新しい世界
「おはよ」
「おはよー」
学校につくと、たくさんの人間がいる。それらが全部同じ服を来て歩いている。
校門をくぐり、中にはいる。自分の教室に入ると、自分の席が見えてきた。席に座ると、少し考え事をしてしまう。
そもそもワタシはなんでこんなところにいるのだろうか。間違いは少し前、この世界で言うと、ほんの3ヶ月まえのことだった。
突然アテナがこう言い出したのだ。
「君は人間性というものがない。本当に元人間だったのかい?」
「そうですが、何か問題でも?」
「問題はある。だから君には人というものを思い出してもらおうと思う」
そういって制服と学生証を渡してきたのだ。
そこには私立船山高校とかいてあった。そして1ーAの文字が。さらには氏名のところに三島亭と書いてあったのだ。ちなみに性別は男になっていた。
「これは?」
「だから、君の学生証と制服さ」
「ワタシに人間の学校に通えと言うことですか?」
「そういうことだ」
アテナはワタシの直属の上司の一人だ。
「わかりました。そういうことでしたら」
といって受けてしまったのだが、今では後悔している。なぜこのような面倒なところに毎日来なくては行けないのだろうか。
「おはよっ」
まだそれだけなら良かった。更に悪いことに、この世界には魔法がないらしいのだ。これではどのように発展してきたのだろうか。
「おはよう」
この世界、つまるところ地球の管理者によれば、魔法の代わりに技術を発達させてきたらしい。
それでは魔物に勝てないじゃないか、と思ったが、なんと魔物は存在せず、それどころかここにいる種族は人間だけであるらしい。
独自に魔人などがいた痕跡を探して見たりもしたが、見当たらなかった。
「おはよおおおお」
一体どういうことだろうか・・・。
「おはようようようようYO」
さて、考え事も尽きたし、寝たフリでもするか。
そのとき、がっと肩をつかまれた。ワタシは思わずそちらをむく。もしや悪魔の襲撃か?
「なんだ、優香じゃないか」
優香は怒って、
「なんだ、じゃないよ。さっきからずっと話しかけてたじゃん。私のこと忘れたの?!」
「忘れてないぞ。三宅優香16歳。好きな食べ物はグラタンで、運動神経がよい、勉強の成績は中の上くらいで・・・」
「す、すとっっぷーーー」
またもや方を掴まれてしまった。
「どうしたんだ」
「そこくらいでいいから。私のこと忘れてないってことは伝わったから」
「そうか。それで、なんのようだ?」
「別に? 隣の席だから朝の挨拶くらいはしようかなと思っただけだよ」
「そうか。お前、俺のこと好きなのか?」
それを聞くと顔を赤らめて、
「ちちちがうし。何いってんの? 馬鹿じゃないの?」
「なんだ、違うのか」
人間の心はわからない。
他の世界では、朝話しかけるひとと言ったら好きな人くらいなのだが。それだけこの世界が平和だというのだろうか。
そうこうしているうちに教室の扉が開き、先生が入ってきた。
「全員席につけ〜」
緑子先生だ。通称みどりん。結構かわいい。
「亭くん?」
ごほんごほん。
■
キンコーンカンコーン。
授業終了のチャイムがなった。今日はこれで終わりだ。
ホームルーム後、優香が話しかけてくる。
「今日さ、放課後空いてる?」
「ごめん、今日はむりなんだ」
今日もここから世界を救わなくてはならない。
「そっか。ありがと」
そして俺は教室をあとにする。
■
天界に帰ってきた。
まずは、少し前に手をかけたあの世界の様子を見る。
ワタシが水晶をとりだすと、そこには世界が写っていた。
通称天眼水晶。
魔力を流し、世界を映し出す。
「いい調子だ」
そんな言葉が漏れてしまう。
召喚した勇者は早速仲間を見つけて、四天王のうち、一人を倒したらしい。さすがは第7階級の勇者。他とは一線を欠く。
今天界では一日ほど経ったので、この世界では10日くらい経っているだろう。
あとは見守らなくても大丈夫そうなので、この世界を管理する神に、もし何か大きな出来事があったら教えてほしいとだけ伝えようとおもう。
ワタシは近くにあった紙を取り出すと、内容と宛先を書き、家の前のポストに投函した。これで配達神でリバーがすぐに届けてくれるはずだ。
さて、今日やるべきことは終わった。あとは暇なので己の強さでも上げておこうと思った矢先。手紙が届いた。
『すぐにこい
ゼウス』
そこにはそう書いてあった。
嫌な予感がするな。
■
ワタシはアテナの屋敷を最も大きい屋敷といった。
だがそれは天界の中でだ。
そしてゼウスは天界の1個上の次元である天上界にすんでいる。それは天界と同じ程の広さでありながら、全てがゼウスのものである。
いくら天界で一番大きな屋敷といえどもこれには叶うまい。
そして屋敷の大きさはそれがそのまま権力、あるいは神としても格につながってくる。
つまりそれほどまでにゼウスは圧倒的だということだ。
ーーーーよく来たなーーーー
ワタシが天上界へやってくると、話しかけられた。
姿は、見えない。
ーーーーここに来てもらったのは他でもない、お前のその頭脳を買っているからなのだよーーーー
「また、世界の均衡を戻せばいいのでしょうか」
俺は振り向きながらそういう。
そこにはゼウスがたっていた。
「そうだ」
「わかりました。それでは詳細は追ってヘラかアテナから聞きます」
通常であればこれで終わるはずだった。ゼウスは面倒な説明をしないのだ。
「まあ待て。今回はそうとは行かないのじゃ」
どうやらワタシの外れてほしい予感が当たったようだった。
「というと?」
「今回救ってほしい世界はちと異常でな、上位悪魔が潜んでおる可能性があるのじゃ」
ワタシの頬をツーっと汗が垂れる。
それは上位悪魔のせいであろうか。
そもそも悪魔自体が厄介なのだ。
ワタシたち天界に唯一あだなす存在。そして神を殺しうる存在。それが悪魔なのだ。
そして上位悪魔とは文字通り上位の悪魔を指す。その力は強く、神ですら対応策を考えなくてはならない。
その一番の特徴はやはり、ワタシたち調停者と同じ、世界渡りのちからがあることだろうか。彼らはワタシたちと同じように、様々な世界を飛び回ることができる。
これによって、不利になれば逃げ出し、逆に好機と見れば襲いかかってくる。
他にも憑依や人心掌握など、嫌なところはあるが、それには叶わないだろう。
だからこそ、神は常に悪魔を殺そうとしている。
今回は、行く前から上位悪魔がいるとわかっているのだ。こんな好機なかなかない。確実に仕留めたいのだろう。
だが、神は地上に降りれない。降りたとしたら神ではなくなってしまう。だから調停者たるワタシに頼んだのだ。
そもそも、調停者はそれぞれの世界に直接干渉することができない。魔法はその世界で使えないし、暴力もだめ。更には先進した技術を伝えることもいほうだ。だからこそ勇者なり、魔王なりを召喚することで直接干渉することをさけているのだ。
だが例外もあって、それはある一定以上の強さを持つ悪魔だ。要は上位悪魔が当てはまることになる。
それらはワタシたちと同じ世界にとっての異物、という扱いになるので異物同士戦うことができる。
あとは天界や天上界では通常通りの力を出すことができるが、ここが戦場になることなどめったにないだろう。
そんな悪魔だったが、大抵勇者が召喚されると世界から逃げ出してしまうことがおおい。やつらは少しでも死ぬリスクを避けたいのだ。
だから今回は勇者を召喚せずにやれと言われたのだろう。
だがそんなこと、無理に等しい。ワタシがそう言おうと思った瞬間、
「それでは頼んだぞ」
と言われ、天界に返されてしまった。
どうやら断ることはできないらしい。
俺は大人しく家に帰る。
ポストにはこれからワタシが調停しなくてはならない世界の情報が書いてあった。
それを読み漁っているうちに、ワタシに妙案が浮かんでくる。
「これは、いけるかもしれないぞ」