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魔法使いの雑貨屋  作者: 狸寝入り
《第二章 王女様とレイビィトの霊薬》
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市場でお買い物

 本当は小話を入れる予定でしたが、間に合わずに…。第2章の投稿と相成りました…。

申し訳ございません…。

「さてー、今日は何か掘り出し物があるかな?」


 天気は快晴、完全に春の陽気で暖かい日差しのおかげで街は活気に満ちている。

フィリアもまたそんな陽気に誘われて、久しぶりに休みをとって街まで買い物にやってきていた。狙いは安い素材系で、それで何か新商品を作ろうと画策していたりする。


「ふんふふ~ん、やっぱり春はいいよねぇ…。冬は冬で楽しみ方がるけど、わたしはやっぱり暖かいほうが好きだなぁ」


今日のフィリアは珍しくおしゃれをしている。ギルドに行くわけで採取に行くわけでもないので、たまには年相応に着飾ってみたいと思うのは当然のことだ。

青と白のストライプのワンピースに上から少し大きめの桃色のカーディガン、黒のレギンスに同色のブーツの服装は見た目だけは大人し目の彼女の雰囲気には合っている。

しかしこの服装はフィリアが選んだものではなく、コーネリアが選んでくれたものだったりする。理由としてはフィリアのファッションセンスが壊滅的なことに由来して、見かねたコーネリアが一緒に買い物に行ったためだ。


「んー、今日は調味料関係のところに行ってみようかなぁ、最近行ってなかったし」


1枝月ほど前から上級薬を販売し始めたことで、店の売り上げが増したのはいいのだが、おかげでここのところ魔物の素材関係ばかり発注してしまっている。そろそろ汎用商品の在庫も厳しくなってきたので調味料関係を周るのは丁度良いかなとフィリアは考えていた。

調味料や食材関係の商店が集まっているのは王都の中央通りの西側なので、そのあたりへ向けて彼女は進んでいった。


 ◇


「いらっしゃいっ、いらっしゃーい! 今はアリゴルの実が旬だよー!」

「どうぞ見ていってください! サービスするよー!」

「サントマの白身をタイムセールだー! 3匹でリフェイル銀貨1枚っ、共通銀貨なら3枚だよー!?」


市場に着くとそこは、喧々囂々《けんけんごうごう》と多くの人の声が飛び交っていた。今は昼過ぎのため、買い物に来る世の中の主婦や主夫たちで混み合う時間帯で、店側もこれを逃すまいと必死なのだ。

いつもこの戦場とは無縁の、あまりにも離れた場所に店を持つフィリアとしてはこういう光景にもちょっとした憧れがある。


「相変わらずすっごいなぁ。わたしの店には冒険者のお客さんがほとんだからなー、一般の物とかも取り扱ったりしても…、売れないよね……」


ここで取り扱ってるものとかを自分の店で売っている様子を想像してみたが、その中では結局大半が売れ残るのがオチだったと彼女はひとりで軽く落ち込んだ。


「お、フィリアちゃんじゃないか! 久しぶりだねぇ」


落ち込んで肩を落としていた彼女に、横の店から豪快な雰囲気の男性が声をかけてきた。


「あ! ダンナさん、お久しぶりですっ」

振り向くとそこには見知った顔があったので、フィリアはすぐに顔をあげて応える。

 ダンナと呼ばれた男性は、調味料専門店『アーキア』を夫婦ふたりで切り盛りしている人で、店主としてダンナと言われているが、文字通りに’旦那さん’でもあるわけだ。

ちなみにダンナの年齢は30代半ばらしいが、その奥さんは20代前半という年の差夫婦である。また、奥さんはこのあたりでも美人だと評判で、旦那さんは他の男たちから羨望の目で見られていたりする。


「最近忙しかったのかい? ここのところ見かけなかったから、心配してたんだよ」

「えーと忙しかったのもあるんですが、ちょっと短い間ですけど入院してたのもありまして」


フィリアが照れくさそうに顔を出せなかった理由を語ると、ダンナは目を剥いて驚いた。


「入院!? どうしたんだい、病気か何かか?」

「いえ、怪我です。ちょっと久しぶりに冒険に行ったら思わぬ大物と出くわしちゃって、それでですね」

「はぁ~、そりゃ大変だったなぁ。でも無事でよかったなぁ」


本当に心配していたと見て分かるぐらいにダンナは安堵の表情でフィリアを見ていた。それがやっぱり不謹慎かもしれないが、なんだか嬉しくてフィリアの頬も自然と緩む。


「そうだ、それじゃ、ちょいと遅くなっちまったが退院祝いだ。ちょっと待ってな」


ダンナはそう言うと店の中に入っていく。しばらくしてまた出てくると、その手には小さめの小袋が乗っている。


「これは?」

「おー、これはな。ついこの間仕入れたばっかりの香辛料だ。西側の国から輸入したって品でな。うちでも使ってみたんだが、かなり良いもんだったぞ」


ダンナの言葉に今度はフィリアが驚く番だった。

香辛料なぞ、調味料の中では高級品の中でも郡を抜いている。小指の先ほどの瓶1本で驚くほどの高値がつく物も少なくない。


「い、いいんですか!? だって、これすっごく高いものじゃ…! それもこんなたくさんっ」

「気にすんなって。いつも贔屓にしてもらってるからな。それにこりゃ退院祝いだからな、これでケチったら母ちゃんにどやされちまうよ」

「奥さん、怒ると恐いですもんね…。それじゃ、ありがたく頂きます」


怒り狂ったときのダンナの奥さんのことを思い出して、少々遠い目をするフィリアだったが、すぐに正気に戻ってダンナから小袋を受け取った。もちろん高級品のため、すぐにポシェットにしまったが。


「あ、それと今ってなにか手頃な値段の調味料ってあります? 最近ちょっとそっち方面の在庫が少なくなってて」

「ん? あーそうだなぁ。それなら今は塩が良いかもな」

「塩、ですか?」


フィリアは不思議そうに首を傾げた。季節に関係ある調味料ならば値段にばらつきが出てもおかしくはないが、塩に関してはほとんど値段が変わらない。

なぜなら北東の国は塩の名産地であり、そこからは年間を通してほぼ変わらない量の塩が入ってくるからだ。故に塩がいいとはこれ如何に、とフィリアは疑問に思った。


「あぁ、なんでもちょっと大量に作りすぎちまったんだってよ。ほら、あそこの国はこの間、新しい王が即位しただろ? それの式典用や祝いの品として多く作ったんだと」


なるほどとフィリアは納得して頷く。彼の国では塩は産業の支えになっていると同時に神聖な物としても扱われている。王の即位などの大きな祝いの時には国民も塩を普段よりも多めに買い込むので、作る側も多く作るのが普通だった。

しかし今回はそれを読み間違えて作りすぎてしまったがために余った分を他国に流しているのだろう。


「それでいくらくらいになるんです?」

「あー、フィリアちゃんがいつも買ってる量で半額より少し高いくらいか」

「そ、そんなに安いんですか!? ……んー、ここは今のうちに多めに買い込んでおくべきかも」

「んじゃ、多めに用意するぞ。あれで持って帰るなら問題ないだろ」


普段の量でも少女ひとりが持つには厳しいくらいなのだが、フィリアは今は買い出し用に普段使用の物よりも口の大きなアイテムバッグも持ってきている。

ポシェットからそのバッグを取り出して、買い付けの準備を始めた。


「それじゃ、2kg多めでお願いします。代金はいつも通りにあとで送りますから、それでお願いします」

「分かった。ちょいと待ってな、今準備すっからよ」


再び店の中に戻ると、ダンナは台車にいくつか大きな麻袋を乗せて出てきた。

フィリアの前に台車を寄せると、軽々と麻袋を持ち上げてフィリアが開けているバッグの中にそれらを次々と入れていく。はたから見れば完全にマジックショーのそれであった。


「ありがとうございます! これでしばらくは塩関係は大丈夫そうです~」


フィリアが満足そうにほくほくとした笑顔を浮かべていると、ダンナさんも同じような顔でがはは、と笑った。


「それじゃ、そろそろ行きますね。また、近いうちに顔を出すようにします」

「おう、そんときは母さんがいるときにしろよな。会いたがってたからよ」

「はい、奥さんにもよろしく言っておいてください。では、失礼します」


丁寧にお辞儀をしてフィリアは『アーキア』を後にする。その後ろ姿をダンナは手を振って見送っていた。

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