血塗れウサギ
とうとう始まってしまった。
血を血で洗う戦が。
兵達は控えめな船を使いレミーラ王国からフメル王国まで時間をかけてフメル王国へと侵入。
先に来ていた捜索隊が用意した大きな馬車に皆が乗り込むと、馬達は大きな声を上げ走り出した。
馬車の中では若い兵達が皆、今までと違う重苦しい雰囲気、そして若くして失くしてしまうかも知れない命に怯え、涙を流すものまでいる状況となっていた。
しかし、どれだけ神に祈ろうと馬車は止まってくれない、帰してくれないのだ。
皆が黙り静かな空間には、ガタン、ガタンと揺れる馬車の音だけがなり続けるのだ。
そんな中、リリーナは唯々強く眉を潜めているだけだった。
その表情は憎しみから来るものか、それとも後悔か、あるいは両方か…それは本人しか知りえない事だ。
…………
兵達も皆武器を強く握りしめていた。
皆が恐怖と向き合う覚悟をしていた時、馬車がいきなり急停止したのだ。兵達は何事だ、着いたのか?と声を上げ、リリーナも困惑していた。
「…どういう事?目的地までまだかかるはず…」
リリーナが外の様子を見るため、馬車の扉に手を掛けた瞬間、馬達の悲痛な鳴き声が響き渡った。
「は?!」
リリーナは慌てて外に飛び出すと、他の兵達もリリーナに合わせて馬車から飛び出す。
目の前には血に塗れた剣を持つ敵軍が大量にいた。
「…サーカンス様のおっしゃるとうりですな」
「本当に攻め混んでくるとは」
敵軍達は重そうな鎧をガチャガチャと鳴らしながらリリーナ達に近付く。
「…チッ…あんのクソ野郎お得意の小賢しい魔法でこっちのことを探ってやがったな…お前ら!!かかれ!」
リリーナが声を荒げた瞬間、戦の始まりの合図かのごとく、兵達は武器を抱え敵軍にへと突っ込んで行った。
「早く聖女様を解放しろ!!」
「聖女様に罪はない!!」
「聖女様をお助けするぞ!!!」
皆が皆、我が国の聖女を救うため、声を荒げ敵軍達を切りつける。
飛び交う悲鳴と血飛沫。乗ってきた馬車は敵軍達により跡形もなくボロボロにされ、馬達肉片がそこじゅうに散らばっている。
リリーナは兵達を導くため、敵軍を撃ち殺しながら先頭を駆け抜ける。
「お前ら!!早く進め!早くメルーナ様を救うのだ!」
リリーナの言葉に兵達は聞くに耐えない雄叫びを上げながら前へと進む。
敵軍も行かせて堪るかと容赦なく兵を刺し殺してゆく。
殺し殺されの戦場。敵味方関係なく次々と意図も簡単に人が倒れてゆく。
リリーナは込み上げてる感情を押し殺し、前へ前へと走り抜ける。
「行かせるな!前を走る女を殺せぇ!!」
その発言を聞いた敵軍は一気にリリーナへと襲いかかる。しかし皆リリーナの敵ではなかった。
リリーナの手によりバッタバッタと倒れゆく敵軍達。
リリーナはその隙に魔法を使い自身の行動速度を早める。
敵軍達も同様、自身にバフ魔法を掛け、殺害を繰り返す。
そんなことをしている間にいつの間にか地面は血に染まり、真っ赤になっていた。
鉄の匂いが嫌でも感じる。そんな気持ちの悪い空間に吐き気を催す兵が何人もいた。
しかし隙を見せると殺されてしまうため、泣きながら吐瀉物を吐き出し剣を振るうものもいた。
カオスが混じりに混じる、戦とはそんなものだ。
戦を命じたメルヘン王子はきっと、こんな空間なんて想像もつかないであろう。血は虹色だと思っていても可笑しくはないやつだ。
リリーナは気を紛らわせるためそんなことを考える。
(…たった一日じゃ城に向かって攻め込むなんてさすがに無理がある。
とりあえず今は先に来ていた奴らが用意したテントに向かうが優先!)
リリーナは更に速度アップの魔法を掛け、敵軍を殺し、兵隊を引き連れながら用意されたテントへと向かう。
(…コイツらの目を欺きながら向かわないと。
まぁ、欺いたところでどうせハエ犬が小賢しい魔法で見つけ出すだろうがな)
リリーナは舌打ちをしながらテントがあるという森の中へと入ってゆく、が勿論敵軍達もリリーナ達をおい森の中へと入ってくる。
青々しい草が醜い赤に染まってゆく。
リリーナがどうやってテントに向かうかを考えていると、敵軍達に少しずつ違和感が見えてきたのだ。
いきなり座り込むもの。いきなり嘔吐するもの。いきなり苦しみだすもの。
様々だが皆、見て分かるほどに弱ってきているのだ。
リリーナ達は勿論、敵軍達も自身達の様子に理解が追い付いていないようだ。
しかしこれはチャンスだ。
兵達は銃を取り出し容赦なく敵軍達の頭を撃ち貫いていった。
そして森の中は風の音だけが聞こえるのだった。
「…お前ら、今のうちだ」
兵達は少し戸惑った様子でリリーナの後に着いていった。
それにしても、敵軍達はいきなりどうしたのだろうか、そしてどうしてリリーナ達にはなんの影響もないのだろうか。
リリーナは頭を働かせるが何も分からなかった。
が、一つだけ断言できるとしたら、この森は間違いなく人の手が加えられいるのだろう。しかし、何が目的で、何の理由で…それは誰も分からないのだった。




