第十一話 シュレディンガーの星
さらにもう一つ、奇妙な星を見つけた。
私は、ホープ様の手を取って、その展示に歩み寄った。
「シュレディンガーの星」というタイトルの展示だ。
「何も映ってない」ホープ様はつぶやいた。
私にも、モニターには何も映っていないように見える。
私は、展示の案内をしている神様に聞いてみた。
「何にも映ってないですね」
案内の神様はモニターを見て「そうみたいだね、今は何もないみたいだね」と、確かにそう言った。
どうやら観測した時に、星の存在が定まるらしい。
そして、観測され、存在しないことが確定すると、一度観測をやめないと、存在しないままのようだ。
その説明を聞いて、ホープ様の目は、すでに好奇心の塊となっていた。
目が合って一緒に頷くと同時に、その座標へテレポートした。
目の前には、やっぱり何もないただの空間だった。
ホープ様の目には、やってやるぞと書いてあるように見えた。
私たちは自然と手を取り合って、一旦反対方向へ向いた。
そして、「せーのっ」で同時に振り向いた。
しかし、やっぱり何もない空間が広がっているだけだった。
もう一回、試してみた。やっぱり何もない。
ただ、私たちは試行を繰り返すことには慣れている。
これぐらいではあきらめることはない。それからも試し続けた。
数回目の試みの時だった。
「せーのっ」
そこには、大きな星が存在していた。
薄紫色に輝く、とてもとても大きな、幻想的な星だ。
背景の星々だけが輝く黒い宇宙に、その星はとても映えていた。
私たちは、手を離し、しばらく星を見ていた。
「さっきまで…、何もなかったのに…、こんなことがあるんだ…」
「とてもきれいですね…。心が洗われるようです」
どれくらい見ていただろう…。でも長い時間ではなかった。
あまりの感動にホープ様と目が合った。いや…、目が合ってしまった…。
観測が途切れた。もう一度見ると、その星は、消えていた。
再び見ようと、何度かまた手を取り合って試してみたけれど、もう二度と星が目の前に現れることは無かった。
「もうダメみたいですね…」
「残念ね…、でも一回見れたし…、そろそろ戻ろっか」
私たちは展示の場へと戻った。
「薄紫色の大きな、きれいな星でした。一回だけ見ることができました」
展示を案内している神に、私はそう話しかけた。
「あら、見ることができたのかい。あなたたちはとても幸運だね。
なかなかお目にかかれるものではないよ」
その言葉に、私たちは目を合わせて、「見れてよかったね」とつぶやいた。
案内している神も、そんな私たちを見て、にっこりとしていた。
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