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良からぬ事を予言するかのごとく、強く風吹く森の中にポツンと佇む木造の家。
そしてその家の中には、黒と白のグラデーションが特徴的な美しい髪を持った一人の少女が新聞を広げ呆れたような表情を見せていた。
「……はぁ、馬鹿じゃん…」
少女が見つめる新聞には【フメル王国がレミーラ王国へ宣戦布告?!✕✕年ぶりの戦が始まるかのか?!】という文字がデカデカと書いてあった。
少女は左右で色の違う瞳を伏せ、広げていた新聞を閉じた。
呆れた表情だった少女は、いきなり愛しい者を見つめるような表情へと変わった。
「…結奈ちゃん、待っててね…?アタシが助けてあげるからね…♡」
少女は恐ろしい程に口角を上げ、ニタニタと歪に笑いだしたが、すぐにまた眉をひそめだした。
「それにしても...この身体の兄貴はマジ厄介すぎ。アタシに逃げられたからって結奈ちゃんに手出すんは違うじゃん。
…大人しくかみさま?に殺されてろよ」
少女は苛立った様子で頭をかきむしる。
「…アイツも腹立つけど、あのピンク髪の女も腹が立つ。なに結奈ちゃんにベタベタしてんだよ、何でアンタごときが結奈ちゃんの信頼をえてんだよ!!
…あぁ、でも。
可哀想そうな結奈ちゃん…♡だって、あんなアバズレでも、結奈ちゃんにとっては価値のある子だもんね♡
前までは皆が結奈ちゃんから離れていったもんね♡本当に嫌われ体質の可哀想そうな結奈ちゃん♡運が悪すぎる可哀想そうな結奈ちゃん♡
あの女が今の結奈ちゃんの希望だもんね♡良かったね結奈ちゃん♡笑顔の多い結奈ちゃん可愛いよ♡
だからいつかアタシがその希望を切り落としてあげるからね♡笑顔も可愛いけど結奈ちゃんにはそんなの似合わないよ♡」
少女は怒ったと思えば、またもや不気味に笑いだした。
「…結奈ちゃん…アタシには結奈ちゃんしかいないの…結奈ちゃんしかいないようにしてるの…ねぇ結奈ちゃん、アタシ結奈ちゃんをこんなにも愛してるんだよ…?結奈ちゃんは愛が欲しいんだよね?アタシがあげる。沢山あげる。結奈ちゃんが沢山の愛情に溺れて苦しんで吐くまであげる。吐いてもあげる…
……アタシ以外に結奈ちゃんの全てを受け入れてくれる人なんていないよ?」
少女は一人、ここにはいない愛する者に向けて愛を呟き続ける。
それはもう、おぞましい程の愛情を。
「…それにしても、あのピンク女、どう押さえようかな…アイツ押さえないと結奈ちゃん捕まえても絶対追ってくる。
…まぁ、正直今は結奈ちゃんをあの兄貴から離すのが最優先だから、ピンク女は後でいい。
あの結奈ちゃんの自称婚約者は敵にすらならないから無視。
それに今いくら計画を立てたとて、実行出来るのは数年後…色々準備があるし…」
感情の起伏が不安定なのか、今度は冷静さを取り戻した少女。
座っていた椅子から立ち上がり、この木造の家とは似合わない頑丈な扉の前に移動した。
ひんやりとした扉に触れ、次はまた恍惚とした表情へと切り替わった。
「結奈ちゃん、このお部屋気に入ってくれるかなぁ~♡」
扉の向こうには【お部屋】と呼ぶには可愛らしくないものばかりが散らばっていた。




