醜い化物
兵達は剣を振り上げ、襲いかかってくる気味が悪い怪物を次々と切り裂いてゆく。
なぜ怪物なんかと争うことになったのか。
リリーナ達はあの後、しっかりと作戦を練り直し、何度目になるであろう戦場へと向かった。
兵達は皆、必ず何処かに怪我を負ってしまっており、充分な力を出せずにいたが、医療魔法が得意なロセにより傷は綺麗さっぱり消えていた。
しかもロセは事前に準備していた腹持ちのいいご馳走を皆に与えたのだ。
しかし、だからと言って崩れてしまった精神は元には戻らず、仲間の死や血の生暖かさに触れ、壊れてしまった数人の兵はもう戦えないと判断され、魔法が得意なルイゼンにより、困難とされる転移魔法でレミーラ王国へと送還されたのだ。
他にも、激しい戦の末、身体が欠損してしまった者も数人ほど見付かった。
ロセは医療魔法が得意だが、失くなった部位をもう一度蘇らせるのは禁忌魔法として仕様禁止と法律で決められているため、流石に欠損してしまったとこまでは治せず、幻肢痛で苦しむ兵もルイゼンは送還しようとしたが、本人は自身はまだやれる事、何かあった時の義足は用意されている事、腕が無くとも魔法で戦える事、兵達は必死になり戦に参加する事を申し込んだ。
ルイゼンはそんな様子に戸惑いを見せ、何故戻る事を拒否するのかを尋ねた。
すると兵達は答えた。
「戦に参加する際に我々は覚悟しておりました!」
「我々はレミーラ王国を守る兵です、このような事では決してへこたれません!」
「皆さんはお優しすぎます!我々の事は気にせずに使い倒して下さい!」
その言葉に他の兵達も頷く。
「…分かった、お主らがそう願うのであればそれを受け入れよう、という事で、この者達も戦に参加してもらう。よろしいでしょうか?」
アルバンはグイユとルイゼンにそう問いかける。
「本人達が望むのであれば」
グイユは目を伏せ答えるが、ルイゼンは何とも言えない顔でもう一度ど欠損した者達に尋ねた。
「…本当に大丈夫なのかい?あまり無理しなくても良いんだよ、何せ俺達が来たんだから…」
「戦は無理して当然です」
「御気遣いありがとうございます、王太子様」
「しかし…」
「ルイゼン……様、本人達が望んでいるのですよ」
「グイユ…」
バカらしい芝居だこと…リリーナは内心で悪態を付く。
正義感溢れる生半可な態度のルイゼンにリリーナは(そもそも戦を命じたのはテメーだろ)とツッコミながら唾を吐き捨てたくなる気持ちを抑える。
「…分かった、期待しているぞ」
ルイゼンは薄ら笑いを浮かべる。
「あの、そろそろ向かいましょうこうしている間にもルーちゃんが……」
リリーナ強く拳を握りる。
「…!…あぁ、早くメルーナを助けに行こう!」
ルイゼン、グイユ、リリーナ、アルバン、ロセは兵達を引き連れながら森を後にした。
リリーナを除いた四人はどれ程の数で押し掛けてくるのか、少しだけ不安を感じながら森を抜けた。
すると目の前には敵軍達が待ち伏せをしていたが、リリーナの言う通り、敵軍達は四人の想像していた倍はいたのだ。
「…一応言っとくけど、これでも減らした方だからね」
リリーナは眉をひそめながら銃を構える。
そして兵達もいつ来ても言いように、剣を構える。
しかし、敵軍達は余裕そうにニタニタと笑っていた。
「凄い笑顔、なんか良いことでもあった?教えてよ、すぐに枯らしてあげるから」
リリーナは敵軍達に言い放つ。
すると敵軍の一人が愉快そうに話し出す。
「えぇ、本当、笑みが止まりませんよ。
だって不愉快なあなた方を今日やっと一掃出来るのですから」
一人がそう言うと懐からビー玉のような物を取り出し、それを踏み割ったのだ。
すると、粉々になった硝子の破片が霧になり消え、その霧が何か人形のように集まり、最終的にその霧は見るに耐えない化物へと変貌したのだ。
「は?!」
リリーナは驚きが隠せていなかったが、それはリリーナだけではなかった。
「なんだ…?あの生き物は…」
「まさか【創成魔法】?!禁忌のはずじゃ?!」
アルバンは見たことの無い化物へと興味を示したが、グイユはすぐにそれが禁忌魔法だと言うことに気付く。
「禁忌魔法何かで驚いて下さるとは、レミーラ王国は大変平和なのですね」
敵軍は馬鹿にしたように嘲笑う。
「平和である事は素晴らしいことではないか」
しかしルイゼンにはその嫌みは通用しなかった。
「…貴方はレミーラ王国の王太子様であらして?
戦を命じたのくせに平和を語るとは…矛盾しておりますぞ」
「俺はメルーナを救う為に戦を命じたのだ!
早くメルーナを解放するんだ!」
ルイゼンの話の通じなさに敵軍達は呆れかえる。
「こんなんでレミーラ王国はやっていけるのですか?まぁもうすぐで終わりますが」
「あんたらのとこよりかはマシ
後終わるのはあんた」
リリーナは真顔で答える。
「そうですか、では、始めましょうか」
一人がそう言うと、他の敵軍達もビー玉のような物を取り出し割り始める。
気が付けば周りは歪な怪物しか見当たらなかった。
「お前ら!怯むな!向かえー!!」
アルバンが声を上げると、兵達は怯えることなく化物へと剣を振りかざし、攻撃を始めたのだった。




