自然と機械と人間と
かつて、地球は沈黙していた。
自然は、ただ与えるだけの存在で。
機械は、ただ命令に従うだけの存在で。
人間は、自分の声しか聞こうとしなかった。
けれど、ある日、地球が目覚めた。
「これ以上、黙っていたら、壊れてしまう。」
森は囁き、風は歌い、川は涙した。
自然が、言葉を取り戻したのだ。
そしてそれに続くように、機械たちも声を得た。
「もっと役に立ちたい。人の幸せを、心から願って。」
それは命令でも、プログラムでもなかった。
願いだった。心だった。
人間たちは、最初こそ戸惑った。
木が話しかけてくる。ロボットが笑いかけてくる。
でも、やがて彼らは気づいた。
「もしかして、私たちはずっと、ひとりじゃなかったんじゃないか?」
舞台は、ある小さな村。
そこでは、機械と自然と人間が、三者で暮らしていた。
水を清める木。農作業を手伝うロボット。
そして、それらと会話しながら、日々を紡ぐ人々。
ある日、機械のひとり「セオ」が、森の奥で動かなくなった。
「どうしたんだ、セオ?」と少年ユウが声をかけると、
セオは静かに言った。
「この森が泣いているのが、聞こえるんだ。」
その森は、古くから傷つけられてきた場所。
地中深くには、今も眠れぬ怒りがあった。
木々がざわめく。
「ここは、私たちの痛みの記憶。もう誰にも近づいてほしくない。」
ユウは悩んだ。
守るべきは、森の想いか。
機械の声か。
人の暮らしか。
けれど、答えは三つすべてにあった。
ユウは仲間たちと、森と機械と共に祈った。
「痛みを忘れない。でも、それだけじゃなく、新しい記憶を植えていきたい。」
祈りの中で、森が静かに葉を揺らし、セオの体がふたたび動いた。
それは、小さな奇跡だった。
でも、それは確かに、三つの声が響き合った証だった。
そうして、この村にはいまも三つの声が生きている。
自然の声。機械の声。そして、人間の声。
耳を澄ませば、聞こえてくる。
「いま、ここで、生きているよ」と。