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魔法使いの雑貨屋  作者: 狸寝入り
《第一章 目玉商品とフレイル草》
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闇の中の光

 森中を探し回っているうちに日が落ち始め、辺りが薄暗くなり始める。

フィリアが時刻を確認すれば、もうすぐ18の刻の少し前だった。


「とりあえず、完全に暗くなる前にキャンプの準備をしないと…」


どこかに丁度良い場所はないだろうかとフィリアは辺りを歩き回る。するとすぐに木も少なくて寝るのも問題なさそうな平地を見つけた。そこから少しでも進むと窪んだ地面などがあるが、気を付けていれば大したこともないだろうと彼女は判断する。

さっそく薪などを用意して、キャンプの準備を整えていく。

夜の森は危険だ。月が出ていても、その光が届かなくて死角が多い。

どこから、いつ敵が来るか分からないという事実はそれだけで危険度を跳ね上げる。

それに加えて、今夜はフィリアが1人で警戒も行わなければならない。

彼女は冒険者としては体力がない方だと自覚している。そのため、どうにか睡眠を取る必要があった。


「うーん。警戒は、結界とかでなんとかしよう…。結界を一晩持たせるとなると、それはそれで疲れるんだけど、寝ないよりはマシ…かぁ」


本来、結界魔法とは戦闘時などに短時間だけ使用することが普通だ。

結界は、展開したあとの出現時間が終われば勝手に消えてしまう。それ以上維持したい場合は魔力を常に消費し続ける必要があるわけだ。


「セグロ クレース アルゥ。障壁よ、包め」


――《セグロ》 司るは結界、《クレース》 司るは増大。

キャンプを張った場所を中心に、辺りを《クレース》の呪紋によって展開距離を広く設定された結界が包んだ。

きちんと発動された魔法にフィリアは満足そうに頷き、用意した薪に発火石フォースフレイムで火をつける。


「今日は見つからなかったなぁ…。明日こそ何とかしてみつけないと、上位の人たちが追いついて来ちゃうよ…」


膝を抱えてしゃがみこみ、燃え上がる炎を眺めながらフィリアは呟いた。

時間があまり残されていないことは彼女が一番分かっていた。

そのため、見つからないどころか何の手掛かりも掴めなかったことに気持ちだけが酷く焦ってしまう。


「だめだめっ! 落ち込んでたって何も解決しないし、こういう時こそご飯をちゃんと食べて元気出さなきゃっ」


考え事を打ち切るときに両手を握り込みながら頭を振るのは彼女の癖だ。

それから取り出したのは、オニギリと呼ばれる物だった。

最近、東方の国から輸入されるようになった稲白実ホワイト・ライ。それを水で炊いて出来上がるライスというものを丸や三角の形に握って作るらしい。

塩で握るのが普通らしいが、変わったものではオニギリの中身に何かしらの具が入っている。

稲白実ホワイト・ライの輸出国である東方の国では一般的な食べ物だということで、フィリアも一口食べて大好物になった。

取り出したオニギリは買ってからだいぶ時間が経ってしまっていたが、素材を入れるはずの保管器プリサーバーに入れて持ってくるという荒業のおかげで、まだ柔らかい感触だった。


「創造主様、今日も糧を頂けることを感謝致します」


フィリアは創造教会の信者ではないのでお祈りの言葉もいつもは言わないのだが、今日は自然とそう言っていた。安全な街では実感できない、食べ物の有り難さが分かるような大自然の中だからかもしれない。


「美味しそ~! それじゃ、いただきまぁーす!」


元気な声と共にフィリアはオニギリにかぶりつく。

美味そうに食べるのはいいが、もっとお淑やかにしろとはネイトの談。

1つ目をあっという間に完食すると、すぐに2つ目を取り出して、それもまたかぶりつこうと口を開いた。

しかしその時、結界の外から獣の大きく低い唸り声が森の中に響き渡った。その声に驚いた彼女は手の中のオニギリを放り投げてしまう。


「あーっ! わたしのオニギリがっ」


無駄だとは分かっていても、彼女は放り投げてしまったオニギリの行方を追いかけた。


「オニギリ…。たぶんこの辺りに落ちたと思うんだけど…」


落下予測地点と思われる場所の付近を見回すと、そのあたりに地面がない。いや、どうやら崖になっていて見えなかっただけのようだった。


「この下に落ちちゃったのかなぁ。うぅ…そんなぁ…」


諦め悪く崖の下を覗き込んだフィリアの目に、それは映った。

真っ暗な森の中、そこだけが光を放っている。


「……。うそ…、あった……?」


呆然と声を漏らした彼女の視線の向こうに、光溢れる洞窟の入口があった。

 なんか展開早いです…。

もうちょっと色々と考えておきます…。

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