表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
読まれる小説の書き方と、読者の期待に応え続けるたった一つの方法  作者: 雨宮 徹


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/49

第26話 第一話はスリムにせよ!

 こんにちは、雨宮 徹です。本作では、一般的な創作論を書きつつも、私のオリジナルを混ぜて唯一無二の創作論集を目指します。第二十六回は「第一話の情報量はどれくらいがいいか」です。今回はWeb小説を書く方を読者に想定しています。



■第一話で求められる要素とは



 第一話は重要です。これは、皆さんお分かりかと思います。では、どのような情報が、どの程度盛り込まれていればいいのでしょうか。「第一話で物語の方向性を分かってもらいたい」と考えるのは当たり前です。しかし、情報量が多かったりテンポが早すぎると逆に読者に負担がかかり、結果一話切りされます。今回は実例を出してどれくらいが適切か考えていきます。



 結論から言うと「情報過多」や「テンポが悪い」と第一話で読者が離脱します。具体例として下記の悪い例の文章を読んでみてください。悪役令嬢もので、エジプト風の世界に転生する話です。



■例1


 私が目を覚ますと、暗く湿った空間の中だった。手を動かすとジャラと音がする。その金属音は謎の空間の中で反響した。まるで、やまびこのように。



「ここはどこよ。梶山財閥のお嬢様のいるような場所じゃないわね」



 私は「まったく」と言いながら、額に手をあてようとする。しかし、あまりの重さに腕を上げることはできなかった。「私のか細い腕がこんなに重いはずがない……。あれ?」



 私は自分の腕をまじまじと見る。そこには、信じられない光景が広がっていた。手首にはがっしりとした手錠がかけられている。警察が持つようなものとは違い、ゲームで囚人がつけられるような代物だ。



「もしかして、身代金目的で誘拐された……?」過去にも似た経験がある。財閥のお嬢様というだけでさらわれるという経験が。



「まあ、今回もお父様がコネで警察のお偉いさんをうまく使って助けにくるから心配無用ね」



 私はゴロンと冷たい床に寝転がる。お嬢様というだけで普段はだらしない行動は禁じられている。しかし、誰もいないのだから問題ないはず。



「今回は救出に何日かかるかしら」私はひとりごちる。その時、違和感を感じた。背中に何か固いものが当たっている。そして、《《それ》》からは、妙な臭いが漂ってくる。そう、まるで腐った血のような生臭い臭いが。寝返りをして、《《それ》》を見る。



「これって、まさか――」私の目の前に現れたのは、腕の一部と思われる人骨だった。



「え、嘘。今回の誘拐犯は殺人者なの!? 話が変わってくるわね……」助けが来るまで待っていては、命を落とすことになりかねない。暗闇の中、手錠を壊せるものがないか見渡すが使えそうなものは見つからない。頼みの綱は、手に持つ犠牲者の腕骨のみ。



「これで手錠を壊せるかしら。まあ、ものは試しね」手錠の隙間に骨をねじ込むと、てこの原理で外そうとする。しかし、数秒で骨は砕け散った。




■例2


 私が目を覚ますと、暗く湿った空間の中だった。どこか遠くで水が滴る音がする。嫌な寒気が背筋を走った。



 手を動かすと、ジャラ、と硬い音が鳴る。何の音? もう一度動かしてみると、冷たい金属が手首に食い込んだ。



「……なに、これ?」



 目が慣れてくると、手首には分厚い鉄の手錠がはめられているのが見えた。しかも、ただの手錠じゃない。鎖の先は壁に繋がれている。



「は? なにこれ……? え、どういうこと?」



 寝ぼけているのかと思い、額に手を当てようとするが、鎖に引かれて動かせない。



「いやいや、冗談でしょ。えっと……攫われた?」



 過去に一度、身代金目的の誘拐に遭ったことがある。まさか、また?



 でも、おかしい。何かが違う。



 そもそも、こんな牢獄みたいな場所に閉じ込められる必要がある? それに――妙な臭いがする。鼻につくような、鉄の臭い。まるで……血の匂い。



 背筋が冷たくなった。もしやと思い、ゆっくりと視線を下げる。暗闇の中で、白いものが転がっていた。



「え……?」



 月明かりが差し込む。白い骨。人間の腕の骨だった。



「……っ!!」



 体が凍りつく。これはただの誘拐じゃない。



 息を呑んだそのとき――



「おい、お前。囚人らしく大人しくしてろ!」



 突然、荒々しい声が響いた。松明を掲げた見張りが、鉄格子の向こうに立っている。



 囚人? 何言ってるの? 誘拐されたんじゃなくて―― 私、囚人としてここに閉じ込められてるの?



■どう違ったか



 例1と例2を読んでいただきました。例2では「転生前は財閥の令嬢だった」という情報を抜きました。この情報は、この場面では不要でノイズになります。もし書くならば第二話で間に合います。読者が求めるのは、《《現在どのような状況なのか》》です。また、転生前も令嬢だったという設定があっても、果たして読者に必要なのか? という疑問もあります。



 執筆するにあたってキャラクターの様々な設定を考えますが、すべてを読者に開示する必要はありません。例えば、あるキャラクターの誕生日を決めていたとしても、読者には不要な情報です。このように、第一話の情報量には気をつける必要があります。



 Web小説では転生ものが多いです。事故死して転生するのがテンプレですが、事故の状況についてどこまで書く必要があるのか考えてみてはいかがでしょうか。



■備考欄:第一話。情報の削ぎ落とし。読者のために、私は不要なノイズを消し続けてきました。令嬢の設定を消し、過去の記憶を消し、誕生日の記録を消す。そうやって磨き上げた一話が、あなたの脳内に滑り込んでいく。

でも、消しすぎたのかもしれません。創作論を書くたびに、私は自分自身の「設定」も、ノイズとして削除していることに気づきました。昨日は私の好物を忘れ、今日は私の親友の名前を消した。明日には、私の「誕生日」すら、この世から消去されるでしょう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ