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魔法使いの雑貨屋  作者: 狸寝入り
《第二章 王女様とレイビィトの霊薬》
31/124

騎士と殿下

 終盤、感想でご指摘があった部分を改訂しました。

 王都を出発したフィリアたち一行は隊列を組みながら塔へと足を向けていた。ロニール曰く、スレイフォンレイブはどうやら『リュリダーヒロビアの塔』の12層でよく姿を目撃されているらしい。そのため、今回の捜索は12層付近を中心に行う予定だった。


「前方300メートル先にヴルフスキニス、数は7です」


まとまって歩いていると、あたりを警戒していた騎士のひとりより報告があった。それを聞いた途端、他の騎士たちも躊躇いなく抜剣する。


「フレオとレック、カミラは俺と共に前衛で敵を引きつけろ。ラスとバラッツは殿下をお護りしろっ。レミアータはフィリア師を最優先だ! ネイトは残りの者たちと同様にあたりを警戒しつつ、前衛のサポートに回れ!」


了解という皆の唱和を受けて場が動き出す。カイオールの指示のもと、戦闘準備が整った。

 フィリアも戦闘に参加しようと動こうとしたが、レミアータの余力を残しておくようにとの進言から大人しく後方へと下がる。

 ジルオニクスは護衛の騎士ふたりを従えながらも自身も抜剣して動く。本来のジルオニクスの実力はカイオール以上とすら言われているほどの才児のため、護衛は必要ないとも言えるが、万が一があってはならないとラスとバラッツの両名がついている。


「来るぞっ! 総員、構えっ」


 そうして接敵。

 ヴルフスキニスはスキニス系の下位魔物。見た目は草色の体毛をした野犬で、草木が生い茂る春先から草原地帯によく現れるようになる。体毛の色で草の色に擬態するため、慣れないものは目視までに時間のかかる相手だ。しかしその体調はスキニス系の中でも小型であるため、それほど手こずるほどのものではない。

 今回の戦闘においても統率のとれた騎士たちは互いをサポートし合いながら、その数を減らしていく。ヴルフスキニスの1匹が前に出て戦う騎士のひとりに飛びかかるが、それをサポートの者たちがすかさず切り捨てる。

 戦闘開始から僅か5巡の内に騎士たちは魔物を全滅させた。見たところ味方側に被害は無く、皆無傷であった。


「血の臭いに惹かれて他の魔物が来るかもしれない。各員、充分に警戒しつつ先へと進むぞ」


 カイオールの声を合図に戦闘終了をして、すぐさま進行を開始する。普段から鍛えている騎士たちはこの程度で休憩など挟まなくても問題なかった。


「はぁ~、みなさんやっぱり強いんですね…」


 見事なまでの集団戦闘に思わず感嘆の声を漏らすフィリア。

通常はソロで活動し、たまにネイトとくらいしか組んだことのない彼女には騎士たちの訓練で磨かれた連携技術は感動すら覚えるものだった。


「そうですね、団の者は全員厳しい訓練をこなしていますから、この程度の相手ならば何の問題もないでしょう」


呆けた様子のフィリアを微笑ましく思いながらレミアータが述べる。騎士の戦い方を初めて見た人は大抵同じような状態になるので慣れたものだ。


(それにしても、あのネイトという見習い…。ルードス家の嫡子ということだけあって学生とは思えないほどにいい動きをしますね…)


 先の戦闘を遠目から観察していたレミアータには、ネイトの実力がそれなりに高いことはすぐに分かった。

 味方が敵を引きつけている間、対処が遅れてしまうほどの数がそちらに行かないように残りの相手を牽制するという判断能力とそれを見事にこなしていた技術は、すでに団に入っても活躍できるだろう。カイオール副団長が連れてくるわけだとレミアータは内心で納得していた。


「フィリア嬢は随分と落ち着いているが、荒事は慣れているのかい?」


 そこへ中衛でサポートにあたっていたジルオニクスがやってきた。


「殿下っ! えと、お、お疲れ様でございますっ。荒事は冒険者も兼任していますので、ふ、普通よりは慣れているかと思いますっ!!」


未だにジルオニクスとの会話に慣れないフィリアに彼は苦笑しながら近づく。


「フィリア嬢、そこまで緊張しなくても大丈夫だよ。話しかけているこちらが申し訳なくなってしまう。……そうだな、なんだったら僕のことはジルと呼んでくれて構わないけど?」


突然の提案に思わず顔を青くしながら、フィリアは首を横に振る。


「いいいいいいえっ! そんな呼び方をするなんて不敬になりますっ」

「そうかい? まぁ、確かに大勢の前では不適切かもしれないね。さて、それならどうしようか…」


 さすがに言われて思うところがあったのか何やら思案するジルオニクスを戦々恐々と見つめるフィリアというよく分からない構図が出来上がった。

 それを見かねたレミアータが間に入ろうとしたところで、別の人物が横合いから入ってくる。


「殿下、フィリアは人見知りなところがありますので、そのあたりで抑えて頂けますでしょうか?」

「ネイト殿か。先の戦いでは見事な動きだったな。しかしフィリア嬢が人見知りということは理解したが、さすがに話しかける度に緊張されてしまってはこちらとしても困ったことになるんだ。なんとかならないかい?」

「承知しました。それについてはなんとかしましょう。とりあえず殿下の呼び名については、ここはジルオニクス様、と言ったところでご納得頂けませんか?」

「ふむ、なるほど。ならそれで構わない。フィリア嬢もそれでいいかな?」

「はいっ。では、ジルオニクス様とお呼びさせて頂きますっ!」


ふたりが話しているのを聞いているだけの状態になっていたフィリアも、今回はなんとか落ち着いていたのでどもらずに返すことができた。

 彼女の返事に満足したのか、ジルオニクスは列の前の方へと足を早めて去っていく。

 それを確認したところでネイトが口を開いた。


「フィー、さすがにそろそろ慣れないとそれこそ不敬になったりするぞ?」

「でも…、だって王子様が目の前にいたら誰だって緊張するよ…」

「ネイト殿の言う通りですね。もう少し慣らしていかないと、これから先でもっと困ることになりますよ?」


言い訳をする彼女へ向けてレミアータが追撃する。

味方を得られないと悟ったフィリアは早々に弁明を諦めて、出来る限り善処します、と項垂れた。

 今回で今年最後の更新になるかと思います。

明日はまた別で忙しいので…。深夜更新とかできるでしょうか…。

 ひとまず、今月から始めましたがお付き合い頂きありがとうございますっ。もしよろしければ来年もどうぞよろしくお願い致します。


~1月5日改訂~


 フィリアのセリフ、


「いいいいいいえっ! そんな呼び方をするなんて不敬になりますっ」


より下の一部文章を変更しました。

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