第67話 服を取りに行こう
読みに来て頂きありがとうございます。
>女性研究員の服装のままのニコは自分の服をどうやって引取りに向かうか考える。
さて、どうやって一目を避けて服屋に向かおうか。
走っていけば十分程でいける距離だ。
スキル『索敵』を使ってみたけれど夕方はどこも人が多いので隠れながらは厳しいだろう。
他に相談できる人はいないかな?
……そうだ『並列思考』。
『たまにスキルを使ってきたと思えば……なんだかねぇ』
「しょうがないよ、クールな僕」
『そもそも見られても困らないだろ?』
「いや、恥ずかしいからね」
『女性の服を着るのが恥ずかしいのか?』
「恥ずかしい……うん、以前、着させられたのが初めてだから……着るのはもう慣れたけれど人前でスカートは……ね?」
『ね? じゃないよ。慣れているなら大丈夫だよ』
「いやいや! 知っている人にあったら間違いなく変わったお仕事ふえるよ!?」
『どんな仕事なんだか……大丈夫だよ。楽しむ人は出るだろうけどね』
「それが仕事? になりかねないよね?今までの経験から!」
『いいと思うよ!? 可愛がられる分には』
「そうだけどさ……」
『そうか! 今が中途半端だからいけなんいだよ!』
「ん!?」
『しっかり化粧をすれば分からないって!』
「そういうもの?」
『だって、スッピンでしょ? 今』
「そうか……断ったのが失敗だったのかな……」
『化粧していたら「ニコル」でいけてたかも知れないよね』
「そうだけど……今更……」
『レインさんかサニーさんに相談してみたら?』
「しょうが……ないのか」
『しょうがないんだよ。最適解だよ。これが』
「……分かった」
『それじゃあね。呑気な僕』
何かもう一人の僕にそそのかされている気もするけどしょうがない!
レインさんの所にこっそり戻る。
「レインさん、折り入ってお願いが……」
でも、自分から言い出すのは勇気がいるよね!
「どうしたのニコ? 服を取り戻さないの? それともその格好のままもう少し働いていく?」
「働きたいのはやまやまですけどね。服は取り戻したいので協力してほしいのですが」
「?」
「僕に女の子に見えるよう、お化粧してもらえませんか?」
「……すぐやろう! 室長!トイレ行ってきます!!」
乗ってくれるのは嬉しいけどね……あ、気が付いたサニーさんも反応した。
「私もトイレ! 室長ちょっと離れますね!」
室長は書類の山の間から手を振っていた。思った以上に自由だね。
行った先は小屋……棟の裏にあるベンチだった。
「ここは私達の憩いのスペースなんだ」
少しだけど木々があるおかげで外からは見えないし静かだ。
「さて、どうしたの?化粧したいなんて」
「色々考えた末、なんですけど……」
脳内会議の事を説明出来るレベルで説明した。
「そうか。知人に会っても分からないレベルに変えてしまうか……名案かも?」
レインさんは納得してくれたみたい。
「レインが理解したのなら私もオッケーだよ!」
サニーはアバウトに納得してくれた。
「「でも、そのままが一番なのにねー」」
うん、ハモって言われてもね。
「さて、忙しいからチャッチャと始めるよー」
レインさんがメイク道具をベンチに並べた。
結構持っているんですね。
「だって、泊まりも多いし」
「心読まないでください……帰れないんですね。お疲れ様です」
そして二人がかりのメイクが始まった。
それから十数分。
「「完成!」」
やっと終わったみたい……慣れないからかとても長くかかったような?
「これでも早い方だよ?」
……そうですか。
「鏡は無いですか?」
「「はい!」
ん?
「「どう?」」
ん!?
「別人……です」
この女性は誰? ってレベルで違って見えた。
「「これぞ化粧の力!」」
「すごいです!」
髪はカツラのままだからそのままだけれど、もう、僕なのか分からないレベルだ。自分自身なのにちょっと可愛いと思ったのは内緒だぞ?
「本当に僕だと分からないです!」
「でしょ。因みに私達はクマを隠す為に技術が向上した」
「レインさん、寝ましょう!」
「私は吹き出物を隠すために向上した」
「サニーさんは食べ過ぎをやめましょう!」
うん、もう僕だと分からないだろうから堂々と服屋さんに向かおう。
「レインさん、サニーさん、ありがとうございました」
「私達も戻らないといけないからまたね!」
「直ぐに手伝いにくるんだよ!」
レインさんとサニーさんは手を振りながら戻って行った。
「楽しかったねー」「ねー! またやろうね!」なんて声が聞こえたけれど……今日のところは感謝!
研究所の門を出る。
隠そうとせず、背筋を伸ばして堂々と歩いて行こう!
夕方は人通りが多い。
知っている人は……いた。
「まるいひつじ亭」で見かける人だ。
こちらを……見た……けれどそのまま歩いて行った。よかった。
また、食堂の常連さんが集まって何か話している。
全員がチラッと見てきたけど声をかけてこないで話に戻っていた。ばれていないみたい。
家のご近所の奥様方だ。揃ってお買い物かな?
やはりチラッと見られる。なぜ?
けれど声をかける事もなく、仲間で会話をしている。本当にバレないね。
その後も何人か知っている人を見かけれたけれど声をかけられる事は無く、コーレルさんのお見せに着いた。長く感じた!
そして扉を開けた途端……、
「ニコ、来てくれたんだね!」
お店にいたコーレルさんが満面の笑みを浮かべて肩を掴んできた。
……どうして分かった!?
いかがだったでしょうか?少しでも気になって頂けた方はまた来て頂けるととてもうれしいです。