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魔法使いの雑貨屋  作者: 狸寝入り
《第二章 王女様とレイビィトの霊薬》
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出立の儀

「準備は完了…かな? 回復薬も下級から上級まで揃えたし、これでこの間みたいなことが突然起こってもなんとか対処できるよね」


 日が昇るまでのまだ暗い中、フィリアは『フルハーモニー』の自室で出発までの準備を整えていた。

1枝月ぶりの魔法使いのローブに袖を通した彼女は、この前あったような突発的な戦闘などにも対応できるように店の在庫分の薬系統まで持ち出している。


「さてっと、それじゃ、行こっかな」


そう言って暗い街中に飛び出すフィリアは、とあることを忘れていたりするがそれは後に気づくのであった。


 ◇



 フィリアが集合場所の城門前広場に到着すると、すでにそこには騎士団の面々やネイトが並んでいた。


「遅れてすみませんっ。フィリア=グランツェリウス、到着しました!」

「ああ、おはよう、フィリアちゃん。昨日はちゃんと眠れたかい?」


まず最初にカイオールに自身が集合したことを報告すると、彼は今日も変わらず女性には魅力的な微笑みでフィリアを出迎える。


「フィーは早起きに慣れているからな、心配はしてなかったがちゃんと間に合って良かったな」

「ネイトもおはよっ」


報告を終えたのを確認して、ネイトがふたりの方へ寄ってきた。そのことに気づいたフィリアは満面の笑みでネイトを迎える。その笑顔を遠目に見ていた周りの騎士たちの雰囲気が浮ついたものになるが、それも仕方がない話である。

 騎士団にも女性団員は存在するが、数自体が少ないも事実。また、騎士団員になる女性は今のところ総じて男よりも漢らしい勇猛果敢な方々だ。

男性に囲まれた中で実力を見せていくにはそれぐらいでなければならないのかもしれないが、本当の性格は別としても見た目からして女の子らしいというわけではない。

故にフィリアのような見た目からして、鍛えられていないような柔らかそう女の子には不慣れなのは経験の足りない男としては当たり前とも言っていい。例外といえば所帯持ちやカイオールくらいのものだ。


「おはよう、貴方がフィリアさんね?」


 ネイトに挨拶をしたフィリアの傍にひとりの女性騎士がやってきた。凛とした雰囲気を纏い、鍛え上げられた男性団員の中に混じっていてもまったく負けていない。顔も美人さんで、戦乙女という言葉がよく似合いそうな女性ひとだった。


「おはようございます、あの失礼ですがあなたは…?」

「申し遅れました。私はレミアータ=ラグラリィ、王宮騎士団赤の隊の団員です。今回の任務ではフィリアさんの周辺警護を任されております」

「さすがに女の子ひとりだけ付いてこさせるわけにはいかないからね。男性騎士だけだと何かと不自由もあるだろうし、それも考慮にいれてレミアータに任せたんだ」

「フィー、なにか俺たちには言いにくい事があったらちゃんとレミアータさんに相談するんだぞ?」


心配なネイトにクスリと少し笑ってしまうが、皆の気遣いはとても嬉しく感じる。暖かい気持ちになったフィリアは三人に頭を下げて、礼をした。


「よろしくお願いします。レミアータさんには特にお世話になってしまうかもしれませんが、わたしもできるだけ頑張りますね?」

「ええ、こちらこそよろしくね、フィリアさん。それから私の名前は長いから良かったらレミと呼んでくれて構いわ」

「レミさん、ですね。分かりました」


素直な様子のフィリアを気にいったのか、レミアータの表情が先ほどよりも僅かながら柔らかくなった気がした。

 そこで急にカイオールや他の騎士たちが姿勢を正したので、フィリアは何事かとあたりを見回すと、通りの先から護衛を連れて今回の依頼を受ける最後のひとりが現れた。


「すまない、私が一番遅くなってしまったようだな。待たせたようだ」

「いえ、お気になさらずに殿下。それよりも出立の準備はすでに整っています。殿下の準備が整い次第、出発できますが」


現れたジルオニクスにカイオールが簡易式の騎士の礼を取ったあとで訊ねる。

といっても本当に最後の確認といった風情だ。見たところジルオニクスもすでに動きやすようにカスタマイズされた鎧を着込んでいるし、控えていた護衛たちが殿下の荷物と思われる品を荷馬車に積み込んでいる。


「ああ、待たせたらからには早めに出ないとまずいからな。時間もあまり残されていないところだし」


確認に頷き、周りの騎士たちを見渡すジルオニクスに自然と背筋が伸びる団員たち。そこでジルオニクスの目がフィリアに留まる。


「フィリア嬢、今回の任務の間、改めてよろしく頼むよ」

「は、はいっ。精一杯やらせて頂きます!」


そのうちにもしかしたら話す機会もあるかもしれないと思ってはいたが、いきなり最初から話しかけられるとはおもぅっていなかったフィリアは思わず緊張してしまう。

 フィリアに挨拶したジルオニクスは今度はその隣にいたレミアータに視線を向ける。


「君はレミアータ騎士だったな。フィリア嬢のサポートをよろしく頼む。今回の任務の要は彼女だからな」

「はっ、優先してフィリア様をお護り致します」


敬礼をしてジルオニクスのめいを受けるレミアータの瞳には誇りと決意が漲っていた。


「カイオール副団長、そろそろ殿下に他の騎士殿に向けて宣誓を頂いた方がよろしいかと」


ネイトが恭しくカイオールに提案し、それをカイオールとジルオニクスが了承する。


「騎士団の者、皆よく聞け! 殿下より宣誓があるっ!」


 よく響くカイオールの号令に、こちらの様子を眺めていた騎士たちが一斉に背筋を伸ばしてジルオニクスに注目する。それを確認してからジルオニクスが一歩前に出て宣言した。


「皆、此度はよくぞ集まってくれた。本当に感謝している。……それではこれより、重要任務を開始するっ! 他の者に遅れを取らず、私たちについて来い!」

「「「「この剣に懸けましてもっ!!」」」」


広場にいた10以上の騎士たちが一斉に唱和する。

未だ太陽の昇らぬ広場より、騎士たちが動き出す。その中でフィリアも胸に決意を秘して歩き出した。

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