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プロローグ

初投稿です。

感想や意見、誤字報告など、宜しくお願いします。


 異世界。このようなファンタジーに憧れた者は数多くいるのではないだろうか。

 しかし、人は大人になるにつれてそのような気持ちを失っていくのだ。


 そして彼も、その中の1人だった。


 この日、この時、この瞬間までは……










 地平線の遥か彼方まで、真っ白な空間の中、たった1人の青年横たわっていた。

 髪の色は黒で、日本人には珍しい一重瞼の青年だ。

 身長175㎝、体重70㎏と身長の割りには少し重め。

 しかし決して太っていると言うわけではないだろう。むしろ、半袖の上着から覗く彼の腕からは脂肪ではなく筋肉がついているように見える。


 「……うぅ……」 青年はその真っ白な世界に違和感を感じたのか、失っていた意識を覚醒させる。

 そして、目が覚めた彼がしばらく周囲を見回し、思わず口にした台詞が……


 「……どこだ、ここ?」


 テンプレ発言よろしく、ありきたりな台詞だった。


 しかし、突然何も空間が延々広がっている景色を見ると、彼がそう言ってしまうのは仕方ないのかもしれない。


 どちらが上か下かも分からない真っ白の空間のなか、彼は何とか体を起こそうとする。


 すると突然……


 『目が覚めましたか?』


 どこからか声が聞こえてくる。その声はとても綺麗に澄んだ女性の声だった。 

 その突然の出来事に驚いた彼はどうやら起き上がるのに失敗したらしい、その場に顔面から倒れた。


 「ッオブ!」


 『!?』


 まさか、何も無いところで転倒するとは、流石に予想外だったのか声を掛けた本人も驚いている様子だった。


 『だ、大丈夫ですか?』


 「すみません……大丈夫です……」


 彼は派手に転けた事が恥ずかしいのか、顔を僅かに赤くしながら立ち上がる。


 そして声の主である人を探すために周囲を見回すが目に入るのは白、白、白……

 女性の姿はどこにもない。


 『……そ、そうですか。では、まず貴方の状況を説明しましょうか』


 「あぁ! そうだお願いしますよ!

 今、一体俺はどうなってるんですか!?

 ていうか、ここはどこですか!?

 そもそも、あなたはどこにいるんですか!?」


 青年はその言葉にハッとして、声を張り上げた。


 突然真っ白な空間にいて、姿の見えない女性に話しかけられているのだ。

 平凡な家庭で育った青年には、この状況に冷静にはいられなかったようだ。


 『はい、まずは最初の質問からです。

 貴方がどうなっているか……ですが、貴方は次元の穴に落ちてしまいました。』


 「……はい?」


 女性の口から事実を告げられる。

 しかし青年はその展開に着いていけない。


 『…………すみません。

まさか何の予兆も無かったので対応出来ませんでした……。 それでは次の質問のここはどこと言う質問ですが……』


 「いやいやいやいや! ちょっと待って下さい!!」


 どんどん進む話に、青年は待ったをかけた。次の質問に移る前に、最初の質問で頭がショートしたのだ。

 どうやら、この平凡な青年には次元の穴に落ちてしまいました、と言われて、はいそうですか。と答えられるほど、度胸が据わっているわけではないらしい。



 『何の前兆も無しに、まさか異世界と次元が繋がるとは思いもしなくて……。』


 「……異世界?」


 異世界、という言葉に青年は反応した。

 彼には異世界という言葉にはいくらか聞き覚えがあったのだ。


 「異世界っていうと、あれですか?

 その……魔法とか使えちゃったりするあの異世界ですか?」


 青年は、その知識の1つのファンタジー小説の設定を思い出しながら、恐る恐る、といった感じで問い掛ける。


 『はい、そうです。その認識で構いません。

 貴方は次元の穴によってこの世界と異世界の間に呑まれた、といった感じです。

 世界の間に呑まれたら人間ではどうしようもありません。

 また、次の質問になりますが、ここは世界と世界の狭間です。


 「……あぁ、……え〜と、これは自分なりの解釈ですが、つまり俺は、ここから出ることは出来ないかも……ってことですか?」


 青年はフリーズしかけている頭に鞭打って、よく分からない単語を何とか自分なりに翻訳する。とりあえず状況の整理をなんとか纏めたのだ。

 そして、それを未だに姿すら見えない女性に訊ねてみる。

 青年は冷や汗を額に浮かせながら返答を待つ。

 もしも、青年の仮定の話が肯定された場合、青年は死ぬまでここにいる、ということになる。


 『はい、そういう事になります。


 そして最後の質問になりますが、私は神です。

 悪いのですが都合上、私は貴方の前には姿を見せる事ができません。 ですから今、離れた所から貴方に話掛けています』


 青年の頭が、再びショートした。


 神、それは世界の中心。神、最も尊い存在。神、世界の創造者etc……


 て、いうか離れた所から話し掛けるってどういう事だ?

 しかもよく注意して声を聞いてみると、聞こえるっていうより直接、脳に届いているって感じだ……等々……青年はもう何度になることか、またフリーズした。


 『落ち着いて下さい、話はまだあります』


 「ハッ!?」


 女性改め、神に青年は声を掛けられ、フリーズを解除された。

 どうやらこの青年は、予想外の出来事には滅法弱い様だ。


 「……えっと……話……ですか?」


 フリーズから戻った青年は、既にネガティブになっていた。

 体育座りを決め込み、負のオーラを撒き散らしていた。


 『ええ、条件次第ではそこから助けて上げても良いという話しをしたかったんですよ』


 「本当ですか!?」


 青年の顔に、驚愕と喜びの表情が浮かぶ。

 彼は二度とここから出られないと思っていたのだ。そこに、思いも寄らない吉報が入ってきたのだ。


 「ところで、その条件とは!?」


 先ほどまでとは、打って変わってやる気になっていた青年。一喜一憂の激しい男である。


 『はい、実は今回、世界の狭間に呑まれたのは貴方だけではないのです。我々が保管していた神器や、宝具、封印されていた魔物も呑まれてしまったのです』


 青年はその言葉にギョッとし、周囲を見回した。しかし相変わらず白い世界が永遠に続くばかりだ。


 『安心して下さい。

神の武器や道具、魔物は、強力な力を有しています。

 そういった物は、世界の狭間という概念の干渉を受けません。』


 「……そうなんですか」


 青年はほっ、と胸を撫で下ろす。


 『そもそも、世界の狭間とは不安定なものです。そんなところに神の力など、強力な力が少しでも入れば、狭間は壊れてしまいます。

 ですから、狭間は強力な力を持つものに対しては干渉せずそのまま異世界に通してしまうのです。』


 「……へぇ……よくわからないけど大変ですね……」


 正直、神の説明の前半部分しか理解出来てない青年である。そうであるからか、生返事を返している。


 「で、結局。俺がここから出る条件。それは一体どんなもの何でしょうか?」


 『貴方がここから出る条件。

 それは異世界に行き、我々が保管していた神器、道具の回収。及び、封印されていた魔物の再封印。もしくは討滅しても問題ありません。』


 「……?」


 青年は、今度はフリーズしなかった。どうやら、驚きがあまりに大きすぎると、逆に冷静になれるらしい。……もしくは、単に理解に失敗しただけかも知れないが……。


 「えっと、貴方様はつまり、俺、いや僕ごときに、

 神様の落とし物を回収してきな


 ついでに聖書や神話に名を残す化物たちの相手をして来ましょうぜ、ボーイ


 と言ってるんですか?」

 驚きの容量が大き過ぎたらしい、余裕すら感じられる、青年の質問だ。

 しかし余裕があるのは口だけで、その表情は引きつっているし、身体はチワワの様にプルプル震えているし、脚も産まれたての子鹿のように震えている。


 神は軽く呆れた様子を声に含めながら返答する。


 『……そんな軽いファンキーに言ってませんが、大体はあってますね……。』


 マジっすか、と青年は冷や汗を滝の様に流す。そして、ふと何かに気付いた様に顔を上げる。


 「今気付いたんですけどそれは、貴方たち、神が動いてはいけないんですか?」


 もっともな質問だ。

 確かにことが起こってしまったのは仕方ないだろう。

 しかし後始末は自分でしたほうがいいのでは無いか? こんなどこの馬の骨ともしれない青年に頼るより、神が自分で動いた方がずっと良いと考えた。

 しかし……


 『申し訳ありません。現在私達は、次元の穴を埋めるのに手一杯なのです……。

 しかも次元の修復にはかなりの時間が掛かってしまうのです。ざっと見て、数十年は掛かるかと。ですので、異世界に行って変えるまではそれくらいは掛かるかと思います』


 「……マジかよ」

 青年は思わず頭を抱えた。異世界に行く、これはまだ良いだろう。そして神の道具、武器の回収。

 これも良いだろう。現状から助けてもらう代わりに異世界に行って、神の落とし物の回収をする。礼としては妥当だろう。


 だが問題は、魔物の封印だ。

 基本的に、神に封印された魔物のその全ては伝説や神話、聖書にも名を連ねる化物だ。

 中には、神殺しの魔物もいるかもしれないのだ。


 『どうしますか? この条件に乗ってくれますか?』


 青年には、特に優れた能力がある訳でもない。

 確かに、青年は趣味で筋トレをしているし、道場に通っていた時期もあり、格闘技もある程度は出来る。


 しかし、所詮はその程度だ。


 聖書や神話に名を残すような存在に、太刀打ちできる訳がない。


 ……だが、これ以外に道はない。

 この提案にのらなければ、白い空間からは出られない。取り残され、餓死を待つだけだ。

 いや、そもそも餓死出来るかもわからない。ここは世界と世界の狭間、ここに時間の法則が存在しているのかも怪しい。


 ならば、乗らない以外に、道はない。完全に詰んでいるのだ。

 ならば、と青年は決心した。


 「……いいよ、分かった。その条件に乗りますよ」

 穏やかな確定した死を待つのか、死と隣り合わせの壮絶な人生に身を置き、僅かに残された可能性に命を懸けるか、青年はどうやら後者にしたらしい。


 『ありがとうございます。では、貴方の肉体に出せる力を最大まで強化し、更に、神の加護を授けます。

 その後で、異世界に転送します。

 また、異世界で見つけた我々の武器は自由に使ってもらって構いませんが、少し条件を付けさせて頂きます。

 また、魔物の再封印ですが、基本的には討滅してもらっても構いませんが、気を付けて下さい。


 ここまで質問はありませんか?』


 神は異世界での活動内容を一気に話す。 青年は、食料は? 衣服は?等の疑問が湧いたが、説明されない点をみると、自分でなんとかしろということだろうと考えた。


 「条件を付けるって一体どんな事ですか?」


 『私達の武器については、貴方に害意や敵意などを向けた人にしか使えないよう設定します。また意図的に敵意を向けさせた場合には武器を使用できないようにします。


 神器は強力ですのでその程度の条件は考慮してください』


 「分かりました」


 青年は即座に頷いた。確かにその様な条件を付けていなければ、虐殺など神の武器には容易いだろう。


 『それ以上の質問がないですか?』


 その言葉に青年は頷く。


 とそれと同時、青年の周囲から様々な光の色を放つ球体が姿を表した。

 赤、青、緑……数えればキリがない程の光の球だ。それが青年の身体に近づいてくる。


 青年は僅かに身構えたがどうせ意味の無い事だと思い、その光の球を受け入れるように全身の力を抜いた。


 赤い光の球が青年の胸の前まで来る。

 ……すると、さも当然のように、赤い光の球が青年に吸収されていく。


 その瞬間、青年は自分の体に力が溢れるのを感じる。しかし不思議と、その力の奔流はすぐに馴染んでいく。


 最初の1つが入ったのを皮切りに、次々に光の球が吸収されていく。

 光の球が1つ、また1つと体内に吸収されるたび力が溢れる。


 イメージは、静寂な池の水面に石を投げ入れたようなものだ。

 1つ、また1つと石(光の球)が投げ込まれた様に、水面を波たたせる。


 そしてそれは、再び静寂を取り戻す。


 全ての光の球が彼に吸収されたと、同時に、彼はその空間から姿を消した。


 どうやら、力を手に入れて、世界の狭間、つまりこの空間が危険な存在と見なし、青年を異世界へと投げ出だしたのだ。


 最後にこんな言葉が聞こえた。


 『大神 玲。貴方の活躍を期待しています。』


 大神 玲と呼ばれた青年は異世界の上空400mで、神に対して軽い愚痴を呟いた。


 「……転送してませんがな」


 玲は、重力に身を任せて落下を始めた。



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