魔法薬と治癒薬
なんだかんだで連日投稿できております。
また途轍もなく忙しくなり始めたのでそう長続きしないと思いますが…。
あのあとすぐにネイトは学園の騎士訓練が始まるということで、大変申し訳なさそうな表情で帰っていった。
そんなに気にしなくてもいいのに、と思いつつも責任感の強いネイトのことだから無理だろうなーと結論づけるフィリア。
今度久しぶりに一緒に遊びにでも行こうと決めてさっそく行動を開始する。
時間は常に有限なのだ。
「とりあえず必要な材料集めに目処をつけないと」
そうしてまずは必要な材料を書き出してみることにした。
【上級魔法薬の材料】
・フレイル草
・上級精錬魔石の粉末
・ブルーフィオの粘液
・ノインヴィーの蜂蜜
【必須技能】
・スキル Lv.10以上の《調合》:調合の最大Lvは15
・魔法 《ウォー》の呪紋を用いた魔法:呪紋の司る力は流水
・魔法 中級以上の《フォンヘイル》の呪紋を用いた魔法:呪紋の司る力は祝福
【上級治癒薬の材料】
・フレイル草
・上級精錬結晶の粉末
・クリームフィオの粘液
・ノインヴィーの蜂蜜
【必須技能】
・スキル Lv.10以上の《調合》
・魔法 《クラージュ》の呪紋を用いた魔法:呪文の司る力は治癒
・魔法 中級以上の《フォンへイル》の呪紋を用いた魔法
このうち必須技能についてはフィリアは既にクリアしてる。
彼女の調合スキルはつい先日にLv.11になったばかりであるし、魔法についても問題なく習得している。
―――スキルというのは、ほとんどの物が何かしらの訓練で身に付けられる技能である。
それに対して魔法というのは言わずもがな、生まれた時の才能に完全に依存する。
スキルを使用するのに必要なのが生物に必要不可欠な生命力であり、魔法を使用するのに必要なのは魔力であるためだ。
魔力は後天的には手に入らないものであるということがこの世界の常識だった。
そして魔法、それは魔力に加えてこの世界の力ある文字、呪紋と呼ばれるものを用いて初めて使うことができる技能である。
呪紋は現在確認されているもので36の数がある。
呪紋自体もある程度の数はスキルと同じく練習を繰り返すことで使用できるようになるが、それ以上となると才能によるところが大きい。
例え魔力を持っていても一流の魔法使いになることは大変難しいことなのだ。
「とりあえず精錬関係の物も魔法でなんとかなるだろうし、フィオ系とヴィー系の魔物素材は卸業者から直接発注でなんとかなる。
問題はフレイル草なんだよねー…。あれ、下級中級の薬にも使うし他にも用途いろいろで毎回、一定の数を変わらずに納品してもらうってなると難しいんだよね…。
やっぱり専用の領域スペースが欲しいなぁ」
うんうん唸りながらフィリアは最大の懸念事項であるフレイル草の仕入れ方法について悩む。
確かにフレイル草はその汎用性の高さから常に品薄状態が続いている。
品薄状態を脱するために他の大手商店や商会は領域スペースが申請可能な地域でフレイル草の群生地を領域として保有してるのだ。
領域を保有すればその一帯を管理することと引き換えにそこのフレイル草を独占することが可能になる。
とはいえ、大抵の群生地は既に領域申請が出されているので今から新しい領域を手に入れようとするというのは簡単な事ではない。
「分かってるけどやっぱり欲しいなぁ。……んー、まぁとりあえず何をするにも情報収集からだよね。
最近は冒険者ギルドの方にも顔出してなかったし、一回行ってみようかな」
とすれば膳は急げである。
ネイトと話したり一人で悩んでいる間に結構な時間が経っていたらしく、既に時刻は18の刻を過ぎていた。
時間的にはそろそろ外に出ていた冒険者たちが街に戻ってくる頃合だ。
店を閉めるには少し早いが問題ないだろうと判断してフィリアは店じまいの準備を始めた。
店じまいと大げさに言ってもお客が来なかった以上、戸締りなどの簡単な作業だけであったのだが。
そうして私室に戻ったあと、フィリアはすぐさま外出用の服に着替える。
黒を基調として裾を中心に細かく金の刺繍が入ったローブに袖を通し、冒険者に丈夫で脱げにくいと評判の革のブーツを履く。
手にはこれもローブと同じく黒色の手袋を付け、そして腰にはアイテムポシェットを通した。
アイテムポシェットの中にはフィリアが自分用にカスタマイズした緊急連絡用アイテム、集音器と伝音器のセットと他にも下級の魔法薬や治癒薬を詰めてある。
冬場でも安心な厚い茶色の外套を羽織り、腰に青鉄の短剣を周りからも見える様に調整して装備する。
最後にベルクフォーレの魔杖を今度は他の人には確認できない位置に装備して準備は完了。
「忘れ物も多分なしっと。それじゃ、寒いけど行こっと!」
これから行く冒険者ギルドや冒険者たちの溜まり場になっている酒場には装備をきちんとしていかなければ舐められる。
ただでさえ自分は女なのだから用心しすぎて悪いことはないと心の中で頷き、フィリアは夜の街に繰り出した。