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第2話 恒星人

<第2話>


その部屋から出ると、そこは未来都市だった。

そういう言い方しかできない。

なんかよくわからん高い塔があって、よくわからんチューブが四方八方に広がっていて、その先にまた小さい塔がくっついていて。

その周りをまたよくわからんケーブルがまとわりついていて。

そこは巨大な球体の空間の中にあるような作りで、微かに見える空の向こうにも地面があり、同じような塔がたくさん建っているのが見える。


これは、昔読んだ漫画とかアニメで見たコロニーのような、宇宙都市のような風景だ。


それらは全て虹色の半透明の物質でできていて、謎に発光し全体が明るく昼間のようになっている。

雰囲気は惑星の地下世界というか、球体の内側に世界があるような印象を受けるのだが。


さっき出てきた部屋はどうなってたのだ?

気になって振り返ると、すでに出入り口は消え失せ半透明の虹色の壁に覆われた小さい塔のような建物の壁が目に入ってきただけだった。

小さいと言っても5階建てのマンションくらいはある。

遠くの巨大な塔は1000mくらいあるのではないか、という大きさなので他の塔が小さく見えている。


その塔の間を剥き出しのオープンカーのようなものが飛び回っている。

フレームだけで作られた車、という感じで複数の椅子と操作系統と、それを結ぶフレームだけで構成されており屋根も外板もない。

チューブに沿って移動しているので、どうやらあれが交通機関のようであるが。


乗ってる男女は先ほど俺のところに来た少女のように薄あおい感じの人々だ。


みんなでコスプレしてるわけではないよな。


いきなりの異世界に頭がついていってないのだが、少女は俺の手を取りズイズイ歩いて行く。

床の大理石のような材質も気になるが植物が一つも目につかないのがとても気になった。

全て人工的な鉱物、プラスチックのようなもので作られているのだ。


なんだここは


「これに乗ってください」


少女は今流行りの電気で走るキックボードのようなものを示し、俺に乗れという。

いや、俺これ乗ったことないんだけどな。


躊躇していると、ハッと何かに気づいたように少女は


「ごめんなさい、そういえばあなたはこちら初めてでしたね。わかりました、私の後ろに乗ってください」


そう言って二人乗りしろと言われるが。

目の前には少女の背中しかないわけで、これはつまり、


「どこに捕まればいい?」


と聞くと

「捕まらなくてもそのまま立ってると大丈夫ですよ」


と言ってにっこり笑った途端、それは空中に浮き上がり一気に加速していく。


うわっつ


つい目の前にある細い腰にしがみつきそうになったが、いや空に上がって加速してるけど自分の体には何もその感じがない。

加速してる感じもないし、重力から解き放たれた感じもない。

ただ、そこに立ってるだけで周りの風景が映像のように流れて行くだけ。


少女はハンドルのようなものを操りながら街の中をどこかに俺を運んでいるが、

慣れてくると周りを見る余裕が生まれてきたので腕を組んで仁王立ちしたまま周囲を見渡す。

たまに宙返りとかしてるけど全くGを感じない。


服も乱れないのだから何かの空間で覆われているのかもしれない。

一見ネイキッドなオープンカーに見えていたあれらも同様に、何かの力場に覆われているからあんな剥き出しでも問題ないのだろうか。


そもそも、これって重力制御とかではないのか?


色々考えるほどに現在の技術水準を超えたものしか思い当たらないので、考えるのをやめた。


よし、宇宙人に連れ去られたと思うことにしよう

こうなったら昔のSF漫画の主人公よろしく、現状を受け入れ楽しむしかない。


街の様子を改めて空から眺めると、巨大な塔を中心に螺旋を描くように塔がだんだん低くなるように設計されていて、一番外縁の塔は数メートルくらい。


その螺旋を描いた街が、どうやら幾つも存在してるようで。

霞んだ反対側の地面からも巨大な塔がニョキニョキ生えていて、丸い空間の内側に一つの世界が存在してるような感じになっている。

ただ、その丸い空間が直径数十キロくらいの範囲になってるだけで。


こんなふうに閉じた空間を作っているのも、人工的な都市というのも、いかにも宇宙の人が住んでいる世界って感じになってるな。

本当に俺は、宇宙人に攫われたのか?


とか思っていると乗り物は停止し、ゆっくりと地面に降り立つ。

そこにはそのキックボードのような乗り物が幾つも並んでいて、いわゆる駐輪場か駐車場というところのようだった。


ここの交通機関はあの数人人が乗れそうなネイキッドなオープンカーのようなものか、このバイクのように二人乗りで移動するものになっているのかな。


他に歩いてる人もいるが、ほとんどはこれらで空中を高速移動している。

張り巡らされたチューブは、どうやらこの移動装置が走る道路の役割のようだが、無線で電力とかエネルギー供給もしてるのかもしれない。

キックボードやオープンカーにはどう見ても電池やモータの類が付いてるように見えないし。

ただの大人が二人たてる程度の板に、ハンドルが刺さってるだけという形なのだから。


この仕組みにも興味があるが


しかし少女が先に進むので後をついて行かないわけにはいかない。

場所的には、自分が囚われていた?のが辺境の低い方の塔で、今連れてこられたのが中央の巨大な塔のようだ。

その中央の塔に一部空間が開き、そこに案内されていく。


中に入ると、そこには庭園が広がっていた。


庭園としか言いようがない。

噴水があり、芝生の広場がり、森が周りに広がり至る所にガゼボや東屋が存在している。

小川が流れ小鳥たちが囀り、鹿のような生物も徘徊してたりする。

急に見慣れた風景が広がっているので、あまりの外の人工的な様子との違いに戸惑うばかり。


その庭園の中で、人々が語らっている様子も見える。

しかし、外から見るよりもかなり広く見えるが、外縁は立体映像にでもなっているのか?


など考えてしまうくらい、広く美しい森の片隅にある庭園、という雰囲気だった。

なんか微かにお城か宮殿みたいなものも遠くに見えているけど。


その中の一つの東屋に案内される。

そこにはテーブルと椅子が配置され、普通に日本でも見かけるような洋風のガーデンテーブルに椅子という感じ。

材質もスチールかな、と思わせるような色で座ってみてもスチールの感じがある。


東屋は木製だろう。西洋風な作りで白い色で塗られているためプラスチックっぽく見えるが材の組み合わせ方は木造の特徴が出ている。

さっきの謎の部屋よりは親しみやすいとこで少しホッとしてると。


青い少女は俺の隣に座り、

そして頭を下げて


「今回は、大変申し訳ありませんでした」


いきなり謝られてこちらも対応に困る。あわあわしてしまうが表面上は落ち着いた大人の男の風を見せて


「顔をあげてください、何が申し訳ないのかよくわからないのですが」


そう言うと、またハッとした表情をして


「そうでした、あなたは〇〇の人でしたね」


聞いたことのない単語が出てきたので、一瞬ん?となったが、少女はまた頭のウサみみを触ってぶつぶつ言ってから


「まずは現状を説明しましょう」


と言って、すぐに俺の顔を、両耳を抑えるようにしてグッと両手で掴む。

まるでキスでもされるような勢いだったのでびっくりしたが、すぐに彼女の頭のうさぎ耳が伸びてきて俺の目を覆った。


そこから、映像が、音が、頭の中に流れ込んできた。


あの日、バーを出てから俺は時空の隙間に落ちたらしい


いや、言葉にすると非科学的だが、説明するにはそうとしか言いようがない。

この少女たちは「恒星人」と自称していて、どうやら星の中に住む人々らしい。

もうこの時点で胡散臭いのだが、映像と音のすごいVRを見せられている感じで信じるしかないようなテンポで情報が入ってくる。


自分の頭で理解できるとこまで確認すると。

この恒星人は地球へかなり普通に行き来しており、その都度恒星から地球の特定の地域へとポータル、ゲートというかそういうものを作成していたらしい。

それを使うのは一瞬で、普通ならば人間がそこに入り込むことは無く、無機物だらけの物質しかない惑星から生物が発生するくらいの低い確率で、ほぼ存在し得ないはずだったのだが。


何かの偶然で、今回俺はそこに巻き込まれたらしい。

しかも、手には冷凍みかんを持っていたらしい。


なるほど、なぜあの部屋に冷凍みかんがあったのか理由が見えてきたぞ


しかし、それ以外がよくわからない。

彼女たちは冷凍みかんに時空を超える何かがあるのではないか、とかなり真剣に調査したようだが理由発見できず。

単独でその要因がない場合は複数の要因が絡む可能性があるため、俺のことも詳細に検査された。

結果、どうやら冷凍みかんを口にした時にその現象が起こるとが確定する。


なんじゃそりゃ


心の中でツッコミを入れつつ

口の中で程よく溶ける冷凍みかん、その時に熱を奪う反応が口腔内で起こるが、その際に生まれる微細なエネルギーの揺らぎが恒星人の使うポータルに反応するようで。

俺が冷凍みかんを口にしてほろ酔い気分で街に出た瞬間に運悪くそこにポータルを開いた恒星人がいて、そこにスッと俺が入り込んでこっちに引き込まれてしまったのだとか。


誰だよ、その運悪く開いたやつは。


と思ったら目の前の少女だったりする。

さっと目の覆いが外されて解放され、そして少女がまた謝る


「私のせいで、本来ここにくるべき時期ではないのに、連れてきてしまって申し訳ありませんでした」


と。

そう言われても、俺は今のところ元気だし普通に戻れるなら問題ないのだし。


と言いながら、少女に顔を上げるように言うと。



「いえ、実はあなたの肉体はポータルに巻き込まれた時にミンチになってしまいまして、破片も元素単位で行方不明になってしまいました」


衝撃の事実


「いや、しかし俺今ここに生きてるし、さっき冷凍みかん食ったじゃん」


さっき顔を近づけた時なんかは目の前の女の子の息遣いだって感じられる。

とまで言うと警戒されそうなのでそこは心の中に置いて。


「さっきの冷凍みかんはこちらで体の再構成がきちんとできているか、の最終確認だったんです」


「最終確認?」


「あなたがポータルに入って元素分解する一瞬にポータルに記録されたあなたの情報をできるだけ拾い集めてこちらの物質で再構成したんです。

ただ、持っていた物質と混じってないかとか、冷凍みかんが体の一部になってないかとか、体内までしっかり作られているか疑問がありましたので、最後に手に持っていた冷凍みかんも本人と別のものとして再現し、食していただき、きちんと全て再生されているのが確認されましたので今ここにご案内してきたのです」


「カバンとかは?」


「その時手に持っていたものは全て再現されてます。カバン?とやらはその時手にしていなかったのでしょう」


じゃあ店に忘れてたのかも。

カバンが行方不明になってないなら資料もパソコンも消えてないから安心した。


しかし冷凍みかんが溶けない状況とか、俺のいた空間の説明とかは省かれてるような気がする。

知らなくてもいいからなのか、故意なのか。


それよりも興味があるのがそのポータルだ


「ところで、俺を元のところに戻すと言ってるが、ポータルを使って戻すのか?」


「いいえ、あなたはポータルを使えません」


「なんで?」


そこでポータルの説明がされる。

恒星人はポータルを入り口から入って出口から出てくるのではなく、入り口で一度元素に分解されて恒星人情報だけがポータルを通っていき、向こうで必要な元素を集めて肉体が再構築されていくという手法で移動してるらしい。


それ、出入り口にハエとかいたら最悪じゃん


と思ったが、そもそも俺はこの少女が開いたポータルに巻き込まれているが融合してないのでその辺は問題ないのだろう。

しかし、元素分解とかそこで発生するエネルギーとか熱量はどこで吸収してるんだろうか?


「それ、失敗とかないの?」


「私たちは情報生命体ですから、肉体の構成密度があなた方と違うんです。だから再構成に失敗したならもう一度戻ればいいんです」


あっさりなんかすごいこと言ってるが。


「情報生命体?」


「そのあたりはだんだん知っていくことになると思うので、今はまずあなたを元の場所に戻さないといけません」


「そりゃそうだな、しかしポータル使わないでどうすんの」


「これで向かいます」


と言ってまた俺の顔を両手で捕まえて耳飾りで目を覆おう


おぼろげながら見えてきたのはどう見てもUFO

それもアダムスキー型だ


目隠しを解いてもらってから


「あの、これ飛ぶの?」


「あなたの認識にある「異星からの乗り物」がこれでしたから」


「今までで一番インパクト受けたのなら、スター・デストロイヤーだけどな。あの登場シーンは古い映画でもかっこいいと思ったよ」


「かっこいい、という感情は人間性が固まってからの、意識が成長してからの感覚ですからちょっと不確定要素が多くなるんですよ。

ですが、その始まりの意識の根底に残っている根源的なものなら再現が手っ取り早いのです」


確かに幼少期は親が定期購読してたレムリアだかアトランティスだかの名前のついた雑誌で、そういうものはよく見てたけど。


「空飛ぶ円盤かー」


確かに一度乗ってみたいと思っていたが、まさか自分が乗ることになろうとは


「で、誰が運転するの?」


「私です」


「なんでもできるね」


「支援型の義体ですからなんでもできます」


そう言って胸を張っているが


義体、支援型。

何か、男心を刺激する響きの言葉だ。

ということはアンドロイドなのかな。

なんかさっきから映像見せる時も手とかで耳塞いでるはずなのに音楽とか音とか聞こえてたしな。

手がスピーカーになってるのか?


そもそも、整いすぎている顔つきなども「作られたもの」と考えるならそれもありそうな気がしてきた。

髪の毛が水色とかまさにそんな感じだし。

あれ?でも他の人達も同じだったような?

しかしなぜうさ耳なのか。


それ以前に、

地球に出入りしているという言い方をしているが、このような人間は見たことがないぞ?

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