第一話 童話の研究
「童話もなかなか面白いわね」
ここは天界の片隅の私の家。そして私は今、地球の童話を読んでいる。
読みやすくて、想像しやすく、子供向けに書かれているわりに、ちょっとした教訓が込められている。
私は、とても奥深いと感心していた。
もちろん遊んでいるわけじゃないの。
私は“観察”の神。つまり、地球を観察することが私の仕事。
要するに、私は今、地球という文明を研究しているの。
だから、休んでいるわけじゃないの“ちゃんと”仕事しているの。
「ホープ様、そろそろ手を動かしていただけませんか?」
少し怒った声で、私は声をかけられる。
私のお使いの天使、ミカエルの声だ。
ミカエルが怒るなんて珍しい…。
ただ、ミカエルが怒るのも無理はない。
少し前に、私が魔王を倒したもんだから、あらゆる天界の機関から問い合わせが殺到しているのだ。
とても優秀なミカエルが怒ってしまうぐらいの問い合わせの量…。
私は、少し頭がくらくらしてきた…。
そう思って、手を休めて童話を読んでいるとミカエルに怒られるのだ…。
「地球の研究――大切な、とっても大切な仕事なんだけれど…、今は後回しね…」
「ほらほら、都合のいい解釈をしていないで、今は問い合わせへの回答に集中してください!」
ミカエルに珍しく怒られて私は、問い合わせの内容を読んでいく。
どの問い合わせも魔王についてばっかりだ。
この問い合わせは魔王との会話についてだって…。
それにしても高々魔王を倒したぐらいで、なんでこんなに大騒ぎするのかしら。
私にとっては、その後のルミエルやメモリナが抜けたショックの方が大きいのに…。
そう思うと、目の前の問い合わせにも、だんだんいらいらとしてきた…。
「あー。もう!魔王を倒した時のセリフなんて覚えてないわよ!
私はおしゃべりに夢中だったんだから!
いっそのこと、全部忘れましたってことにしちゃおうかしら!」
私の言葉に、ミカエルが閃いた顔をする。
「それ、いいですね。神様がそういうのなら、それで構いませんよ」
「こんな問い合わせ無駄無駄!研究の方が大事なんだから!やめやめ!」
「では、そういうことにしちゃいましょう!
“えー、記憶にございません”っと。コピペして。はい、いまあるお仕事、完了!」
ミカエルが、とてもすっきりした表情で、伸びをしている。
全ての問い合わせに“うまいこと”返信してくれたみたいだ。
その様子を見て、私は何もしていないのに、仕事が終わらせた充実感を味わった。
「ホープ様も、少し偉くなったんだから、お使いの天使を増やしてもいいかもしれないですね」
「ついこの間まで“見習い”だったのに、いつの間に格が上がったのかしら」
私は、いつのまにか“見習い”の上の“新米”のさらに一つ上の“中堅”と呼ばれるようになっていた。
「その分、仕事も少し増えて大変になりましたよね」
「うん。でも、まだ、十分私でもできる。大した仕事はまだまだね」
よかった。いつものゆるふわモードになってきた。
うん。私にはこれくらいがちょうどいいの。
もう“研究”を続けても大丈夫よね。
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