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第65話 魔法を実演しよう

読みに来て頂きありがとうございます。


>王城で魔法を実演する事になった。

 お城の建物の側に楕円形のコロシアムが建っていた。これが演習場らしい。

 綺麗に整備されていて客席? もあった。


「ここ普段は近衛騎士の訓練場なのだけれど試合とかはここで開催されるんだよ」


 レインが教えてくれた。では、あの立派な席は、なんて見ていると、


「そう、あそこが貴賓席、国王様のお席だよ。ちょっと座ってみたいよね!」

「僕は遠慮します!」


 命大事に!


「では、ニコ、改めて魔法の説明と実践をしてもらおうか」


 部門長が声をかけてきた。


「はい。僕もどれ程の魔法か確認しきれていないので皆さんは客席で御覧ください」


 場内は機密保持の為に訓練していた騎士たちには出ていってもらった。申し訳ない。

 今は会議室から着いてきた関係者だけだ。そういえば確認していなかったけれど恐らくこの国の中枢の人達だ。だから安全な場所にいてほしい。そしてレインには説明の間に必要な物の準備をお願いした。


 演習場と客席はそれ程離れていないので普通の大きさで声は届く。


「魔法名は「グラビティ」と言います」


 普通の単語と意識したから魔法として発動しなかった。よかった!


「指定した個体または範囲を上から押し潰すような力を加える、という内容です」

「上から押し潰すような力?」


 皆さん、頭にクエスチョンが浮いている顔だ。もしかすると、


「重力……ってご存知ですか?」


 と、尋ねてみる。


「重力? なんの力だ?」


 部門長でも知らない知識……。この世界ではまだ重力の概念が無いのかもしれない。落としたものは下に落ちる事は分かっていてもその事象については研究されていない……のかもしれない。


「今は地面が下に引っ張る力、とだけ思って下さい」


 万有引力はいつ習ったかな? ドリルで出てきていないから高校かもしれない。

 皆さん、納得いかない感じだけど、百聞は一見にしかず、だね。


「レインさん、大丈夫ですか?」


 標的として大きな樽を五個、レインにお願いして用意してもらった。

 運んでくれた騎士たちに「ありがとうございました」とお辞儀をする。


「女の子に重いものなんて運ばせられないからな!」


 なんて紳士、いや騎士道精神を見せて去って行った。でも、僕は男ですからね!

 今は黙っておくけれど!


「では魔法をつかってみます『グラビティ』」


 バコッ!


 一個の樽が押し潰された。


 皆さん、唖然としているのが分かる。


「次は四個全部いきます『グラビティ』」


 バコッ!!!


 一個だけ水か何か入っていたらしく弾ける事もなく、地面に吸収されていった。


「いかがでしょうか?」


 客席に近づき、問いかける。


「……これは、実践でつかえるのかね?」


 部門長が質問してきた。


「個人によって威力も範囲も違うと思われます」


 魔力によって個人差はある。


「う~ん。火や水や風では無い力……急に使われたら脅威だな」


 名前は知らないけれど厳つい男性が唸った。


「う~ん、そうですね~でも、これは力のかけ方次第では捕縛に使えそうですね」


 暑いのに厚手のローブをしっかり着込んで顔が見えにくい女性も唸りながら答えた。


「レインはどう思う?」


 部門長がレインさんに尋ねる」


「そうですね。先ず、私が使おうとすると五分の時間がかかるくらいの詠唱時間がネックです」

「五分? ニコは?」

「あの子は詠唱が不要なようなので……」

「そうだな……どのような方法なのか知りたいところだが……私も今の魔法を使ってみたい。いいか?」

「はい!」


 部門長が演習場に降りてきた。レインさんはまた樽の準備をお願いしに走っていった。


 部門長は巻物を眺めながら僕に聞いてきた。


「ニコ、私がこれから実演するが君が規格外の事をしている事を理解するといい」


 なんか背筋が冷える!


「部門長、準備出来ました!」


 騎士たちが僕に向かって手を振りながら去って行った。

 お礼の為、僕も手を振り返す。これを使うの僕じゃないけどね!


「では、始める」


 部門長が巻物を読み始める。とても早いけれど抑揚を付けているので詩を詠んでいるように感じる。


 レインさんは五分かかると言っていたけれど部門長はその半分程の時間で詠み終わり、


 『グラビティ』


 並べてあった五個の樽が僕の時と同様に一瞬で潰れて弾け……あれ? 僕の身体も重くなってきた!? まさか!


 『魔法解除!』


 小声で呟いてみた。


 うん、元に戻った!


 けど…殺されかけた!?   


「部門長!」


 僕を見ていた部門長を睨んでみる。


「うむ、思った通り、影響を受けないか。すまないな」

「僕で試すなんて、先に言って下さいよ!」

「……なんだ、試した事には怒らないのか」

「ちょっとは怒りますよ。でも人を押さえつけられるか僕も興味がありましたので。結果は面白くないでしょうけど」

「……いや、十分に面白い結果をみれた。この魔法の発明者は?」

「えーと、ミヨンさん、です」

「……やはりミヨンか」


 ミヨンさんってどんな人なんだろう。すごい魔法使いなんだろうか。


「レインさん、ミヨンさんってどのような方なんですか?」

「ニコは知らないか。宮廷魔導師の一人で勇者様のパーティーメンバーだよ」


 この国のトップ魔法使い! しかも勇者パーティーメンバー……『ニコ』なら一緒にいた事があるから知っている筈だよね。


「それなら納得の魔法ですね。そうか、最上級の査定出来る人でしたか」


 うん、納得。


「でも、新しい魔法の報告は稀なんだよね。殆ど外にいるから」


「あいつはサボっているだけだ」


 部門長が苦々しい顔をしている。何か因縁があるのだろうか。


「あ、部門長も宮廷魔導師の一人だからね」


 レインさんがこっそり教えてくれた。

 やはりそうだよね、と一人納得。


「では、査定だが……「上級」に認定。しかし報酬は中級の大金貨一枚だ」

「理由はどうしましょうか?」


 レインさんが確認する。その場で仕様書に書き込むようだ。


「内容は最上級に近いが詠唱が長過ぎて使えない。以上だ。ミヨンにそう伝えろ。あと「悔しかったら研究所来い」とも、な」


 物凄く暗い表情で思わず、


「「分っかりました!」」


 二人で返事をしてしまった。



 そして、見学されていた人達からはまた今度話しを聞きたいと声をかけられた……だから来たくなかったんだよ……でも、笑顔で「ぜひ!」とか笑顔で返してしまう性格は直さないとね……とほほ。仕事につなげよう。


 壊れた樽は騎士たちが「俺たちが片すから帰んな!」とか言ってくれたのでお礼を言って去る事にした。背中越しに騎士たちの「可愛らしすぎる」「騎士団に入ってくれないかなぁ」「尊い」なんて言葉が聞こえたけれど、次に会う時は男の格好ですからね! ってもう来ないつもりですけどね!



 もう、夕方。研究所に戻ったら帰る時間かな。

いかがだったでしょうか?少しでも気になって頂けた方はまた来て頂けるととてもうれしいです。

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