開戦
グランレイフィオは作戦会議を終えたあともまだ食事中だった。
そこから動かない相手を見据え、騎士たちは静かに二手に分かれる。
一箇所から仕掛けたのでは、万が一のことがあると判断したカイオールが左右から攻めるように皆を指示した結果だ。
しゃがみこんだまま、カイオールが手だけを草陰から少し見えるように出してサインをもう一方の部隊に送る。
そのサインに反応して、向こうからも微かに見える程度にサインが返ってきた。
「準備はいいか?」
一度だけ後ろを振り向き、自身の背後からついてきている他の騎士やフィリアたちに確認を取る。
これからの戦いでは油断が許されないということもあって、皆それぞれ緊張した面持ちで頷いた。
「……いくぞっ」
カイオールが号令を掛けると同時、サインを向こうに送り、草陰から飛び出す。
反対からもサインを受け、気合の声をあげながら騎士たちが駆け出している。
「アンブラス バンスィ クレース サニィ アディっ。暗きものよ、光を消せっ」
《アンブラス》 司るは暗闇の力。
騎士たちが駆けたことと合わせて、戦場に美しいソプラノボイスが響き渡る。
そしてフィリアの足元から《アンブラス》の呪紋陣が浮かび上がり、薄黒い光を放つ。
続いて現れた呪紋が混ざり合い、融けて光を強くしていく。
光が放たれたことを確認した盾持ちの騎士たちが自らを守る光の盾を展開する。
数追遅れて、放たれていた光がフィリアのもとに集まり、そして魔法が展開された。
「術を通すな、前に出ろ!」
盾にまるで巻きつくように発動された魔法が絡みつく。そうして、透明だった盾は黒い影を纏った光を遮断する盾となった。
そのときになってようやっと自身に向かってくる敵に気づいたグランレイフィオがその巨体を震わせる。
波打つ身体はまるで大波のようで、その青白い体色と合わせて光を反射する海を思わせた。
「《肉体能力強化》っ」
最前列で駆ける騎士たちが眼前の敵の動きに合わせてスキルを発動すると、それに合わせて走る速度が一気に上昇した。
猛スピードで敵に詰め寄るとその抜き放った剣で皆がそれぞれの《斬鉄》に類するスキルを使用する。
これにはグランレイフィオも慌てたようで、肉体変化で体表を岩に変化させるもそれをスキルが難なく切り裂く。
この湿地帯では自身の肉体に傷をつけられる相手などいなかったはずのグランレイフィオは、声なき悲鳴をあげるようにその身体の震えを激しくする。
「まずい!」
肉体変化を使用している騎士のひとりが叫ぶと、一足で再び間合いを詰めてグランレイフィオに斬りかかる。
震えを激しくしながらも、その身に光を纏い始めていた巨大なフィオは斬られて、その光を散らせる結果となった。
「……行けるぞっ」
ひとりの騎士がその様子を見て、今までの戦闘の流れから自信に満ちた呟きを漏らした。
しかし、その自信もつかの間、騎士の瞳は驚愕に染められることになる。
グランレイフィオがその巨体を再び震わせ、生命核が異常に点滅を繰り返すと術の溜めもなく、波打つ身体から突然に光の波動が放たれた。
「なにっ!?」
近くで戦闘を行っていた騎士たちは波動に弾き飛ばされて、地面を転がされることになった。
「これは…」
そうして、しかしすぐに体勢を立て直して顔をあげるとそこには光の防御膜を張ったグランレイフィオの姿。
続いて、膜の中心で術を準備していることが見て分かるほどに体を震わせる様子が目に入った。
「総員、盾の後ろにまわりこめぇぇーっ!」
カイオールの叫び声が戦場に響き、巨大な魔物から無数の光線が発射された。




