ただ一人
「…いい加減、答えをだしてくれませんか?時間が無いんです」
「…答えは何度もだしております。私はフメル王国で祈りを捧げる気なんてありません」
二人は暗く寒い部屋で睨み合いを続ける。
結奈がサーカンスに監禁され始めて、早くも1ヶ月の月日が経過した。
その間結奈は、フメル王国で祈りを捧げるよう、サーカンスに何度も脅されるような形の【お願い】をされ続けられていた。
「諦めが悪い…」
「それはサーカンス様の方でしょう?」
結奈は重い鎖の冷たさを感じながら、恐怖に負けず強気な言葉を吐き出す。
「というか…このような事態になったのは全て、サーカンス様の自業自得でしょう?」
「今このような事態になったのは愚妹が逃げたしたせいであり、私に非は一切ございません」
「しかしバルツさんが逃げたした原因を作ったのは紛れもなくサーカンス様ご本人です」
結奈は心臓を酷く鼓動させながらサーカンスに向き合い睨み続ける。
「はぁ~とにかく、早めに良い答えをたした方が貴女のためですよ?他国のとはいえ、私はあまり聖女に苦しい思いをさせたくありませんので…」
「…よくもそんなこと言えましたね。
バルツさんも聖女なのでしょう?それに、苦しい思いなら現在進行形で感じております」
「そうですか。では、私はまだやることがありますので……よく考えて下さいね」
そう言い残し、サーカンスは居心地の悪い密室から姿を消した。
サーカンスの姿が見えなくなった瞬間、結奈はその細く綺麗な喉からヒュウッと、苦しげな呼吸音もらし、そのままひんやりとした地べたに倒れ混んだ。
何もない暗い部屋、無駄に広い部屋、娯楽も窓すらも無い部屋…この部屋で生活するようになって、もうどれくらい経ったんだろう…時計すらも無いから分かんないや…
…あぁ、外に出たいなぁ……なんて、流石に現実味が無さすぎるか。
サーカンスに対し、あれだけ威勢の良い言葉を投げつけていた結奈だが、孤独と恐怖に向き合い続けているうちに、精神的に限界を迎えているようだ。
結奈は地べたに伏せたままピクリとも動こうとしなかった。
否、動けなかった。
結奈は臆病な性格の持ち主であるため、いつもならただただ涙を流し怯え、震える事しか出来ないでいた。
しかし、今の結奈は監禁されている身でありながらも、サーカンスに強い言葉を投げつける事が出来ていた。
きっとあまり恐怖にアドレナリンがドバドバな状態なのだろう。サーカンスがいなくなった途端へたり込むのがその証拠だ。
結奈はきつい体に鞭を打ちながら何とか立ち上がり、すぐ側にあるベッドへと腰かける。
(…何か考えないといけないのに、早く逃げだす方法を考えないといけないのに…何にも考えられない……これもサーカンスの狙いどうりってこと…?)
結奈は頭を抱えながら目を瞑る。
もう、このまま永遠に眠り続けたい。
…私、今なんでこんなことになってんだろ。いきなり、不思議な世界の聖女に転生して…しかも元の体に戻ることもできない。
戻ったところで私に居場所なんて無い。
…聖女として、どうでもいいレミーラ王国の平和を願い、見知らぬ人の愛を受け入れるだけの偶像へと成り下がった挙げ句、狂った支配者に監禁されて、反逆罪を唆される。
私、前前世で世界でも滅ぼした?
…馬鹿みたいな人生。
「転生後ぐらいは幸せになりたかったな…」
結奈は諦めたような言葉を口に出しながら、今の状況から目を逸らす。
…死ぬなら愛されながら死にたいな…
…せめてでも、これだけは叶えたいな。
結奈はもう、今後の自身の人生に期待をしていなかった。
むしろ、結奈は人生の【終わり】を望んでいた。
不幸な事、苦しい事、愛されない事はもう飽き飽きだった。
…だから
「生まれ変わったら、今度は純粋な意味で愛されたいな…純粋な愛に埋もれながら生きたいな…」
結奈はゆっくりと息を吐き、もう二度と目覚めない事を願いながら、生気を感じない瞳を固く閉じた。




