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魔法使いの雑貨屋  作者: 狸寝入り
《第三章 双子とアメジーナの秘法》
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病室にて

  救出作戦から5日が経った。

 あれからフィリアたちはブレンドたち救出部隊と共に、誘拐犯の拠点を脱出。王都から応援に駆けつけた本隊に引き渡されて、王都へと帰還した。

 犯人については騎士団が、改めて誘拐犯の拠点を徹底的に探ったものの、その手がかりは発見できなかった。

 しかし、拠点の規模や様子から見て個人の犯行ではなく、組織的なものだというのが関係者の推測だ。騎士団としては今後もはその組織を追うことになったらしい。


 

  王都に帰還したフィリアたちは、王宮の医務塔で強制的に休まされていた。

 本来、医務塔は一般市民には開放しておらず、王宮務めの者たちの病院とされている。しかし、今回は王女の命の恩人にして友人でもあるフィリアと、計り知れないほどの価値を持つアメジーナの一族が相手だ。王が直々に医務塔に指示を出して、彼女たちを入院させることになったわけである。

 フィリアはアルタットたちとは別室で入院することになった。理由としては色々と検査があるので、服を脱ぐことがあるからだ。さすがに子供とは言え、男子のアルタットと同室というのはよろしくないと判断されたのだろう。フィリアとしては別に構わなかったのだが。

 そんなこんなで、話し相手もいないフィリアは、今まさに絶賛暇を持て余していた。


「さすがにそろそろ暇だなぁー…。ギルドに依頼の報告もしなきゃいけないし、早く退院したいんだけど」


 入院初日は良かった。怪我はほとんどなかったとはいえ、体は自分で思っていた以上に疲労していたらしく、ベッドに入るとあっという間に眠ってしまったのだから。

 泥のように眠るとはよく言ったものだ。なにせ医務塔務めの看護士数人によって風呂に入れられたのだが、そのときには半分以上寝てしまっていたほどである。

 そうして寝ている間に、女性の医師によって軽い治療が行われたらしく、次に目覚めたときには体から痛みは抜けきっていた。

  2日目には予定通りに問診からの診察、そして検査が行われた。

 怪しい薬を飲まされたという旨はすでに連絡がされていたらしく、血液検査や生命力(オド)魔力(マナ)の波長測定などが主な内容だった。


「医学的にはこれといった影響は見られないって話だったけど……。何の薬だったんだろう?」


 結果は問題無し。

 薬の効果は不明だが、平時の体調とほとんど変わりがなかったそうだ。

 ただ、気になるとすれば魔力(マナ)に少々の乱れがあること。しかしそれも、魔法を使うのには影響が無いほどの小さな乱れで、恐らく疲労によるものだと判断された。

 とはいえ、魔法使いの魔力(マナ)の乱れというものは少々怖いものがある、と態々(わざわざ)宮廷魔道士の研究室に連絡をとってくれたらしい。

 その日のうちに女性の魔法使いとロニールがやってきて、それについての確認がされた。


「そっちも問題無しってことは、本当に大丈夫なんだろうけど……。何が目的だったんだろう?」


 ロニールたちの判断も問題無し。乱れについても数日中に収まるだろう、とのことだった。

  そのまま検査で丸1日を使ってしまい、事情を聴きに人が来たのは次の日。相手は上級騎士が2人と、態々副団長であるカイオールまでが現れた。

 救出作戦を指示したのは自分なのでので、顔を見に来たと彼は言っていた。お見舞いの品まで持ってきてくれていて、しっかりした人だな、とフィリアは感心したくらいだ。

 そのまま少しばかり雑談を挟んだあと、捕まった状況、犯人はどのような相手だったかなどを聴かれた。


「とりあえず話せることは話したけど…、やっぱり手掛かりらしい手掛かりがないと特定は難しいよね……」



 分かっていることは本当に少ない。

 相手がかなりの財力を有していること。

 少なくともフィリアも知らない薬を持っていること。

 そしてなにより、魔物を従える方法を知っていること、だ。



  何よりも3つ目が問題だった。

 魔物はこれまで人間を無条件で襲う相手とされていたのだ。大昔、魔物を従える方法を探った国もあったというが、成果は上げられなかったとされている。

 しかし、それを実際に成功させた相手がいるとなると、それは相当に危険なことだった。 

 もしどんな魔物でも従えさせることができるというならば、それを兵士の代わりにすることも可能かもしれない。

 そうなればそれはすでに個人の事件ではなく、国家単位の事件になる。なにせ下手をすれば戦争に発展するような内容なのだから。


「………しかもここ最近の上位魔物出現が絡んでるかもっていうことなら焦るのも当たり前かぁ」


 カイオールがフィリアに話を聞いて、推測したのは塔外での上位種出現のことだった。

 別の国で討伐された上位種に商標タグがついていた事案。

 もし今回の犯行組織が魔物を商品として扱っているならば、それは最悪の事態とも言えた。

 敵はすでに魔物を他国に輸出、または自国に輸入していることになる。“戦争”という言葉も現実味を帯びてくる事案だ。


「でもそうすると、相手は商人、しかもかなりの規模の商会ってことになるよね」


 国に気づかれずに秘密裏に魔物なんてものを移動させる力を持っていて、加えて商標タグを持っている。

 もしかしたらかなりの大物を釣り上げることになるかもしれないと、カイオールは独り言のように呟きながら部屋から出て行った。



  それから2日間、まだ安静にしておくようにと言われたフィリアは時間を持て余してる。

 ギルドの方に依頼の品を届けたりもしたいのだが、あと少なくとも2日は退院できない。依頼期限はまだ数日残っているので心配はないが、そわそわするのは止められない。性分みたいなものだ。


「あっ、今回のこと言ったらまたネイト、怒るだろうなぁ……。違うかな、心配させちゃう、かも? レミさん、一緒に話してくれないかなぁ」


 心配性の友人のことを考えて、フィリアはふぅ、と息をついた。

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