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妖魔狩り  作者: 望月満
12/22

其ノ壱拾壱 悲しき過去


お久しぶりです☆

いよいよエリスの過去、突入!!



「シユネ、如何(どう)してなのかしらね・・・・・・?どうして、妖魔たちは人間を殺すのかしらね?人間ははるかに我ら妖魔より行動力も知力も長けているのに・・・・・・。このままでは、妖魔は終わりだわ。それが分かっていて、如何して争うのかしらね―――――。

    妖魔とは、何て愚かな生き物なのだろう・・・・・・」

「・・・・・・お母、さん?」

「シユネ、あなただけは生きなさい。このままでは、いけない。生きて、生き延びて、シユネ。どんな穢れた手を使おうとも。あなただけは―――――」

 母は何時(いつ)でも正しかった。そう何時だって・・・・・・。 

我に正しい道を教え、我は正しい道を歩んできたはずだった。


それなのに―――――。



 それは、ある夜のことである・・・・・・。


 ガタッ ドスンッ

床に倒れる音。その大きな音に、我は目を覚ました。寝ぼけ(まなこ)のまま、我はその音に訝しみ、寝ている部屋と、居間を隔てる(ふすま)を少し開け、居間を見る。

次の瞬間、

押し殺した、母の悲鳴。誰のものか分からぬ、押し殺した笑い。そして、

ギラリと鈍く光る、鋭い刃。

無意識のうちに我は息をのみ、双眸を大きく見開いていた。

ザシュッ ドスッ

切られるたび、母の鮮血が床にも壁にも、我が(のぞ)く襖の隙間にもかかる。

「裏切り者め」

 ドクン

心臓が跳ね上がり、息が荒くなる。呼吸が思うようにできない。

襖のすぐ傍に、母が倒れていた。その顔は蒼白になり、胸と腹には無残な切り傷がいたるところにできていた。腹の中からは血まみれの内臓が見えている。

母を殺したのは、女の姿をした一匹の妖魔だった。

幼き頃の我は、ただただ恐怖で身体が動かず、ガタガタと震えるばかりだった。

そんな震える我の気配に気付いた女は、こちらを向き、ニヤリと笑った。


―――笑った。・・・・・・・・・・・・笑った?


何故?母を殺しておいて、

奴は笑っている―――――!


ギリッと歯を食いしばり、我は後ろに手をついて、後ずさりした。そして、

ガラッ!

襖が開けられ、我がいた寝室に女が入ってくる。

「オマエハ誰ダ?」

 我は女に低く言う。女はそんな我を見、クスリと笑った。

「何て威勢のいい子なのかしらね。それに―――――、

  とても良い瞳をしているわ」

「ひ、とみ・・・・・・」


「そうよ。他人を平気で殺すことのできる、残酷な者の持つ瞳をあなたはしている」


「我は違うっ!」

 必死に叫び、強く首を振った。

「我は―――――、汝とは違う!」

「そうかしら?私と同じ瞳をしているのに、ね」

 ニヤリと、女の赤い唇が嘲笑を帯びる。


紫の髪に、我と同じ、赤い瞳。


「かわいそうな子ね。母親が殺されちゃって。あら、そういえば、父親は何処に―――――」

「そんな奴!我にはいない!!」

 鋭く叫んだ我を、女は面白そうに見た。

「ふぅん。イヤな思い出でもあるって訳ね。―――――ま、もう思い出すこともないでしょうけれど」

 クスクスクス。

女は笑い、手に持った刀をスッと構えた。そして、

「これで終わりだあぁぁぁ―――!!」

 振りかぶりと、思いきり振りおろした。


我めがけて。


しかし、我は瞬時にそれを避けていた。

巨大な破壊音が響く。我が先ほどまでいた場所の壁に、大きな穴が開いていた。

「!」

 女は不意を突かれたように驚き、我はとっさに穴めがけて突進していた。

砕かれた壁の穴は、外に通じていた。ゴロゴロと我は外に転がり出、すぐに身を起こすと、駆けだした。

母と今まで過ごしてきた、森の奥にある木造りの小さな家に、背を向けて。

森の中を、いつまでもいつまでも駆けていた。


―――シユネ、あなたは生きなさい―――


母のその言葉ばかりが、頭の中で駆け巡っていた。



 ・・・・・・どれくらい駆けただろう?何処まで駆けただろう?

次第に我は疲れを感じ始め、そして、

「あっ!」

 ドサッ

木の根に(つまず)き、派手に転んでいた。

その瞬間、眼にジワリと涙が(にじ)む。

空しく、木々に囲まれた場所。


独りぼっち・・・・・・。


―――――そう、我は独りになってしまった。


母はいない。いつも正しい道を教えてくれた母は、もう―――。

我等、妖魔の在り方に、疑問を抱いたというだけで・・・・・・。

母の言ったことは、正しかったのかもしれないのに。

それなのに、「裏切り者」と言われ、殺されたのだ―――。


 それから暫くの後、我は『妖魔狩り』というものを知った。そして、わずか六歳という若さでメンバーに入った。入って暫くは、妖魔狩りの師である女性に狩りについての様々な知識を教えてもらい、十歳になったときには狩りを始めていた。

母を殺した者を狩るために―――。

我がまだ幼い頃、母を見捨てた、

父を狩るために―――。


『妖魔狩り』となった瞬間、我はもとの名を捨てた。今では本名が分からない。ただ、母には省略して『シユネ』と呼ばれていたことを覚えている。

そして、元の名は今の穢れた我にとても相応(ふさわ)しくない名の気がするのだ。


だから、我は元名を捨て、新しい名を自分自身に付けたのだ。





エリス(争い)という、今の我にふさわしい名を―――――。






・・・・・・いかかだったでしょうか?

これでエリスが何故仲間である妖魔を狩るのか、お分かりになったと思います。

そしてそして、「エリス」の名前の由来。

エリスとは、ギリシャ神話の争いの女神のことです。

エリスはニュクス(夜)の子で、ギリシャ神話の英雄であるペレウスと海の女神テティスの結婚式にすべての神々が出席したのに、ただ一人招待されなかったというエピソードがあります。

ギリシャ神話って、結構面白いですよ♪

さて、エリスの元名である名の略名「シユネ」が、本当は何なのか分かる方が、読者の中にいるのではないでしょうか?(特にギリシャ神話ファンの人は♪)

しかし、分かっていても評価などの欄にはカキコしないでくださいね。後々本名も書こうと思っているので☆もしも「もしかしたら、コレかな?」というのが、思いつき、私にお知らせしたい人がいれば、「メッセージを送る」で送ってください♪

さすがに、そこまでする人は、いないかもしれませんが・・・・・・。

さてと、それからお知らせしておきたいことがあります。

この度、私は7月22日から8月2日までの間、東京山梨旅行に行くため、当分投稿はできません。もう一つ、投稿している方の「トラベラーズ」も、投稿は無理かと思われます。

度々読者さまにはご迷惑をおかけします。

それでは、何卒よろしくお願いいたします。

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