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突然新連載がはじまったのは私がむしゃくしゃしたからです(´;ω;`)ウゥゥ

(ライブは全公演落選し、ゲーム機にも当選しなかったんです)

 随分と長く眠っていた気がする。鈍く痛む頭を押さえ、身体を起こした。


「……ここは?」


 室内を見渡して、首をかしげる。


 部屋にある家具や調度品に見覚えがない。壁紙や絨毯も知らないものだ。


 疑問を抱きつつ、移動する。寝台に腰かけ、サイドテーブルにある水差しを手に取った。カップに注いで、口に運ぶ。


 水はちょうどいい冷たさだ。一杯分を一気に飲み干す。どうやら、相当喉が渇いていたらしい。


「本当、ここはどこなのかしら?」


 寝台はふかふかだし、部屋は広い。家具の類もきらびやかなもの。


 一目見てこの部屋の持ち主に財力があることがわかる。


「だれか呼んだほうがいいのかしら?」


 迷った末に立ち上がって、扉のほうに近づくことにした。


 数歩進んだところで、部屋の扉がノックされる。


「奥さま、失礼いたします――」


 怯えを含んだ声だった。しかし、それよりも気になることがある。


(奥さま? 一体だれが?)


 室内を見渡すものの、この部屋には自分しかいない。


 部屋を間違えているのだろうか? それとも――。


 考えていると、扉が開く。顔をのぞかせた女性は、こちらを見て目を真ん丸にした。


「お、お目覚めでございましたか! お呼びにならないので、まだ眠っていらっしゃるものだと……!」


 女性は深々と頭を下げる。


 完全に怯えている。なんだか可哀そうになって、「気にしないで」という意味を込めて彼女の肩に手を置く。


 だが、その仕草に彼女の身体が大きく震えた。


「く、クビはおやめくださいませ! どうか、どうか今回ばかりはお許しを――」


 ついにはガタガタと身体を震わせ、涙を浮かべ始めた。


 どうして彼女がここまで怯えるのか。意味がわからなくて、頬に手を当てる。


「クビ――にするつもりはないわ。それに、私にそんな権限はないでしょう」

「……は?」

「教えてちょうだい。ここはどなたのお屋敷? 私はどうしてここにいるのかしら?」


 彼女の瞳をじっと見つめて問う。


「あなたは奥さまと言っていたけど、ここは本来奥さまが使うお部屋なの? ということは、私は不法侵入かしら?」


 眠る前の記憶は思い出せないが、もしも不法侵入ならすぐに出ていかねばならない。


 考え込んでいると、目の前の女性は口元に手を当てていた。表情は驚愕に染まっている。


「どうなさったのですか……?」

「どうなさった、とは? 私は――」


 そこまで口にして、疑問を抱いた。


 ――自分の名前は、なんだっただろうか?


(あれ? 私の名前って? 生い立ちは? 家族は?)


 近くの本棚に視線を移す。文字は問題なく読めるし、言葉だって理解している。話すこともできる。


 一般常識だって、物の名前だってわかる。ただ、『自分にまつわる記憶』がないのだ。


 黙り込んでしまったためか、女性は混乱しているようだ。


 彼女の身なりを観察する。たぶん、侍女かメイドだ。


「悪いのだけど、いろいろと教えてほしいことがあるわ」

「な、なんなりと!」

「――私は、一体だれなのかしら?」


 のんびりと問いかけると、彼女が目を見開いた。小さな身体がぶるりと傾いて、倒れる寸前で踏みとどまる。


「ごめんなさいね。どうにもうまく思い出せなくて」


 困ったように笑うと、彼女はぶんぶんと首を横に振った。


「え、えっと。その。あなたさまは名門貴族ルビッチ伯爵家の当主夫人でございます」

「名前は?」

「……シャルロット・グラシア・ルビッチさまでございます」


 教えてもらっても、やはりピンとこない。


(どうやら、私がこの家の夫人のようね。記憶はないけど)


 ソファーに腰かけて、記憶を掘り起こしていく。


 しばらく考えて――シャルロットは大きくため息をついた。


「――私、どうやら記憶喪失みたい。まったく自分のことが思い出せないの」


 膝の上に手を置いて、小首をかしげて話す。目の前の彼女は、なにも反応しなかった。

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