魔女ッ子先生
本編から長くすると言ってながら短いです。
すみません……。
ゴブリンの一件の後、玲はフェルの家に案内された。
その後、「一体どんな魔法を使ったのか?」と興味津々といった感じで根掘り葉掘り聞かれた。
が、実際は普通に投げただけだったのでそう答えると、「嘘よ!」と信じて貰えず、説明するのに1時間ほど掛かった。
その後、既に結構な時間だったので2人は食事を取り、直ぐにベッドに入った。
もちろん、玲は別室で外から鍵を締められた。しかも魔法で。まったく信頼されていないのが見て取れる。
さて、そんな事があった日の翌日……。
フェルの家は、二階建てだった。フェルを入れてどうやら魔女仲間の2人で暮らしていたようだ。
彼女は数日前から、ギルドの任務で遠方に出向いているらしい。フェルは一緒に行きたがったが、「1人で大丈夫。」と言われ、フェルはしぶしぶ残ったらしい。
さてさて、ところ変わってここはリビング。
「この世界について教えてください」
玲の開口一番はこの台詞だった。
玲は神の道具や武器を回収するまでこの世界で生活していかなくてはならない。
それはかなり長期に渡って滞在する事になるはずだ。十年以上はおそらく確実だろう。
フェルは
「分かったわ。でもレイの世界についても教えてよね」
快諾してくれた。ただフェルはフェルで玲の世界に興味があるのか、交換条件だった。
「それじゃ、まずは歴史についてはじめましょうか」
フェルは棚から厚さ5cmは確実にありそうな、分厚い本を取り出した。
どうやらこちらの世界に置ける、聖書や神話を纏めた本らしい。
「おっと。その前に現在地を確認しましょうか」
フェルは本の一番最初のページを開いた。そこには世界地図が画かれていた。
だが、その地図に載っている大陸は玲がいた世界とはまったく異なるものだった。
フェルが真ん中の大陸の左下あたりを指す。
「ここが現在地。ユドラルの森に隣接する街。
レクス。そしてここから東にいくと、この国の王都オーディンヌがあるわ。
さて、地図はこの位で次にいきましょう」
フェルはパラパラとページをめくっていく。玲には何が書いてあるかさっぱりわからない。字が読めないのだ。
ふと、フェルがページをめくるのをやめる。
「う〜ん……ここからで良いかなぁ……」
どうやらどの程度説明すれば良いか、決めかねているらしい。
「……よし、じゃ説明はじめるわよ」
どうやら説明する範囲を決めたらしい、フェルは本を閉じた。
玲は集中し、フェルの話を聞こうと耳を澄ました。
「今から約1000年前、平和だった世界が突然戦火に巻き込まれたの。
原因は神々と祖竜たちの戦争。その戦いでは私たち人族は神の味方をしたの。
エルフは精霊魔法。獣人は速さ。竜人は筋力。人間は数を武器に祖竜たちに挑んだわ。
でも祖竜たちの力は強大で、挑んだ殆どの者は死んでしまったの。
そして、多くの英雄や神々が死に絶え絶体絶命、という状況に陥ったとき1人の天才が現れたの。
人類種の英雄『マーリン・アンブローズ』
彼は当時、エルフや魔女、選ばれた勇者にしか使えなかった『古代魔法』を独自に解釈、再構築し魔力を持つ者なら誰でも魔法を使えるようにした男よ。
彼の構築した魔法は、現在では『近代魔法』もしくは単に『魔法』と呼ばれているわ。
話の流れから分かるように、人間はその男が考案した『近代魔法』の導入によって戦力が莫大に増加した事により、祖竜たちの戦争に勝利することが出来たの。
祖竜たちとの戦いが10年に及んだことからこの戦いを『終末の10年』と呼ぶこともあるわ」
彼女はそこまで話すとようやく息をついた。
「ここまでで質問は?」
「古代魔法と近代魔法の違いは?」
「古代魔法と近代魔法の一番の差は魔方陣の略式化ね。
古代魔法は正しい手順を踏んで行わないと発動出来ないの。
けど、近代魔法はその手順を略して魔法を発動させる事が出来るの。
でも勿論、略式化されてるから得られる効果は小さなけどね」
「なるほどね」
「他に質問は?」
玲は首を横に振った。どうやら理解していたらしい。
それを見たフェルは満足そうに頷き次に進むことにした。
「次はギルドについてよ。
これは前にも言ったと思うけど、ギルドは依頼人から受けた依頼を冒険者たちに解決してもらう仲介をしている組織よ。
ギルドに登録している冒険者たちは実力でランクが分けられていて順に、
S、A、B、C、D、Eって分けられていて、そして最上位ランクは更にS1〜S5に分けられているの」
フェルの話では、ギルドランクがS1の者は現在いないらしく現在はギルドランクはS2が最高らしい。
「ちなみにレイもギルド登録するのよ」
「え?」
玲は突然話を振られて間の抜けた声を出す。
「え? じゃない!
まさかレイ。あんた、只で住ませて貰えるなんて思ってないわよね?」
フェルは泣く子も黙るような、冷たい笑顔を玲に向けた。
働かざる者食うべからず。当然である。
「……了解しました……。」
余りに迫力がある冷笑に玲は思わず敬語になってしまう。
フェルは少し呆れた感じで次に進む。
「最後はお金よ。これが終わったらギルド登録しに行くからね」
フェルはそういって鞄から布地の袋を取り出す。その中にはどうやらこの世界のお金が入っているようだった。
「これは石貨。これが十枚集まれば銅貨くらいの価値になるわ。 大体銅貨一枚でお握り一つくらいの価値があるわ」
「なるほど。銅貨一枚で大体100円くらいか」
「100えん? 何それ?」
「あ、ごめん。気にしないで。こっちの話」
「なら良いけど……」
フェルはそういって石で出来ている石貨と、銅貨を玲の見えやすい位置に置く。
「これは銀貨。これは銅貨十枚が集まれば銀貨一枚の価値になるわ。
それでこっちは金貨。もう分かるだろうけど、これは銀貨が十枚集まれば大体同じ価値になるわ」
金貨は机の上に置かずにすぐにしまった。
フェルはギルドランクEの冒険者。フェルにとって金貨一枚は大金なのだ。
「それじゃ登録に行くわよ」
「……本当にいくのかよ……」
「当然! あんたにはしっかり稼いでもらわないと」
どうやらフェルは玲を家に住ませる代わりに、ギルドで働いて貰おうという算段らしい。
勿論、気付いてはいるが言い出せない玲はフェルに付いていくしかなかった。
さて、彼らが家を出てから歩いて15分のところにギルドがあった。
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