其ノ壱拾四 死する時
最近スランプなので、
更新が不定期になっております。
ご了承願います。
エリスは、レネの背を見、目を細めた。そして、キッと妖魔を見ると、
「汝、レネニ何ヲシタ?」
低く唸りながら言った。
「背中を少し焼いただけじゃない。クスクスッ。あぁ、今でも思い出すだけでゾクゾクするわ。この子の悲鳴!」
キャハハハハッと妖魔は笑いだす。妖魔は、赤髪に灰色の目を持ち、黒いローブを着ていた。見た目は十代半ばごろの少女である。
「さぁてと。あなたの悲鳴も聞いてみたいものね。裏切り者の、
シユネさん」
「!」
笑い声を上げながら、少女はそう言い、エリスは目を大きく見開いた。
「汝――――、何故、その名を……」
「教えてほしい?気になるわよねー。あはっ。じゃ、教えてあげても良いけど、どーなっても知らな――――」
「良いから、教えろ!」
エリスが怒鳴り、少女は「ハイハイ」と手を振る。
「フフッ。じゃ、話してあげる」
その口調が、エリスには気に食わなかったが、何故この見ず知らずの少女が、母から呼ばれていた自分の名を知っているのか、気になった。
「あなたの母を殺した女性『アテ』はね、私に戦いの云々を教え込んでくれた師匠なのよ」
「ア……テ」
エリスは、その名に心当たりがあり、眉を寄せた。
「クスクスッ。聞き覚えがあるみたいね。そう、アテは、
あなたの母親ヘラの親友だったのよ」
「親友、だと……?」
エリスは絶句し、そんなエリスの反応を見て、ニヤニヤと少女は笑っていた。
「だから、私の師であるアテさんは、あなたの小さい頃も知っているし、本名も知っている。その弟子の私があなたの本名を知っていてもおかしくないでしょ? あなたの母親は、親友に殺された。ま、あなたの母親が悪かっただけ――――」
「母は悪くない!」
エリスは絶叫すると抜刀し、
「はあぁぁぁぁっ!」
少女に走り寄りながら、切りかかるために刀を振り上げた。
しかし、
ニィッと少女は笑うと、エリスの刀をその右腕で受け止めたのだ。
キイィィ――――ン!
堅いもの同士がぶつかる音が周りに響く。
「!」
エリスは驚き、後ろに跳んで少女との間合いをあけた。
「ザンネ〜ン。私をナメてもらっちゃ困るからね」
少女はそう言うと、スッとローブの裾をたくし上げる。
少女の腕には、鎧で使うような、頑強な鉄のプレートが付けられていたのだ。
「一筋縄ではいかぬということか」
フフッと少女は笑い、エリスは静かに少女を睨む。
「今度は私から行かせてもらうよっ!」
少女はそう言うや、パチンッと指を鳴らした。
刹那、エリスの立っている場所で炎の手があがった。
が、瞬時にエリスは反応し、炎を避けていた。炎に当たったワンピースの裾が燃え、焦げる。そのままエリスは少女の方へ駆け、刀を振り上げた。少女はあっさりと刀を右手で受け止めると、エリスに顔を寄せた。
「憎い妖魔の弟子と戦う気分はどう?シユネさん」
「だまれ!」
エリスは刀をはじくと、丁度少女の首辺りで、横薙ぎにした。が、少女はしゃがんでそれを避けると、
「はぁっ!」
気迫と共に、上を通り過ぎるエリスの腕めがけて、拳を繰り出した。素早くエリスは手を引っ込めようとしたが、
「!」
カラーンッ!
間に合わず、刀を握っている部分を思いきり殴られてしまった。腕を殴られていれば、間違いなく骨折だっただろう。しかし、握り部分を殴られたため、その痛みに刀を取り落としてしまった。
「あはっ。バカね」
少女はそう言うと、エリスの鳩尾に蹴りを入れた。
「がっ!」
変な声を上げ、エリスは後ろに立っていた建物まで吹っ飛んだ。そのまま壁にぶつかり、ガクッと膝を落とす。
「ふっ。ふははははははっ!無様ね、ボロボロじゃない」
「くっ……!」
「最後にこの耳で、よぉくあなたの悲鳴を聞いてあげるわ。サヨウナラ」
少女は言い、スッとその右手を掲げた。すると、その手にだんだんと大きな炎の塊ができ、
「これで終わりだあぁぁぁぁ――――!!」
少女の手からそれは放たれた。
ビュンッ!
炎は風を鋭く切り裂きながら、エリスへと向かい、そして、
ドスッ
「うわあぁぁぁ――――!!」