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魔法使いの雑貨屋  作者: 狸寝入り
《第二章 王女様とレイビィトの霊薬》
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条件とは

  スレイフォンレイブとの対話を終えたフィリアは元来た道を下り、皆が緊張したまま待っている場所まで戻った。

 彼女が戻ると、カイオールたちはすぐさま駆け寄ってくる。


「フィリアちゃん、無事か!?」

「下からでもあの気の凄まじさが伝わってきた。無事かい、フィリア嬢」

「ご無事なようで安心しました…。良かったです…」


 寝床から離れていたにも関わらず、伝わってきた途轍もない力の奔流にフィリアの身を心配していた人たちが集まってくる。

 それにフィリアはさすがに疲れたように笑いながら手を振って無事をアピール。

 しかしその後ろから急に頭を気遣うように軽く叩かれて、驚いて背後を見るとネイトが少し怒ったような顔で立っていた。


「顔色が悪いのに無理して大丈夫とか言うな。フィーは変なところで無理する癖がある」

「あはは、さすがにネイトにはバレちゃうねー」


 今度は困ったように笑みを零すフィリアにネイトは嘆息した。


「それで、角は?」


 とりあえず早く案件を済ませて休ませたほうがいいと判断した彼は、他の誰よりも先に訊ねる。

 その質問に周りの誰もが思わず息を飲んだ。さすがに今回の一番の目的だったため、皆もそれが最も気になるところだった。


「すぐには貰えなかった。でも頼み事をされて、それを何とかすれば少し分けてくれるっていう事になったよ」


 貰えなかったという言葉に一瞬、全員が肩を落としたが、続いたフィリアの言葉に希望を見て顔を明るくする。

 しかし、隊の中でも上位の者たちは聖獣からの頼み事というのに表情を険しくした。


「頼み事、ねぇ…。一体どんな内容か聞いても?」


 もしかしたら秘密の内容で、フィリアがひとりでこなさなければならない可能性も考えて、カイオールが問う。その質問に、問われた本人は黙って頷いた。


「誰の力でも借りて良いって言ってましたから、大丈夫だと思います」

「そうか。それじゃとりあえずカイオール副団長殿?」

「分かっております、殿下。各員、俺たちがフィリア師から事情を聞いている間は周囲の警戒にあたれ。ああ、レミアータはフィリア師の専属護衛だから残っておけ。あとはネイトもだな」


 指示を出されると周りにいた騎士たちは了解、と唱和してそれぞれが周辺に散って行った。


「さて、とりあえず腰を下ろして聞こうか。その頼み事ってやつをさ」


 カイオールがウィンクして残った面々に座るように促す。


「私から座らないとさすがに皆、座れないだろうね」


 ジルオニクスが苦笑しながら座り込むと、それから全員が習って腰を下ろした。


「それじゃ、フィー。頼むぞ」

「ええ、集中して聞きましょう」


 そうして視線を集中される形となったフィリアは慣れない感覚に戸惑いながらも口を開く。


「聖獣さんの頼み事っていうのは、魔物の討伐でした」

「魔物の討伐、となるとやはり頼みというよりは試練のそれに近いのだろうね」

「はい、わたしもジルオニクス様の言う通りだと思います。たぶん角を渡すのに相応しいかどうかを試してるんだと」


 頷くフィリアへとカイオールが視線で先を進めるように伝える。


「討伐する魔物はグランレイフィオという相手で、フィオ系の上位種らしいです。わたしはこの名前に覚えがないんですけど、どなたか知ってる方は?」


 座る全員の顔を見渡してフィリアが訊ねるが、しかし皆浮かない顔だ。


「俺たちも聞いたことがないね…。記憶にある限り、そんな名前の相手と遭遇したという記録は残っていなかった気がするけど」

「という事は新種、でしょうか。事前情報が無いとなると厄介ですね…」


 最も多くの魔物たちと相対して、その対策にも余念がない現役騎士であるカイオールやレミアータですら名前も知らないとなると、ほぼ間違いなくそうなのだろう。


「特徴はどんなものなんだ? それから出現ポイントは?」


 名前だけではどんな相手かも分からないし対策も立てられないので、ネイトはフィリアに問うた。恐らく聖獣の試練といえども、それくらいの情報は伝えてあると踏んでいた。


「見た目は巨大な紫色のフィオらしくて、魔法とかも使ってくるって言ってた。何でも今、塔の21層で上から降りてきたらしくて、他の生き物とかに悪影響が出てるみたい」


 彼にだけは思わず敬語ではなくなるのだが、本人はそれに気づかずに話を続ける。


「その生態系に影響が出てる原因を除けば良いって話だったよ」

「なるほど…。21層っていうと湿地帯だったかな」

「ええ、殿下も行ったことがあるのですか?」


 まぁね、とジルオニクスがカイオールの肩に手をおいて頷く。


「とりあえずフィリアさんのお話も聞けましたし、一度拠点に戻ってはどうでしょうか? 時間もそろそろ遅くなりすぎます」


 レミアータからの進言にカイオールは同意し、勢いよく立ち上がった。


「総員、集合っ。人員確認後、13層へ上がって拠点に帰還する!」


 大きな声が響き、騎士たちがすぐさま集合する。問題は明日に持ち越されることになった。

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