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魔法使いの雑貨屋  作者: 狸寝入り
《第二章 王女様とレイビィトの霊薬》
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「こちらは王宮騎士団副団長、カイオール=フォーストリアとその部隊である。そしてこちらがリフェイル王家、王太子ジルオニクス殿下だ。此度は王からの密命により参った。転移陣の使用許可を頂きたい」


 カイオールが自分たちの所属と目的を告げると、建物の入口である門を警備していた衛兵たちは慌てて姿勢を正した。


「道中、お疲れさまでした! 所属等を確認したいので書状などはございますでしょうかっ?」


 衛兵たちもジルオニクスやカイオール、その他にも目に付く騎士たちの顔には覚えがあったが、こちらも仕事なので顔パスで通すわけにはいかない。転移陣は貴重なものであるし、塔には各国から多くの攻略者がくるからだ。


「そちらも任務ご苦労。これが王からの書状だ。ロニール師から証明紋も貰っているから確認してくれ」


 カイオールが衛兵のひとりに王から賜った書状を渡すと、ひとりが建物の中に確認に走った。


「ここのところ何か異常はないか? 例えば強力な魔物が外に出たなどだが」


 確認作業が終わるまでの間にジルオニクスが前に出て、残った衛兵に問いかける。


「はっ! 確認されている限りではそのようなことはありません。ただ、他の塔では妙な話が流れていまして、こちらでも確認に回っているところであります」


 まさか王族に直接話しかけられるとは思ってもいなかったらしく、問いかけられた衛兵は緊張で体を硬くしながら答えた。その様子を遠目で見ているフィリアは何やらその衛兵に親近感を抱いて温かい目でそのふたりを眺めていたりする。


「妙な話? どようなものだ、話してもらえるか?」

「はっ! 最近、塔の付近で魔物の上位種が目撃されているらしいというものです。塔の入口ではそのような魔物は確認されていなかったとのことなのですが、一体どこから現れているのかも分からないという話でして。もちろん噂程度なので真偽は不明ですが、念のため確認に動いておりますっ」


 衛兵の話にジルオニクスとカイオールは眉をひそめる。その話は今回の事件とも無関係ではないだろうと判断できた。


「その話は恐らく真実だろう。調査中だったため、こちらには連絡が届いていないようだが、上位種は確かに確認されている」


 カイオールが話を引き継ぐ形で衛兵に伝える。その内容に衛兵は目を丸くした。


「本当ですか!? ……それはこの塔の周辺、ということでしょうか?」

「ああ。…そうだ、ちょっと待て。――フィリアちゃん、ちょっと来てくれないかな?」


 カイオールに突然呼ばれる形で名前を挙げられたフィリアは一瞬、びくっと身体をすくませたが、すぐさまそちらに向かう。


「はいっ、なんでしょうか?」

「ああ、ちょっと話して欲しいことがあってね。君が1枝月ほど前に襲われた相手のことをこの衛兵に話してもらえるかな?」


 突然、自分から見れば娘のような年頃の若い少女を呼んだカイオールに、訝しげな様子の衛兵へフィリアは顔を向ける。


「分かりました。……あの、どうも初めまして。フィリア=グランツェリウスと申します」


 丁寧に頭を下げて礼をするフィリアに慌てて衛兵の方も敬礼を返す。


「これはご丁寧にどうも。私はブロッサ=ロイニグスです。それで、カイオール殿が言っておられた話とは…?」

「あ、はい。最近、近くの森でフレイル草の群生地が見つかったという話は?」

「ああ、聞いております。確かルードス家の方が管理を始めた場所だとか」

「はい、そこです。実はその場所にルードス家の方々より先に潜ったのはわたしなんですが、そこにはシャウラーレニエがいて、わたしも襲われたんです」


 つい1枝月ほど前の死闘を思い出しながら、改めてよく生きてたなぁと自分の事ながら感心しつつ話す。その話を聞いているジルオニクスはブロッサと同様に驚いた表情をしている。


「シャウラーレニエ出現の報は受けていたが、フィリア嬢が襲われていたとは知らなかったな」

「殿下には口頭のみの報告でしたから、知らなかったのも無理はありません」


 カイオールがジルオニクスの横からフォローに入るが、彼は重要なことを知らなかったことに反省の色を顔に浮かべた。


「そ、それでシャウラーレニエは討伐されたのですよね? 被害もそれなりに出たのでは?」

「そうですね…。相手のことを知らずに殺されてしまった方々は多くいたようでした…。ただ、討伐時に関しては死者は出ていません」


 フィリアの話にそれこそ信じられないというように目を見開くブロッサにカイオールが頷く。


「シャウラーレニエに関しては、このフィリア師が討ち取ったんだ」

「彼女が、でありますか!? まさかこのような少女が…。いや、しかし、『師』ということはフィリア殿は魔法使いなのでありますか?」

「あ、はい。王都で雑貨屋もやってますけど…」


 最近は王都でも上位薬を売り出すようになって、自分が魔法使いであるということが広まっているため、特に隠す必要も無くなってしまったフィリアは自分の今の状況に苦笑する。

 フリーの魔法使いは厄介事を避けるために自身が魔法使いだということを隠していることが多い。つい最近まではフィリアも同じく能力を隠していたが、店のことで仕方がなく明かさざるを得なかった。

 そうして予想通り、能力を明かした途端に色々と煩わしいことも増えたのは言うまでもない。店の客に扮してうるさくパーティ勧誘に来る冒険者やお抱えの魔法使いになれとしつこく迫ってくる貴族たち。さすがに少々嫌気が差しているフィリアだったが、それでもかなり少なくなっている方だ。

 しつこい勧誘についてはルードス家の人々が一緒に対処してくれるようになっていたし、貴族に関してもすでに対外的に見ればルードス家に属していることが分かると大体の相手が引き下がってくれた。


(考えてみれば、本当に助けてもらってばかりだなぁ…。今度改めてお礼しないとね)


 領域スペースの一件については後日、精錬の魔法と細工のスキルで特別製の護符をまとめて贈った。その時にネイトの両親から凄まじい歓迎を受けたが、その話は今は関係ない。次は何を贈ろうかという考えを隅におきつつ、フィリアはブロッサに目を向け直した。


「まぁ、死にかけましたけど、なんとか倒すことはできましたよ」

「……それは、さぞ大変だったでしょう」


 重々しく頷くブロッサに照れて頭をかくフィリアだったが、そこからカイオールが話を続ける。


「他にも、まだ詳しくは言えないが上位種が確認されている。調査をするにも油断はしないでくれ」

「承知致しました。他の者にも伝えて注意を呼びかけます」


 上官にも必ず報告することを決めると、ブロッサは敬礼と共に頷いた。

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