其ノ壱拾参 忍び寄る影
灼熱と共にエリスを襲ったのは、黒い煙だった。普通の人間なら、とうに気を失っているというほど、大量の煙をエリスは吸い込んでしまっていた。しかし、そこは人間より丈夫な妖魔のエリスだ。服の袖を口元にあてながら、中心へと近付く。しかし、
「何故だ・・・・・・。全く気配が、ない」
エリスは、気配がないことを訝しみ、眉を顰める。
「炎を放って逃げたか・・・・・・。気配を操る者か・・・・・・」
そう呟き、ふと立ち止まった。周りの家々は燃え、ゴウゴウと音が立っている。道には、真黒な炭と化した人がゴロゴロと転がっていた。
その時―――、
「きゃあぁぁぁ―――!!」
「!」
エリスはすぐさま叫び声に反応し、
「しまった!レネか―――!」
身をひるがえすと、行きより数倍速いスピードで駆け出した。
時はさかのぼり、エリスがいなくなってから少したったレネの立つ場所。
「・・・・・・・・・・・・」
レネは、周りの気配に気をつけながら、じっとそこに立っていた。
その時、
「!」
寒気に似た気配が、レネの全身を走り抜けた。
はっとレネは振り返り、周囲を見回す。しかし、誰もいない。自分の周りをぐるりと一回転して見回すが、影はどこにもなかった。
「どうしてだ・・・・・・」
レネは焦ったように、困惑したように、そう呟いた。
気配とは、その人物のいる特定の場所から感じるものだ。しかし、
その気配は、周りのどこからも感じるのであった。
それはまるで、レネを覆うようにグルグルと渦巻く。
レネは冷や汗を流しながら、ポーチからスッとダガーを取り出した。
暫くの静寂。そして、
黒い影が、レネに襲いかかる―――。
「!」
後ろから襲いかかって来た敵に気付いたレネだったが、時すでに遅し。
「ぐっ!」
うなじに鋭い痛みを感じ、景色がグラリと歪んだ。
ドサッ!
そのまま前に倒れる。その反動で、手からダガーが飛んでしまった。
「まだまだ幼い子供じゃない。オーラがハンパじゃないと思ったのに」
レネのうなじを殴った妖魔はそう言うと、クスクスッと笑った。
そして、
『燃え盛る焔よ、我の力となり姿を成せ!』
妖魔がそう言い、指を鳴らした瞬間だった。
「きゃあぁぁぁ―――!!」
「あははっ。そんなに痛い?痛いわよねぇ」
炎が一瞬でつき、倒れているレネの背を炙ったのだ。炎は一瞬で消えたが、レネはその痛さに、気を失いかけた。が、
「だ・・・・・・めだ。戦わなけれ、ば・・・・・・」
そう言って、腰のポーチにゆっくりと手を伸ばす。
「チッ。気絶していれば良いものを」
妖魔がそう言い、また指を鳴らそうとした時だった。
「レネ!」
「あら。お仲間かしら?」
妖魔はそう言い、声の方を見やった。
そこには、息を切らしたエリスが立っていた。服が炎に焼かれ、所々焦げていた。
「エリス・・・・・・さ、ん―――――」
レネは朦朧とする意識の中でエリスを見てそう言った。
そして、その言葉を最後に、ガクン、と首を力なく落としたのであった・・・・・・。
はい。ここまでは何とか書くことができましたが、
こ、ここからがちょっと問題・・・・・・。
あともう少し頑張ったら、良いところに行くのに―――!!
あ、皆さん覚えていますかっ?
エリスの父親は、エリスと母を捨てて、出て行っているということを。
はい、ここ大事ですよー。テストに出まーす(※実際にはそんなものでません)。