広場で気付け薬
あけましておめでとうございますっ。
本日の更新もなんとかできました。どうぞ今年もよろしくお願い致します。
本日、前話を少々改訂しました。感想にてご指摘頂いていました点です。
大した変更ではありませんが、ジルオニクス殿下の呼び方を修正してありますので、今後の話ではどうぞよろしくお願い致します。
何度か魔物に襲われたものの、怪我人も出ずに無事に塔の麓の町へと到着した一行は、町の中央広場に集まっていた。
「それでは、塔への突入は1刻後とする。30巡以内でフレオとカミラは宿の手配、他の物は荷馬車から道具類を降ろして各員へと振り分けてくれ。荷馬車については作業終了後に預かり所へと送るように。残りの30巡は休息とする。以上、行動開始!」
カイオールが号令を出すのと同時に騎士たちが動き出す。迅速な行動は後の時間に余裕を持たせるので、各自がきちんと仕事をこなすのは大切なことだ。準備を始めた騎士やネイトに続いてフィリアも手伝いを申し出る。
「あの、わたしも何か手伝いますけど…」
「ん? ああ、フィリアちゃんか。君は休んでいてもいいんだけど、そういえば冒険者もやってるって言ってたし、体力もそれなりにあるんだったね」
フィリアの後ろめたさのようなものを感じたカイオールは、このまま休ませても心苦しいだろうと思い、何か仕事はないかと思案する。
「そういえばフィリアちゃんは雑貨屋もやってるんだったね。とすると…、何か生産系のスキルを持ってるかい?」
「あ、はい。大まかな物は一通り持ってます」
「お、それはいいね。それじゃ、ちょっとこいつで何かできないかな?」
そう言ってカイオールが懐から取り出したのは青い石がいくつかと、一般的によく見かける薬草類だった。
「これ、道すがら拾ってきたんだけどね。あいにく俺は生産系は空っきしなんだよね」
「これって青月石ですよね。それとこの種類の薬草…。これなら下級クラスの気付け薬が作れますね」
フィリアは渡された物から作成できる薬をすぐに思い描いて判断する。その的確な判断にカイオールは微かに笑みを零した。
「さすがに薬学に詳しいね。それじゃ、そいつをできる数ぶんだけ頼むよ」
「はいっ。任せてください」
素材を抱え込むと、フィリアは荷馬車近くで作業している騎士たちから離れて、スペースの広い場所へと移動する。そこで愛用のポシェットから携帯用調合キットをひと揃え引っ張り出すと、調合作成の準備を整えた。
「さてさて、始めましょうか~」
こうなるとフィリアはいつも自分の世界に没頭する。ひと段落するまではとりあえず動き続けるのだ。
「まずは青月石を細かく砕いて…」
本当に残念なことに、ここは工房ではないために大型の砕物器はないので簡易式の小型版を使って石を砕いていく。出来上がる粉末も荒くなってしまうが、下級薬に使うだけならば充分だ。
「えと、次はすり潰しかな?」
いくつかの薬草を相性の良い物同士で組み合せてまとめてすり潰す。これは乳鉢で行うのだが、まとめてやるとそれなりに力とコツがいるので難しい。このときに上手く混ぜ合いながらやらなければ失敗してしまうのだ。
「よいっしょ、よいっしょっと」
軽く声をいれながらひたすらすり潰す彼女の、一見したら奇行とも言える様子を広場にいた冒険者たちが遠目から眺めているが、本人はそれに気づいてすらいない。
しばらくすると、薬草は完全にすり潰されて、フィリア自身も納得の出来になっていた。
「原液だとまずいから、薄めないと…。っとお水はどこだっけ…?」
「……ほら、これで足りるか?」
「あ、ネイト! ありがとー、これだけあれば足りるよ~」
「そうか、あまり無理はするなよ」
水を探してあたりをキョロキョロと見回すフィリアに気づいたネイトが彼女が動く前に先に水の入った大きめの容器を持ってきてくれていた。ついでに自分を気遣ってくれる彼にフィリアは子犬のように無邪気に笑って頷くと、礼を言って作業に戻る。
「ふぅ~、さてっと! ここからもう1回集中しないとね…」
額を拭う動作をすると、フィリアは砕いた青月石と混ぜ合わせた薬草類を少しずつ足しては混ぜ合わせ始めた。
そうしているうちに全体的に緑色をしていた液体が青みを帯びていく。しばらく混ぜ合わて良い具合の色味になったのを確認すると、彼女はネイトからもらった水をゆっくりとそれに加えて、また混ぜる。
「こんな感じでいいかな?」
指先に出来上がった液体を付けてひと舐め。軽く口内で効果と味を確かめると、頷いて完成と笑みを零した。
「小分け用の薬瓶はあったはずだけどっと」
ポシェットに手を突っ込んで、中を探るとすぐに目的の物を掴み取り、引っ張り出す。先日殺菌したばかりの薬瓶に完成した薬を適量ずつ分けていくと4本分が出来上がっていた。
「カイオールさん、出来上がりましたっ」
それをまとめてカイオールのもとまで持っていき、彼に確認してもらうために薬を見せる。
「お、早いね。やっぱり良い腕だね、ネイトくんに聞いてた通りだ。どれどれ」
瓶を一つ受け取ったカイオールはそれを光にかざして色味などを確かめるが、その辺で売っている物よりも良い出来の物だというのはひと目で分かった。
まず、液体の透き通り具合がまったく違う。濁りもなく、丁寧に作られていると分かる。これならば効果の方も期待できそうだとカイオールは判断して頷く。
「ありがとう。とりあえずそっちの後片付けが終わる頃には、こっちも終わるからあとは少し休んでいて」
「はい、それじゃ、そうします」
そう言って作業場まで駆けていくフィリアの背中をカイオールは正直、薬面などでは助かるとプラスに考えて、自身も作業に戻っていった。




