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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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初恋の人と地獄に行きます♪

掲載日:2026/06/21

僕は高崎亮。小学5年生だ。

学校ではまあまあ楽しく過ごしているけれど、家に帰ると孤独になる。

お父さんもお母さんも仕事が忙しいらしく、帰ってくるのは早くて午後10時。

僕は、あまり二人の顔を見ることもない。


クリスマスに欲しい物を言えば、枕元に置いておいてくれる。

サンタさんからではなく、両親からだ。

僕の両親は合理主義……らしくわざわざ嘘をつくことに意味を感じないらしい。


友だちは家でケーキを家族で食べたとか、サンタさんがプレゼントをくれたとか言っているけれど、僕はいつも一人でご飯を食べて朝にプレゼントを開けるだけ。

クリスマスは、欲しいものが一つ増えるだけの日だった。

誕生日も、同じだ。


僕のお父さんは医者で、お母さんはモデルらしい。

お父さんも結構格好いいので、僕もそれなりの見た目をしている。


そのうえお金もあるので、僕は女子から人気があった。

僕も自分に引っ付いてくる女子を拒まなかった。

家に帰ると一人きりだから、寂しかったから。


メールをくれたら、嬉しくなってすぐに返信をする。

それが女子の間で広まったのか、家に帰るとメールばかりだ。


そんな時に、僕は彼女と出会った。

その日は、僕の誕生日だった。


***


誰もいない4LDKのマンションの部屋で、僕は一人でシャワーを浴びる。

体を拭いてパジャマを身につけ、別に面白くもないテレビを見にリビングに行く。

静かなのが嫌だから、テレビをつけているだけだ。


だが、その日はテレビをつける必要はなかった。

リビングに、女の人がいたのだ。


僕よりすごく年上の女性。大人の女性の年齢はよく分からないけど、お母さんよりは若いみたい。

何か苦しいのか、顔を歪ませている。


スマートフォンにはラインのメッセージがいくつか届いていたけれど、僕は目の前の女の人に釘付けになった。


「どうしたんですか?体調でも悪いんですか?」


僕がそう声をかけると、その女の人は驚いたような表情を浮かべた。


「……私が、見えるの?」


「そりゃ見えますよ。ここにいるんだから」


そうして、もう一度声をかける。


「体調が悪いのなら、薬はたくさんありますよ。僕のお父さんは医者だから」


そう言った途端、その女の人の口は大きく裂けて眼が血走り、憎しみに満ちた表情になった。

血走った眼からは、涙がこぼれている。


その涙を見ていると、僕も悲しくなった。

クラスメイトが当たり前のように話している家族の温かさを、僕は知らない。


誕生日だからと早く帰って来てくれるお母さん、どうしても抜けられなくて夜9時に帰って来て怒られるお父さん。

僕は、そんな家族を知らない。


だって、今日は僕の誕生日なのに。


今、僕のそばに居てくれるのはこの人だけだった。

僕は、泣きながらその人にすがり付いた。


「うわああぁああああぁぁぁぁん!」


その女の人は、びっくりしたような顔で僕を見つめた。

その後、僕を抱き締めてくれた。


その人の手は、とても冷たかった。

抱き締められている時も、凍えそうだった。


「暖房、つけてもいい?」


僕がそう言うと、その人は優しく微笑んでくれた。

その人に抱き締められていると、僕はとても温かい気持ちになれた。

寒いけど。


***


その日から、その女の人は毎日現れた。

僕はその人に甘え、とても楽しい日々を過ごした。

クラスの女子からのメールにも、返信しなくなっていた。

僕は、その女の人との時間の方が大事だった。


僕は、間違いなくその人のことが好きだった。

僕の初恋の人だった。

ずっとその人と一緒にいたいと思った。


「お姉さん、僕はお姉さんが好き」


小学生の僕は、大人のお姉さんに甘えた。

好きなのは本心だけど、クラスメイトの女子に言うのとは重さが違うことは分かっている。

子供の戯言だと受け止められるのだろう、と思いながら、僕は本心を告げた。


その言葉を聞いたお姉さんは、なぜか少し悲しそうな顔をした。

子供の戯言を茶化すようなことはせず、真剣に受け止めてくれたような気がした。

それは、とても誠実な態度に思えた。


そして、僕はとても間抜けなことに気付いた。

大好きなお姉さんに、今さらながらの問いを向ける。


「お姉さん、名前を教えて」


お姉さんは、もっと悲しそうな顔になった。

お姉さんは僕を強く抱きしめ、耳元でささやいた。


「ありがとう、ごめんなさい」


その次の日、珍しく父が家にいた。

ずっとテレビを見ていた。


マンションの一室から首つり死体が見つかった、というニュースだった。

その死体は、僕の初恋の人だった。


***


僕は、20歳になった。

言い寄ってくる女性はいたが、僕には好きな人がいる。


父が弄んで捨てた人。

自ら死を選び、恨みを持って成仏できずにいた人。


あの日から、お姉さんは姿を見せてくれなくなった。

もしかすると、それはお姉さんの優しさなのかもしれない。


でも、だからこそ、僕は許せなかった。


何事もなかったかのように、医師会で出世をする父。

子供だけでなく、お姉さんも踏みつけにして。


20歳の誕生日の数日前、僕はケーキを二つ予約した。

姿を見せてくれなくなったお姉さんの名前を、書いてもらった。


誕生日当日、僕は二つのケーキを並べてハッピーバースデーの歌を歌った。


日付が変わり、父が帰ってきた。

その父に向かって、僕は包丁を振り下ろす。


驚愕の表情のまま冷たくなった父を見下ろす僕の前に、お姉さんが泣きながら姿を現した。


「どうして!?」


お姉さんの声を聞くのは二度目だけど、いつも悲しそうだ。

あの男の子供だから、仕方ないのだろうか。


「僕は、君が好きだから」


もう子供ではない僕が、本心をお姉さんに告げた。

父は、不誠実にあなたを踏みにじった。

でも、僕は誠実にあなたを想い続けている。


いや、父と比べて欲しくなんかない。

僕は、ただずっと君が好きだったんだ。


「君と、一緒にいたい」


そう言って、僕は全てをお姉さんの前に投げ出す。

お姉さんは、一瞬悲しそうな顔をした。


でも、僕に後悔はない。


「これでも、結構モテるんだよ。だけど、僕にはあなたしかいないんだ」


そう言って、僕は父を刺した包丁を首にあてがう。

その手に力を入れようとする寸前、お姉さんは僕に口づけをした。


「本当に、いいの?」


僕が頷くと、お姉さんは僕の魂を吸いだした。


そして、僕とお姉さんは一緒に地獄に向かった。


自殺をしたお姉さんも、父を殺した僕も、天国に行く資格はない。

それでも、僕たちは手を繋いで一緒にいた。


父は、一人で責め苦にあえいでいる。


初めて短編を書いてみました。

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