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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

寒さに耐える方法を思いついた!

作者: 永住ゆう

「ああ、寒い、寒いよう……」


 俺は部屋の中、ふとんにくるまり凍えていた。季節は12月半ばを過ぎようかという頃で、現在の時刻は深夜0時を回っている。超本格的に冷え込んでいるのだ。


「最悪だ……俺はもうこのまま化石になるしかないのかもしれない」


 凍って化石となれば、近い将来誰かが冷凍保存された俺を復活させてくれるかもしれない。でもその前に学校と連絡がつかないとかで見つけられるか。それにそもそも春が来たら溶けちゃうじゃないか。これじゃ化石にはなれないぞ、ああ、なんか俺めちゃくちゃアホなこと考えてるかも……でもしょうがないだろ、思考が回らないんだから……


 俺は都内に住む独り暮らしの学生だ。

 そこそこいい大学に奨学金を借りて入れたのは良かったのだが、いかんせん俺の実家はかなり貧乏で、お小遣いや仕送りなんかは殆どない。だからこそ節約生活を余儀なくされてるわけなんだが、流石に冬に暖房器具の一つないというのはやりすぎだったか……。


 でもこれもしょうがない、俺はなんとしても生活費をケチって学校に通い続けないといけない。ちょっとだけバイトもしているが、それは家賃で殆ど消し飛び、最低限の健康な食事を揃えようものなら、もうこれ以上他のことに資金を回す余裕なんてないのだ。だから俺はこっちに引っ越してきてから暖房どころか服の一つすら買ってないし、今だって半袖のシャツを十枚重ね着することでなんとか耐えてる状況だ。くそ、こんなことなら実家の部屋から長袖でも持ってきとけばよかったぜ!


「あばばば、あぴびぶぶぶ、ぼぼぼ」


 やばい、唇が震えすぎてもう大変なことになってる。寒い寒すぎる、もうホントに俺はこのまま死ぬしかないんじゃないか。でもそれは絶対に避けたい。俺はちゃんと大学に通い続けて卒業しなければならない。そして、ちょっとでもいいところに就職して散財しまくりの遊びまくりの日々を送りたいんだ! 今の俺からすれば夢のような話だけど、だからこそ目指しがいがあるってもんだろ。

 だから絶対死ねない、死んでたまるか。ああ、どうすればこの寒さをやわらげることがてきるんだろうか、その方法を知りたい。方法さえ分かれば、多少の苦労は厭わずやり通してやるのに……! なにか、ないか。いい方法、なにかないのかよ、なにか、なにか、なにか、なにか…………













「おもい、ついた」




 俺は熟考の末、覚醒した。一つの最適な方法が、脳裏に自然と浮かんできたのだ。ああ、そうだ、なんでこんな簡単なことに気づかなかったのだろう。これをすればいいだけのことだったじゃないか。これさえすれば、俺は寒さという地獄から解き放たれることができる。ふぅ、やってやろう、俺の本気、今……見せてやるよ……!



 ガチャリ。



 俺はひとまずそのままの足で玄関のドアを開け外へ出た。

 俺はアパート暮らしのため、当然横を見れば他の住人の部屋のドアが一定間隔で並んでいる。


 俺はひとまずお隣の住まいのドアに手を掛けた。



 ガチャ、ガチャ。



 ドアノブを引こうとするも、びくともしなかった。当然押してもダメ。流石は深夜帯、カギは掛けているようだ。


 俺は諦め一旦自分の住む部屋へと戻り、今度はベランダへと躍り出る。

 そして隣の住人のベランダとの間にある簡素なしきいを、ベランダの柵をうまく伝いながら通過し、隣の住人のベランダに無事着地することに成功する。


 ふぅ、ここからだな。


 一応部屋の内部を覗いてみたが、カーテンがかかっていてよく伺えない。電灯の光もないし、余計見にくいな。

 まぁだがどうであれ俺の作戦に代わりはない。一息つくと、住人の部屋の窓を開けようと試みた。


 がこ、がん。がこ、


 しかしやはりしっかりとカギが掛けられているようだった。仕方ないので、俺はベランダにあった固そうな植木鉢を手に取り、それを窓ガラスに向かって全力で叩きつけた。



 バリーーーン!



 うまいこと窓ガラスが割れ、片手が通るくらいの穴ができた。手を通して中から窓のカギを開ける。


 かしゃり。


 開いた。これで窓から部屋の中に入ることができる。


 俺は早速窓を開けると、悠々と中へと入っていった。



「な、何者だッ!」


 すると中からとある男の声が聞こえてきた。

 それはお隣さんのものだった。どうやら中にいたようで、電気をつけてこちらを警戒している。


「あ、お隣さん、こんばんわ」


「は? お、お前なんだ!?」


「ああ、覚えられてないんですね。少し悲しいです。僕はあなたのこと、よく知ってますよ。平日の朝は欠かさずスーツを着てどこか出掛けられてますよね。帰ってくるのは19時ごろですか。独り暮らしで他人の来場もほとんどなし。うーん見たところ年齢は20後半といったところで」


「け、警察に通報するぞ! なんのつもりかは知らんが、そうさせて貰うからな」


 男は携帯も取り出し操作し始めた。

 俺は男にしがみついた。


「グハッ、やめ、ろ」


 そのまま押し倒す。

 かなり抵抗されたが、眼球を指で思いっきりつくと、ずぶりと眼孔に指が突き刺さった。当然のように暴れまわられ、蹴られ殴られるが、こちらも死ぬのを覚悟で殺しにかかれば意外と耐えられるものだ。


 両目を潰し、弱ったところを蹴りまくってボキボキにしておしまいだった。うごかなくなったところで蹴るのをやめた。


「はぁ、はぁ、ああ、よかった。これで、隣んちの暖房を、使うことができる」


 俺もかなりダメージを貰ってしまったが、目的を達成できたことに歓喜する。


 ああ、ようやく解決することができた。これでこれ以上凍えなくて済むぞ。


「おいお前! 警察だ!」


 そう思った矢先、玄関のドアから2名の警察が飛び込んできた。

 あ? なに、時間結構経ってた? いや関係ない、俺の楽園を、お前らなんかに……


「渡して、たまるかあああああああ!」


 ドン! がこっ。


 俺は普通に取り押さえられた。

 手錠をはめられジ・エンドだ。










 半年後行われた裁判の結果、俺は無期懲役が確定した。

 人生の氷河期突入である。






END





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