第32話 薬草を渡そう
読みに来て頂きありがとうございます。
>森と山で薬草採取が完了し、街に戻ってきた。
>前31話につきまして後半修正しております。
街の門をくぐり、『まるいひつじ亭』の前にたどり着く。
……うん。汚れてはいるけれど臭くないよね。
ドーン!!
「うわっ!」
臭いを確認していたら正面から何か突進してきた!?
「ニコ、おかえり! 久しぶりの外でのお仕事、お疲れさま!」
ケイトが抱きついてきていた。相変わらず力がすごい……無事の戻りを喜んでくれているのだろうけど……鍛えているのかな? 食堂の給仕って鍛えれるのかな!?
「ただいま。ケイト」
「デムスさん、来ているよ」
「じゃ、薬草を渡さなきゃ」
「うん。ご飯も用意してあげるからね!」
「ありがとう!」
「ケイト、僕、臭くなかった?」
「う~ん、薬草の匂いはするけれど、ニコの臭いしかしないよ?」
それなら……いいか?
食堂に入ると相変わらずの大賑わい。あ、デムスさんいた。
「やあ、ニコ。お疲れさま」
「デムスさん、ただいま戻りました。薬草、採ってきましたので確認をお願いします」
「さすがに早いね……本当なら数日かかると思うのだけど。一日で採ってくるんだからすごいよ。そいて新鮮なのがいい!」
「山で少し時間がかかりましたが問題無かったと思います!」
「……そうか。さすがニコだね」
「魔獣はでなかったかい?」
「森はいなかったですが山でフェンリルに会ったくらいです。とても良い魔獣ですね!」
「……西の山脈にいたのは厄災「フェンリル」でしたか……」
知られているものだと思ってた。
「はい。この狼仙葉はヴィト……フェンリルの棲み家で分けてもらいました」
狼仙葉の入ったケースごと渡した。流石にここで開けようとはしなかった。
「それと山で採りました薬草三種類です」
小袋で分けていたのでそのまま渡す。
「ありがとう。今回は特に「天使の羽」が欲しかったんだ」
「森に入って最初に採取しました」
「これだけいい状態ではなかなか採れないよ」
不思議そうに見ている。
「そうなんですか? 根ごと採らないと駄目なんですよね?」
「そうなのかい? 「天使の羽」は葉っぱの白い部分だけ使うから葉だけを採取が一般的……あぁ、だから違うのか」
「そうなんですか?」
「通常は葉だけを採取して何も効果の無い茎や根はそのまま残すか捨てるんだよ。それで戻った頃にはその葉は白から茶色や黒色に変色している……それでも効果があるので一般的なのだけれど、ニコのは真っ白のままなんだ」
普通は変色させてしまうんですね。この白いふわふわの葉っぱ。
「あと、通常三日から十日くらいかけてようやく見つかるような希少な薬草なんだけれど、一日も経っていないのは凄い事なんだよ」
「運がいいんですよ……多分」
スキルのおかげ、とは言えない。
「運も実力さ。ありがとう。大事に使わせてもらうよ。代金はマスターから受け取っておくれ」
とても嬉しそうだ。仕事を請けてよかった。
「ありがとうございます!」
「……それと、また別の場所での薬草採取をお願いしたいと思っているのだが、いいかな?」
「はい! 僕でよけば喜んで!」
殊更、嬉しそうだ。
依頼についてのやり取りが終わった後、料理が来た。今日は大盛りなのが嬉しい。
その後、デムスさん含め他の人に今日の事を聞かれたので話しながらの夕飯となった。
「明日は誰かの依頼を請けるのかい?」
デムスさんから尋ねられる。
「そうですね。休んでいた分、頑張りたいと思っているので明日はアーカムさんの依頼を請けようと思っています」
アーカムさんは仕事の都合で夜はあまり来られない。今も不在だ。でも、
「それは喜ぶよ!」
デムスさんが自分の事のようにうれしそうな顔をしている。何か知っているのかな?
「アーカムさんが何故、魔鉱石の採取を依頼されているかご存知ですよね?」
笑顔から少し考えるような顔付きになった。
「あぁ、知っているが……魔鉱石を採ってきて渡しに行けば分かるだろう」
何か深い事情があるようだけれど、隠している訳でもない気がする。
過去の『ニコ』の資料にもアーカムへはお屋敷に魔鉱石を届けるだけで何に使われているかまでは知らなかったようだ。
「明日は早く発ちたいと思っているのでこちらには寄らないのでアーカムさんには依頼をお請けした事だけ伝えてくださいね」
「わかった。伝えておくよ」
マスターから食事代はデニムさんが払ってくれるからいいと言われ、報酬を受け取って帰った。デムスさんに改めてお礼を言って帰った。
家に戻りお金の入った袋を開けると……ものすごい金額だった。
もっと採ってくればよかったかな!?
いかがだったでしょうか?少しでも気になって頂けた方はまた来て頂けるととてもうれしいです。