消えた夕日
フィクション
冷たい風が木の隙間を寂しい音で鳴らしながら吹いた、街は静寂に包まれて丸い月だけがぽつんと雲の中に浮かぶ。
街灯に照らされたベンチは僕の特等席だ、毎晩コーヒーや菓子パンをぼんやり齧りながら空を眺める。
この世界に1人のような気分だ、誰もいない小さな公園、民家や道路から少し離れた私の秘密基地だ。
今日は雨が降ったようで少し寂しい、パンを300円以上買うとコーヒーの無料券がもらえると聞いて、珍しく菓子パンを2つ買ってしまった。
スマホのネットニュースでは今日も大々的に見出しを飾っている、消えた太陽、太陽はどこへ。
2週間前から太陽が消えたようだ、どういうわけか地球にはまだ影響がないとのこと。
昼夜逆転の僕は何も変わらなかった、太陽の光のない世界で人々が新たな生活に順応する中、私は相変わらず夜中に起きて公園で時間を潰すだけだった。
深夜2時、コーヒーを飲み干してしまった、またコンビニに行くかどうか、重い腰が上がらない。
空を見上げていると、砂利を轢くような音が響いた。
人影が近づいて隣のベンチに腰掛ける、夜だというのに薄着な女の子だった。
静かな公園に、街灯が2人の影を落としている、彼女が公園の景色の一部に感じてきた頃、話しかけてきた。
「あの、コーヒー好きなんですか?」
彼女は私の飲み終わったペットボトルに目をうつす、彼女の声は寒く澄んだ空気の中でも暖かく届いた。
「コーヒー好きですよ。」
彼女は少し緊張を解いたように鞄を探ると、小さい缶コーヒーを私に見せつけた。
「自販機で間違えて買ってしまって、コーヒー苦手なんですよね。よかったらいりますか?」
人と久しぶりに会話をした、すっかり冷めた後のような缶コーヒーを受け取ると彼女は嬉しそうに微笑む。
冷めた缶コーヒーはずっと暖かく身体を流れた。
こうだったらいいなって




