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第6話 死霊回収のお手伝い開始

<第6話>



と思っていたのは甘かった。


アーレンの仕事は毎日数件もあるようで、俺はその都度、夜寝る時でも休憩の途中でも、いきなり呼び出されることになった。


呼び出されるたびに、肉体が元素分解して、そして戻って、と繰り返すのでいずれセミとか小蝿とか混じってこないか心配になってくる。


アーレンと仕事をする時は、俺も幽霊みたいな状態でついていくことになり、地球に戻るときに最後にあのスーツを蒸着して肉体を得ることになるのだが。


まず、アーレンの仕事について、基本を覚えることから始めさせられる。

基本的には「死者をあの世に連れていく」仕事みたいなもんなので、事故現場とか病院とか亡くなった人が新鮮なうちにその場に行って、亡くなった方の魂をあの手この手で引っ張ってくるという感じなのだが。

地磁気に囚われた人の生体電流に記憶された情報を回収する、という話なのでてっきりバッテリーとかSSDみたいなの抱えていくようなイメージだったのだが、かなりイメージ的というか人間的というか。


実際は半非物質により作られた、前回のUFOのようなメカニズムが動いているらしいのだが、


お迎えにあがりました


みたいな感じの、かなりアナログな雰囲気で人間の記憶情報を回収することになっている。

だが、これらは俺が認識しやすい形で投影されてるということなので、霊的な世界として認識した方が受け入れやすいと半非物質の人工知能にでも判断されたのだろう。


幽霊を回収するというと、墓の方が効率良さそうだが。

現場にそれぞれ向かってると結構時間かかるし。


「墓場とかには行かなくていいのか?」


「墓場に死んだ人いないです」


「だって、幽霊といえば墓に集まるんじゃないのか?人魂とか出るらしいし」


そう言うと首を横に振り


「漫画の読み過ぎです」


宇宙人にそんなことを言われると少し凹む。


「イチロさんがもしここで急に死んだら、どうします? 俺が死んでる!ーなんじゃこりゃー、とか言って死んだことをアピールしたり、自覚したりできると思います?」


「目の前に自分が死んでるのを見たら、気づくのでは?」


「物質と半非物質は見えているものが変わるので、多分自分の肉体は見えなくなります」


言われてみれば。

今の俺の状態だと、アーレンとか幽霊の人はよく見えても車とか建物とか意識しないと見えないというか触れられないくらい薄く感じる。

生きてる人間の姿が、かなり自分が好みとか、かなり印象深い人とか、かなり電波な人じゃないと見えないように感じる。

この辺がレイヤーと言われるところで、意識のレイヤーがあってるところはくっきり見えるけど、レイヤーがズレてるところは見えなくなるか、うっすらとしか感じられなくなる。

このレイヤーのピント合わせを半非物質で常に合わせているそうだ。

そもそも人の生体電流情報にはムラがあり、同じレイヤーに載ってないことも多いので常にそれを切り替えながら対応してるらしい。


俺からすると全くわからんのだが、確かに回収する人によって、現実の風景が強く感じられたり感じられなかったりすることはあった。

言われてみないと気づかない程度だが。


昔、霊能者はオーラが強くて、死者がそれに惹かれてくるとか、金髪の人間超越してる人と太った和服の人が出てくるTVで聞いたことあったが。

妙に複数のレイヤーを貫通して認識できる生きてる人がいることはいる。輪郭線が昭和の漫画のように濃くがガビガビ出てる感じに見えるのが、その霊能者っぽい人なんかな?

他の普通の人が見えないので、こちらから見ると世界は人口密度がかなり少なく感じられる。


「俺がこの状態でうっかり死んだ場合は、レイヤーが違うから自分の体がわからんだろうし。多分混乱してるだろうし・・・わからんな。途方に暮れるかな?」



「先日も言いましたが、幽霊は飛べないしその人が生きてた時の記憶の生活圏でしか動けないのですから、大体は自分が死んだことに気づかずその場にいるものです、勝手に家に帰ったり会社に行ってることはありますけど。だから、そこに迎えに行くために私たちが働いてるじゃないですか」


「自動的にあの世には移動できないのだな」


「太陽まで電車が通ってて、それで通勤してる人とかいたらきてくれるでしょうけど」


「移動だけで何十年かかるんやら」


昔読んだ学研漫画だと、20歳くらいの人が80歳くらいの老人になってる描写があったのでそれくらいかかるのだろう。


「幽体離脱してる人が私たちと共にあの世に来ることは稀にあるので、そういう人は死んだあとはすんなり恒星の方に移行する人もいますが、そんな人はごく少数です。

私たちは、あなた方をひたすら導くためだけに活動してます。ほら、レイヤーを少し認識をズラすと、あっちでもこっちでも、似たような人たちが飛び回ってるでしょ?」


そう言われて周りを見ると、青いウサミミつけた美しい人たちが人を誘って迎えにきてる姿が見えている。

ウサ耳姿は俺の認識フィルターが「恒星人を青いウサミミつけた人たちに見える」としてしまったせいで、半非物質世界はウサミミ天国になってしまってるわけだが。

ちなみに、ウサミミにフサフサの尻尾が生えてる姿なので厳密にはうさぎではない。


「もしかして、他の幽霊になった人にも俺と同じように見えてたりしない?」


「イチロさんだけです私たちをこんな姿で見てるのは。

その人の生前の認識に合わせて見えますから、恐怖を抱く対象として私たちを見ないだけでも私は助かりますよ」


「宇宙人のグレイが人を攫って人体実験してる、という話を真に受けてると、アーレンがそういう存在に見えてしまうから、俺が怖がって協力してくれない可能性もあったと」


「そうですね、爬虫類とかに見られることもたまにあって。

そんな人たちは大体話聞いてくれないから嫌になります。その場合は寸劇をして別の人と協力して連れていくこともあるんですよ」


「寸劇?」


「悪い爬虫類宇宙人が死後のあなたを攫いに来たところに、正義の天使がそれを打ち砕いて正いところへと導くとかそういう話で誤魔化します。

その時は二人組にならないといけないので予定合わせしたりスケジューリングが面倒になります」


死者の出迎えにスケジュールとか予定とかあるんか。

そうなると、運命的に死の瞬間は決まってるということなのか?


「それで今回は二人いるのでせっかくですから寸劇しましょう。これからいく人はキリスト教徒なので、私がイエスっぽくなってその人のもとに現れますから、イチロさんは私に合わせて、なんとなく使徒っぽく動いてください」


「なんとなくでいいんか?」


「相手の方のフィルターが入りますから、イチロさんがいボロを纏っていると清貧の聖者に、多少綺麗な服を身に付けてると豪奢な天上の使徒に見えてくることでしょう」


「じゃあ、今の俺の服装はどうなのだ」


会社帰りの途中で攫われたので、今回もスーツ姿である。


「スーツ姿なので上級天使くらいには見られるのではないですかね?」


こんな感じで、アーレンたちは人知れずいろんな宗派の人たち、いろいろな思想の人たちをあの世、太陽へと導いいていたのだ。

大体、迎えにいくとありがたがられたり、涙流して感謝してくれる人などが多いので騙してるようですっごい気が引けるが。


アーレン曰く「本人が最も納得する姿、情報を投影してるのでイチロさんのせいではありませんから。イチロさんは自分は鏡だ、とか思ってるといいですよ」


と言ってくれるので少し安心する。

でも、子供とかが導かれるのを見ると、ちょっと胸に来るな。

いわゆる無宗教の人は、先に向こうの世界へと旅だった肉親の姿を投影してくる人もいて、なかなか辛い。

アーレンは「本人が見たい情報ですから」とは言うが、そもそも何で俺こんな仕事しないといけないのやら。


死後は何も残らない、真っ暗だ、と思ってる人を迎えにいくと。

自ら暗闇の中に沈むような感じで「無、無、無だ」とか呪文のように唱えててちょっと怖かった。


そこからどうやって恒星に連れていくかというと、これまた怪しげな話になるのだが。

地球の中心から太陽の中心へと恒星人の住処にダイレクトに通路が開通してるので、まず地球の中心へと案内し、そこから一気に移動する。


黄泉の国が地下にある、ハデスの冥府も地下にあるような雰囲気はここからきてるのかも。


地球の中心は、空洞になっていてUFOが出てくるという記述、オカルトな話があるが、それもあながち間違ってなくて。

死者は、、本人が望む「移動手段」で連れて行かれていると情報投影しているらしい。

俺にはUFOにしか見えないのだが、

アーレンのような存在は、その人物の記憶から「適切で違和感のない見え方のする情報」を引っ張ってくる。


電車だったり、船だったり、いろいろなイメージがあるようで。

古い人は三途の川を渡る船のイメージを投影してくる人もいる。

大体は既存の交通機関をイメージしているみたいだが。


それらが死者の意識、情報が地球の中心にくるわけだが、そこにいるのは地底人


半非物質の地底人なのだ。



地底人という言い方は良くないな。

地球のコアをコントロールしている情報生命体らしい。

地球のコアにも磁力とか電気とかいろいろ発生してるし、熱があることでエネルギーがそこそこあるため、恒星人のような情報生命体が住んでいる。

恒星ではないので地球の地底情報生命体なのだが、面倒なので地底人と呼ぶことにする。

恒星人とまた違って、少し土着の雰囲気がある。

そのため、俺には褐色のウサミミで露出の多い姿をした女性たちに見えてしまう。

アーレンたちをもう少し原住民スタイルにした感じだ。そして小柄でグラマララス。

アーレンたちにすこしエルフのようなイメージ、地底人たちにはドワーフのようなイメージが重なっているのかも知れない。これらも俺の認識なわけだから他の人が見るともっと違う姿に見えるんだろう。


地上の地磁気の流れに乗ってUFOは出入りするので南極大陸か地底人のUFOが出てくる、という昔の地球空洞説であったような話も、半非物質世界では確かに存在するわけで。


物質で考えると全て「ない」のだが、情報生命体、半非物質生命体の視点で見ると「ある」になるので、地底空洞説とか唱えてた人たちもこういう世界を見てしまったのだろうなー


となんとなく思ったりする。


で、まず地球の中心に連れてこられた時点で地球のエネルギーにより地上に囚われていた生体電流に記録された情報、幽霊たちは情報生命体へと変換される。

恒星人と共通する情報フォーマットに切り替えられるみたいなものだ。

ここで変換しないと、地球人の半非物質状態のものは恒星に入ることはできないらしい。


「電圧とか電流とか規格がいろいろ違う国に、同じパソコン持ってったらデータが消えたりするでしょ?だから電流とか電圧の規格を整える作業やってるみたいなものですよ」


わかりやすいのかわかりにくいのか、そういう説明をされた。

なんとなくわからないでもないが。


「なんで俺は、自由に肉体から恒星人まで変幻できとるんだ?」


「スーツとか、私たちの高度なテクノロジーのおかげです。パソコンにも電圧が変わっても大丈夫な変圧器みたいなのが入ってるコンセント使うと、問題なかったりしますでしょう。

それと同じようなものです」


同じなのかどうなのか。


そして、地球の中心で一旦規格が整えられてから、半非物質の死者、幽霊であった人物は恒星人、情報生命体となり太陽の中心へと送り出されていく。

ここで、アーレンが使ってた「ポータル」という概念が出てくる。


アーレンたちが地上の迷える魂を救済にくるところが「入口」で俺の肉体が毎回元素になって消滅してる原因となる。

そして、地球の中心から太陽に移動する際に使う「出口」がある。

ポータルは時空を超えて移動するのでほぼ一瞬。

太陽と地球は光ですら数秒かかる距離なのに。

何か特殊な空間に隙間を作るので時間経過がないのだとかなんだとか。


「半非物質で見るとね、空間は折り畳まれて存在してて、その隙間を利用すると時間を超えられるのですよ」


と言われても俺にはよくわからん。

次元とか時空とか、物理とか勉強してる人ならこの辺の概念で新しい発見も生まれるのだろうが。建築資材販売に現場での建設作業請負などやってる身としては、そういうところはよくわからない。



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