冤罪をかけられ婚約破棄されました。でも神様は全部見ていたようです
祠をぶっ壊してみました
「レベッカ! 君がこの祠を壊したのは知っている! そんな悪女とは結婚なんてできない! 婚約を破棄させてもらう!」
昔々、何百年も前からこの国を守護していると言われている小さな祠。
その祠が、私の目の前で瓦礫の山と化している。
「……違います! 私じゃありません! 参拝に来たら突然崩れたんです!」
私は涙目になって無実を訴える。
「そんなわけないだろう! 何百年と変わらずここにあり続けている祠が、今日、このタイミングで壊れるなんておかしい! 君がやったとしか考えられない!」
婚約者のレーシェンが言い放った。
なんて冷たい目……。
騒ぎを聞きつけてやってきた人たちも、みんな責めるような眼差しでこちらを見てくる。
「神聖な祠を壊すなんて……」
「悪女だ……!」
「結婚反対!」
「追放だ!」
どんどんと話が大きくなっていく。
「……本当なんです! この花を見てくだい! 毎日お供えに来ているんです! 今日だって、この花を……!」
手に持っている花束を証拠に必死に弁解をしたが、何を言っても言い訳にしか受け取ってもらえない。
「追放なんて生ぬるい! 祠を壊すなんて、この国が祟られたらどうする!? レーシェン様! この悪女を火炙りの刑に!」
一人がそう声を上げた。それは波紋のように広がっていく。
────……私じゃないのに!
そんな声は、誰にも届かない。
婚約破棄をされ、冤罪をかけられ……、最後は火炙り。
こんな人生なら……ない方がよかった……。
涙が崩れた祠の破片に落ちる。
するとその破片が光りだし、崩壊した祠全体から眩いほどの輝きが発せられた。
その眩しさに、目をつぶらずにはいられなかった。
……恐る恐る目を開ける。
そこには綺麗な顔立ちをしている男性がいた。銀髪の長い髪。白い服にきらきらと輝く透明な羽衣を纏っている。
人々は「誰だ?」とざわめく。
顔の前に人差し指を立てた男性がふっと息を吐くと、ガヤで溢れかえっていた声がピタリと止んだ。
「毎日花を添えてくれていたのは君だったのか」
にこりと微笑んできた。
「名は?」
「……レ、レベッカです……」
「そうか、レベッカ。いつもありがとう」
また優しく笑うと、そのままふわりと私を抱きかかえる。
「……この娘、俺が貰い受ける」
男性は勝ち誇ったかのように、うっすらとした笑みを浮かべて言った。
私は抱きかかえられたままどこか知らない場所へと連れてこられていた。
知らない場所だけど、綺麗で幻想的で、恐怖なんて全くなかった。
それに……、先ほどまで浴びせられていた視線と罵詈雑言の方が何倍と怖い。
「あなたは何なのですか……?」
「俺は、あの祠の神。名はリアム」
……神様!? 驚きを隠せない。
でも嬉しかった。
日々の私の行いを見ていてくれた。助けてくれた、守ってくれた。
「神様……ありがとうございます」
「神様って呼び方やめて。リアムでいいから」
とても穏やかな声色と笑顔。
少しずつ心が晴れていく。
「……あの祠がなくなって、あの国は大丈夫なんでしょうか?」
「レベッカは優しいね」
怪訝そうに尋ねた私に、また優しく微笑んでくれた。
「あの国はもうおしまいだよ。神がいなくなったからね。でもレベッカのせいじゃない。あの国には他に参拝する人間がいなかったんだ。神を信仰しない国は、遅かれ早かれ滅びる運命なんだよ」
リアムは微笑んだまま言った。
その冷たくもある言い方に少し切なくもなったが、きっとリアムの言う通りなんだろう。
私も……もうあの国のことは思い出したくもない。
「俺はもう、これからレベッカただ一人の神だ」
「……私だけの?」
「そう。君さえいてくれれば他の信者なんていらない。ずっと君のそばで、君を守護するよ」
まっすぐで透き通った瞳。
それは神様ではなく、一人の男性としての輝き。
「……ありがとうございます、嬉しいです」
「俺こそ、ありがとう。毎日花を添えてくれて。レベッカだけが、俺を見てくれていたんだ」
自然と涙が流れていた。
それをリアムが拭ってくれる。
暖かい手……。
目が合って……、私たちはそのままそっとキスをした。
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