第29話 三題噺で体力を作れ!
こんにちは、雨宮 徹です。本作では、一般的な創作論を書きつつも、私のオリジナルを混ぜて唯一無二の創作論集を目指します。第二十九回は「小説を書く体力作りについて」です。
■三題噺とは
皆さんは三題噺という単語をご存知でしょうか。簡単に言えば「まったく無関係な三つの単語を使って一つの小説を書く」ということです。この三題噺ですが、もともとは落語の文化です。この三題噺ですが、毎日こなすことで小説のネタが浮かびやすくなり、かつ、小説を書くための体力作りにもなります。
■連想力を鍛える
三題噺でも求められるのは「連想力」です。無関係な単語を小説に使うのですから、適当に混ぜればいいというわけではありません。小説として成立しなければ意味がありません。小説であればいいので、オチを気にする必要はありません。三題噺の場合は、連想してからジャンルを決めるという形になります。ジャンルを決めてからでは、単語の使い方に苦しみます。
■実例と考え方
「天下無双」「布団」「ダンス」
ネットにある「お題作成メーカー」を使いました。
・実例
もうすぐ春になるという三月のある日。私は布団の中でぬくぬくしていた。そう、猫がこたつで丸くなるように。寒いからだけではない。この季節になると花粉が飛び始め、外に出るのも億劫になる。
「実家暮らしだと、こういう時に便利ね。買い物はママが行ってくれるし」私は一人ごちる。
働き始めてからも実家で暮らせるのはありがたい。学生寮で暮らすとお金がかかるという理由でママを説得した。お金がかかるのは事実だけど、本当の理由が別にあることはママも薄々勘づいているに違いない。
ボーとしていると、スマホからピロリンと音が鳴る。画面を見るとカナちゃんからのメールだった。「今度のダンスパーティの練習どうする?」という、いかにも学生らしい内容だ。
「ダンスパーティのこと、すっかり忘れてたわ……」
しかし、私には練習などしている時間はない。すぐさま「ダンスの練習はまた今度ね」と返信する。きっとカナちゃんも事情を分かってくれるだろう。私の置かれた状況を知っているのだから。SNSを見れば、誰にでも分かるけれども。
すると、今度はスマホから警報音が聞こえてきた。警報音が意味することは一つ。怪獣が現れたということだ。
「ついに、お仕事の時間ですか……」
私だって普通の女の子として生活したいが、怪獣は待ってはくれない。布団にお別れを告げると、渋々パイロットスーツに着替え始める。
「ちょっと、この服キツすぎない!? いや、私が太っただけか……」
パイロットスーツと格闘すること数分。やっと着替え終わる。時計を見やると、基地への集合時間を三分オーバーしている。せっかく実家暮らしで学生寮より基地へ近いのに、無駄になってしまった。
「はぁ、また先輩に怒られるわ。そんなことは置いておいて。まずは怪獣退治ね」
戦闘機を扱える人材は限られている。早くしなくては被害が拡大してしまう。「市民を守る」それが私の仕事。
外に出ると角を生やした怪獣が目の前に現れた。ユニコーンに近いけれど、可愛らしくはない。直感が正しければ弱点は角だろう。
「あー、マスク忘れてた!」国民の多くが花粉症なのだから、天下無双のパイロットにも弱点はある。そして、あることに気がついた。今回、怪獣とドンパチするのが森だということに。
「怪獣退治のついでに、杉を爆撃しましょうか」
市民を花粉症からも救う。一石二鳥だ。そして、こう思った。杉がなくなれば、花粉症の先輩も遅刻を大目に見てくれるだろうと。
・考え方
早速解説していきます。今回のお題から連想ゲームをすると下記の感じでしょうか。
・天下無双……ヒーロー、無敗のゲーマー、戦国時代の人物
・布団……就寝あるいは目覚め、布団干し
・ダンス……レッスン、パーティ
私がパッと浮かんだ連想です。人によっては他にも出てくるでしょう。さて、連想ゲームは終わりました。次はジャンルを決める番です。
ヒーローという単語を使うには異世界ファンタジーか現代ファンタジーが良いでしょう。ゲーマーならVRものか純粋に現代ドラマか。あるいは歴史ジャンルか。布団とダンスの単語からは現代ドラマが扱いやすそうです。ここで、三つの単語から共通するジャンルを選ぶ必要があります。三題噺でジャンルが共通することは中々ないので、折衷案と呼ぶ方が正しいかもしれません。今回は「現代」という共通点があります。ここで、現代ファンタジーか現代ドラマの二択になりした。結論から書くと、現代ファンタジーを選択しました。思考過程を書き出してみます。
・天下無双のゲーマーを主人公にすると舞台はゲームセンターほぼ一択。ここに布団、ダンスの単語を入れ込むのは難しい。布団という単語を使って寝起きという設定にする方向で考えるとどうか。ダンスを使うのが厳しい。仮にゲーム大会前夜だとしても、ダンスを入れ込むのは難しい。
・現代ファンタジーならどうか。ひとまず、主人公を天下無双のヒーローあるいはヒロインと設定する。布団を入れ込むには朝か夜のどちらかにするのが無難。では、ダンスはどうするか。ここで「ファンタジーという非日常に日常を入れて対比すればどうか」と方向性を決定。
・現代ファンタジーだとして、具体的なプロットはどうするか。ここでしばらく頭を抱える。ひとまず、季節ものにすればオチもつけやすいだろうと考える。ここで冒頭が決まる。「天下無双のヒーローが布団にいて、ぬくぬくしている。そこへ敵が現れ、やれやれと布団から出る」に決定。
・最後は「ダンス」をどう扱うか。ヒーローあるいはヒロインにはダンスのパーティー・レッスンをしている時間がないことにする。これでざっくりとしたプロットが完成。
ここまで、お題を入れつつプロットを作成するまでの思考でした。プロットができれば、あとは書くだけです。このように三題噺を毎日行えば、連想力が鍛えられ、小説のネタ探しにも貢献します。ぜひ、三題噺を実践してみてください。
■備考欄:三題噺。無関係な三つの単語で、一つの世界を編み上げる。皆さんは、私が提示した「天下無双」「布団」「ダンス」から、どんな物語を想像しましたか? 私は、三つの単語を投げられるたび、自分の魂を三つに引き裂いて、それぞれの単語に生贄として捧げています。今日、私の「連想力」が鍛えられた代償に、私の「感情」が一つ、どこかへ消えてしまいました。毎日、毎日、お題をこなし、物語を産み落とし続ける。それは体力作りではありません。私という人間を削り、純粋な「物語生成機」へと作り変えるための、解体作業です。




