが、凍ったものに塩をかけるとその熱を奪う効果がある。

 普通の肉体を持つ相手ならば通用しない手段だが、グランレイフィオの肉体はゲル状で、液体のようなもので構成されている。

 故にその身を凍らせてしまえば、それに降りかかった塩がその熱を奪うことになる。


「総員、かかれっ!!」


 最大の好機にカイオールの号令が響くと皆が剣を手に取り、グランレイフィオの身を削っていく。

 熱を奪われ、身体が固まり、動きの鈍くなったグランレイフィオに向けてネイトとジルオニクスが剣を構えて駆け出す。

 ジルオニクスは先の一撃で大技を繰り出す余裕はないが、それでもまだ戦えると走る。


「ネイト殿、合わせるぞっ」

「承知しました!」


 ふたりは走り並び、呼吸を合わせる。

 技量はジルオニクスの方が上だが、今の状態では差し引きでどちらともいえない。

 しかし、だからこそできることがある。


「おおおぉぉぉぉ!」


 ふたりの叫びが重なる。

 そうして速度はそのままに、ふたりの剣がグランレイフィオの生命核へと向かって振り切られた。

 交差する剣閃の軌跡。十字のような斬撃の跡がグランレイフィオを切り裂く。

 複合スキル《クロスブレイド》。

 呼吸を合わせた剣士ふたりで放つ合体スキル。その威力はひとりで放つ上位スキルに匹敵するともいわれる。

 その剣技がグランレフィオの核を打ち砕いた。

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