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32歳 けいすけ

ゆうりと結婚して数年が経ち、僕は父親としての役割にも慣れ始めていた。

この日は、息子を連れて久しぶりにあの坂道を登っていた。

青々とした木々が風に揺れ、日差しがやわらかく降り注ぐ。

手をつなぐ息子が、無邪気に坂道を駆け上がろうとするのを微笑みながら見守っていた。


「パパ、見て!僕、もっと早く走れるよ!」


「気をつけろ、転ぶなよ。」


息子の手をしっかり握り直しながら、ふと懐かしい記憶が蘇る。

この坂道で、はるを待ったあの日のことを思い出していた。

今はもう、はるがどこにいるのか知らないが、きっと彼女も自分の夢を追い、どこかで幸せにしているだろう。

そんなことを思いながら、長い坂道を一歩一歩進んでいく。


坂の頂上から、誰かが降りてくる気配がした。


人の気配に顔を上げると、目に入ったのは懐かしい顔だった。

なつが、子供を連れてこちらに向かって降りてきていたのだ。

彼女もまた、子供と手をつなぎながら、僕らの方へと歩いていた。


二人の間に一瞬、時間が止まったかのような静けさが訪れた。

お互いに気づいていたが、言葉が出なかった。

坂道のすれ違い、ただそれだけの瞬間だった。


息子を見つめながら静かに歩を進め続けた。

声をかけることもなく、そのままなつとすれ違った。

お互いに何かを語ることもなかったが、僕の胸には不思議な安堵感が広がっていた。


※そして、なつもまた、けいすけとその子供を見送りながら、小さく微笑んでいた。

幸せそうな姿を見ることができたことで、心に温かいものがこみ上げてきたのだ。

彼女は、けいすけが自分の人生を見つけ、今の家庭で幸せを築いていることを感じ取った。


すれ違う瞬間、彼は

はるのことを少し思い出したかもしれない。

しかし、今はそれぞれが別の道を歩んでいる。

それでよかったのだと、なつは静かに思った。


ーーーー

僕は息子の手を引いて坂道を登り切り、振り返ることなくそのまま前へと進んでいった。

過去は過去として心の中にしまい、今の生活を大切にしようと改めて感じていた。

だけど心は晴れたようにスッキリと気持ちが良かった。

僕は、はるの幸せを心の底から願っていた。


※そして、なつもまた子供と一緒に坂道を降りながら、穏やかな表情を浮かべていた。




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