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白雪は歪んだ林檎に見惚れる

どこが好き?


いつも何かに怯えてるとこ、弱々しいとこ、愛に餓えてるとこ、可哀想なとこ、他にも沢山ある。


いつから好きなの?


小学生の頃から。


どうして歪んだ林檎に執着するの?


愛してるから。




………




華奏(かなで)は幼い頃から人気者で、いつも誰かに囲まれていた。


「かなでちゃん!今日一緒に遊ぼ!」

「うん、いいよ」

「あー!!ダメ!かなでちゃんは今日わたしと遊ぶの!」

「はぁー?先に約束してたの?」

「…してないけど、でもわたしと遊ぶの!」

「………」


二人は華奏の取り合いを始めだし、華奏はそれをニコニコと見守り続けるだけだった。


「二人共!喧嘩は良くありませんよ!」

「「先生!」」


見かねた教師が二人の争いを止めに入った。


「先生!わたしが先にかなでちゃんと遊ぶ約束したのにこの子が邪魔するの!」

「違う!邪魔してない!かなでちゃんと遊びたいだけ!」

「落ち着いて…華奏ちゃんはどうしたいの?」

「……二人と一緒に遊びたいなぁ」


華奏は可愛らしく首を傾げ媚びるように瞳をうるうると揺らす。


「華奏ちゃんは二人と一緒に遊びたいんだって」

「…分かった」

「一緒に遊ぶ」

「うん、仲良く遊んでね」


教師はそう言うとその場を離れ、その様子を見ていた別の教師に話しかけた。


「…やっぱりです」

「…でしたか…()()華奏ちゃんを…」

「はい、また子供達が華奏ちゃんを()()()()()喧嘩していました」

「…うーん」


教師達は頭を抱える。

実はこのように子供達が華奏を求めて喧嘩するのは珍しい事ではなかった。


「…あの子、とんだ大物になるでしょうね…」

「間違いない、あの魔性は見てて本当に恐ろしいです」




………




華奏はお金持ちの家に産まれ、両親にも非常に恵まれていた。


「華奏、貴女は今日も可愛いわねぇ、私の自慢の子よ」

「だな、今日はこんなに可愛いんだ、明日はもっと可愛いぞ」

「ありがとう」


華奏は子供らしからぬ完成された笑顔を見せる。


「そういえば華奏、今度ピアノの発表会があるんだろ?新しいドレスを買いに行かないかい?」


父親は華奏に買い物へと誘う。


「…んーんいらない、ドレスはいつものを着る」

「あら、また?あのドレスはもう古いわよ?」

「……だって、おとーさんがお誕生日に心を込めてアタシの為に買ってくれたから、だからあのドレスが好きなの」

「華奏…」

「…いい子ね…」




………




「……はぁ」


華奏は一人でとぼとぼと公園へと向かう。


(…皆うるさい、アタシ一人が好きなのに誰もアタシを一人にしてくれない、ウザイ)


華奏は心の中で文句を垂れる。


「…やっとついた」


華奏は誰一人としていない古い公園のブランコに飛び乗る。

ギギッと錆びた鉄が擦れる音をならしながら華奏は満足そうな子供らしい表情をする。


華奏は古い物、壊れた物が大好きだ。

錆びたブランコに、使いまわし続ける古いドレス、そしてすぐに壊れる友情。

華奏はそれらに異常なほどの執着を見せる。


「♪~~」


上機嫌な華奏は鼻歌を歌う。

その時、近くから小さな足音が聞こえた。

華奏が足音の方を向くと、そこにはボロボロな洋服にボロボロな身体、ボロボロな表情でうつむく少女がいた。


少女は華奏に気付いていないのか、座り込み、声を押し殺しながら泣き出した。


華奏はそんな少女に目を奪われた。


(…可哀想)


しかし華奏の顔は笑っていた。


華奏はブランコから降り、少女に話しかけた。


「ねぇ、何でそんなにボロボロなの?」

「ひぅっ…うぅ」

「…あ」


少女は人がいたことに驚きその場から逃げてしまった。


(…可哀想…♡)




………




そこからは早かった、華奏はお得意の可愛らしい態度で少女の特徴を色々な人に話し、知ってるかを訪ね続け、すぐに少女を見つけ出した。


「ゆいなちゃんかぁ~可愛いお名前~♡」


その日から華奏は結奈(ゆいな)にこっそりと執着し始めた。




………



「ねぇねぇ、貴女⬛⬛⬛ちゃんだよね?」

「え?…あっ!か、かなでちゃん?!

うん!そうだよ!どうしたの?」

「…貴女、ゆいなちゃんとお友達なんでしょ?」

「え?うん」

「……ごめん、やっぱりなんでもない」

「えぇ~?!どうしたいの?教えてよ~」


華奏は相手が話しに食い付いたのを確認すると、まるで悲劇のヒロインのような表情を浮かべる。


「…実はね、ゆいなちゃんが貴女の物を盗んでいるのを見ちゃって…」

「え?!」

「ゆいなちゃん、盗んだ後、自分のランドセルに隠してて…お友達だっていうから、お話しするの悩んだんだけど…」

「…話してくれてありがとう、かなでちゃん!

ゆいなちゃん…最低!わたしゆいなちゃんのランドセル見てみる!」

「うん、そーした方がいいよ」


華奏はニヤニヤと口角をあげる。




………




「…あ!⬛⬛⬛ちゃん!今日公園に行って遊ぼうよ!」

「…ごめん無理」

「そっか...じゃあいつ―」

「わたし!もうゆいなちゃんとは遊ばないから!!」

「………え?」

「…わたし、かなでちゃんから聞いたよ、ゆいなちゃんがわたしならいっぱい色んな物盗んでるって!」

「…え?…なんの話し…後、何ちゃん?お名前よく聞こえなかった…」

「嘘つかないで!ゆいなちゃん、わたしこの前、ゆいなちゃんのランドセル内緒で見たらわたしの無くなった物いっぱい入ってたよ!」

「し、知らないよ!盗んでなんかないって!」

「…わたし、ゆいなちゃんの事大好きだったのに…

お母さんと先生にも言うから!」

「ま、待ってよ…⬛⬛⬛ちゃん…」




「んふふ♡可哀想なゆいなちゃん♡」


もちろん結奈は盗んでなんかなく、華奏が事前に仕込んどいたのだ。


それからも、華奏は自身の愛され体質を利用し、少しずつ結奈を貶めていった。




………




「たくっセクハラって…馬鹿みたいな理由で辞めあがって…」

「…どーしたんですか?」


バーで酔っていた結奈の元上司に、華奏は派手な姿で近づいた。


「うお…お嬢さんいい身体してるねぇ」


元上司は鼻の下を伸ばし華奏をニヤニヤと見つめる。


「ヤダー…えっち」


華奏はあどけなく首を傾げる。


「…ねぇ、何かお悩みごとでも?」

「あ、あぁ実はね、うちで働いてた女が馬鹿みたいな理由で辞めたんだよ」

「そーなんですか?」

「…あぁ、まったく、たいして可愛くもないくせに、ああいう女ほどすぐ騒ぐんだよな」

「大変ですねぇ…ねぇアタシもっと貴方とお話ししたいなぁ、二人っきりで♡」

「おぉ、大胆だねぇ」




………




「がっ!止めっ!」


グシャ!

何かが潰れたような音が裏路地に響く。


「…アタシ、壊れた物が大好きなんだよね、ねぇ、もっと壊してもいい?いいよね、お前みたいなごみが消えても誰も気付かないでしょ」


華奏はそう言うと、隠し持っていたハンマーで再度強く殴りつけた。


ゴシャア!!


「…結奈ちゃんを壊すのはアタシの特権なんだから」




………




「ハッ、ハッ」


人気のない裏路地を過呼吸気味で走り抜ける結奈を楽しそうに追いかける華奏。


「つぅ~かぁまぁ~えた♡」

「きゃあ!!!!!嫌!!助けて!!」


華奏は結奈の腕を掴むとすぐに硬い地面へと押し付けた。


「あはぁ♡~可愛いねぇ~結奈ちゃん!♡」


華奏は頬を赤く染め興奮する。


「…だれ…だれな"の!?私が一体何したっての"!?はなじて!はなじでよぉ!!」


結奈は全てをぐしゃぐしゃにしながら問いかけるが、華奏は無言で結奈をただただ見つめ続ける。


すると、いきなり視界がぐらりと揺れた。


(…ぐらぐらする…ダメ、やっと結奈ちゃんと愛し合える時が来たのに…)


しかし華奏の抵抗は虚しく、またすぐに視界が酷く揺れ、次第に目の前が真っ白へと染まった。


「…結奈…ちゃん」

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