歪な私
「ねぇねぇ!ママ見て!私今日絵で賞取ったよ!ステージに登って、いっぱいすごいって言われたよ!」
「…だから?」
「…え?」
「だから何?」
「えっと…」
「ママ忙しいから、どっか行って」
「…うん…」
…昔からそうだった、私は、誰からも興味を持たれなかった。
「パパ!!あのね今日ね!―」
「あ“-ハイハイ、そういうのはママにやって」
「…あ…えっと…」
ドンッ!と机を叩く大きな音が響いた。
「…ねぇ、何よ、その言い方、まるで子育ては女だけの仕事みたいじゃない!!!!」
「はぁ?事実だろ」
「あ“あ““ぁ~!!あなたっていっつもそう!!私は一日中ずぅっと!家事育児をやってるのよ?!あなたも少しぐらい協力してよ!!」
「…はぁ~あのなぁ~俺は仕事してんの、分かる?お前達みたいな無能を養うため頑張ってんの!分かる?!」
「うるさい!!うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!」
「あ“~始まったヒステリック、お前それしか出来ねぇのかよ、マジで能無しだな」
…私だ…私のせいだ、私が、私を見て欲しいって思っちゃたから…全部、全部全部全部、私のせいだ…
………
どうしよう…ペアで行動しろって言われちゃった…でも、私、仲が良い人なんていないよぉ……
「ねぇねぇ!!ゆいな…?ちゃんだよね?ゆいなちゃんは相手決まった?」
「…ま、まだだよ…」
「じゃあさ!私とペアになろうよ!!私⬛⬛⬛って言うの!よろしく!ゆいなちゃん!!」
「…!!うん!よろしく!!⬛⬛⬛ちゃん!」
…うれしい…やった!やったよ!やっとだ、やっと【私を見てくれる】人がいたよ!…嬉しい…お天道様は見てくれてるんだね!
「じゃあ、行こっか!!ゆいなちゃん!」
「うん!」
この子は大事にしないと…こんな私を見てくれてるんだからね!
「…あ!⬛⬛⬛ちゃん!今日公園に行って遊ぼうよ!」
「…ごめん無理」
「そっか...じゃあいつ―」
「私!もうゆいなちゃんとは遊ばないから!!」
「………え?」
「…私、【か⬛―】ちゃんから聞いたよ、ゆいなちゃん、色んな人からいっぱい色んな物盗んでるんでしょ!」
「…え?…なんの話し…後、何ちゃん?お名前よく聞こえなかった…」
「嘘つかないで!ゆいなちゃん、私からもいっぱい色んな物盗んでるじゃん!この前、ゆいなちゃんのランドセル内緒で見たら私の無くなった物いっぱい入ってじゃん!」
「し、知らないよ!盗んでなんかないって!」
「…私、ゆいなちゃんの事大好きだったのに…」
…大好きだったのに…?…だったのにって事は、もう大好きじゃ無くなったって事…?…もう私を見てくれないって事?…なんでよ…私盗んでなんかないよ!本当なのに…
「お母さんと先生にも言うから!」
「ま、待ってよ…⬛⬛ちゃん…」
………
「…ごめん、私もう結奈ちゃんとお友達続ける事出来ない…ごめん…」
………
「もう…私と関わらないで欲しい…じゃあね…」
………
「…あのなぁ~お前、女だからって調子のってるだろ?たかがちょっと尻触られたからって…
社会人にもなってセクハラ、セクハラって騒ぐな」
………
…仕事…辞めちゃった。
辞める時、部長にめっちゃ起こられちゃったなぁ~
…私って何なんだろう…誰からも見て貰えない…誰からも愛されない……
…物語に出てくるお姫様っていいよね、だって、沢山の人に見て貰えて愛されてるんだもん。
…私だって、いっぱい努力したよ、人に見てもらうために色んなこといっぱいやってきた!!!!…なのに…なのに…
…あぁ、惨めだなぁ、私。今までやってきた努力は全部【私を見て貰う】ためだけにやってきた事。
そんな下心でしか行動出来ない惨めな女、愛されるはず無いよ…でも、一度で良いから、壊れる程の愛を浴びてみたい。…流石に強欲過ぎるか。
………
「…最っ悪…」
結奈は誰もいない、真っ暗な寝室で顔を歪めそう呟く。
「はぁ~よりにもよって…」
結奈は起こしていた体を再度ベットへと沈める。
「…気持ち悪い、本当に気持ち悪い」
この世界は結奈の願いどうりの世界。
何もしてない、ただいるだけ、それなのに崇められ、愛される。結奈にとっては夢のような世界…
しかし結奈はその愛情が苦しく、気持ち悪るく感じた、何故なら、愛されれば愛される程、見たくもない【気持ちの悪い自分】が見えてくるから。
結奈は【本物】であるメルーナに体を返したかった、これ以上、自身に嫌悪感を感じたくなかったから。だがそれは叶わない願いとなり消えていった。
結奈はその事実にショックを受けたが、それと同時に、嬉しいと思ってしまった。
その感情がさらに、結奈を歪にさせた。
結奈は分かっている。自身が歪な存在な事を。可笑しな程に愛を求め、そして可笑しな程に貰った愛に苦しむ。しかし結奈はそれでも愛を求める。
何故ならば…結奈は永遠に…愛に囚われ続けているから。
一度空っぽになった器は、もう元には戻らない。




