其ノ拾 蒼き少女は語る
まずは最初に言っておく。スラムで殺されてしまった、私の父と母と弟だといった人たちは、「仮の家族」だ。私には他に、本当の家族がいたのだが、訳あって仮の家族の人たちに拾われた。何故、そうなったのか、それを今から話そう。
私の実の家族には、父と母と姉と妹がいる。私の父は蒼の瞳をし、母は蒼い髪を持っていた。いたって家族仲は良かったし、私も姉にも妹にも文句はなかった。
だけど、そんな平穏な日常を切り裂くように、突然にその日はやって来てしまったんだ―――――。
私の住んでいた南部の町には、あまり妖魔は現れず、平和だった。だけど、
「ただいま」
まだ五歳だったころの私が、遊んで家に帰って来た時だった。
グシャ!ドスッ
「―――がっ!ぐぅ・・・・・・」
父の変な呻き声。肉にナイフを突き刺す音が、妙にリアルに伝わって来た。
「何・・・・・・?」
私は不安と不思議な気持ちに駆られながら、忍び足でゆっくりと歩き出す。そして、
「ひっ!」
息をのみ、足元を見る。夕闇の鈍いオレンジの光に照らされたもの。それは、
血だった・・・・・・。
「何で―――――」
血の流れてくる方向を辿っていくと、近くのリビングに繋がっていることが分かった。恐る恐るそちらへ行くと、
「嘘・・・・・・。嘘、嘘、嘘だあぁぁ―――!!」
血まみれの、母と姉と妹が倒れていた。腕が変に曲がっていたり、切り刻まれた顔がグシャグシャだったり、首が取れかかっていたりした。
「何で・・・・・・何で何で!何で―――」
「あら、一人残ってたのね」
その時、冷たい声が上から降って来た。振り返るとそこには、
赤い瞳に紫の髪の女性が立っていた―――――。
「赤い瞳に、紫の髪―――だと?」
そこまで黙って聞いていたエリスが、目を見開いて言った。
コクリ頷くレネ。
「それが、どうかしたのか?」
レネが問い、エリスはかぶりを振った。
「いや。・・・・・・いい。続けてくれ」
家族を殺した妖魔は、ニヤリとしてレネを見る。
「丁度良いわ。あなたには罪をかぶってもらおうかしら?」
女は怪しく笑い、そして―――――。
「・・・・・・そこからは、良く覚えていないんだ。気がついたら、血のベットリついたナイフを握らされていて、自分も血だらけだった。だから、逃げた。このままだと、私が殺したのだと思われるから。しかし、私が握っていたナイフから取った指紋で、私が犯人と決められたのだ」
「―――――そうだったのか」
「それから、スラムへとたどり着いた私は、親切な家族の人たちに拾われ、今に至っている。・・・・・・話は以上だ」
レネはそう言うと、黙り込んで窓の外を見つめた。
レネの話を聞いたエリスは、窓の縁で頬杖をつき、何かを考え込むように、窓の外の流れてゆく景色を眺めていた。
―――赤い瞳に紫の髪の妖魔―――
「他人を平気で殺すことのできる、残酷な者の持つ瞳をあなたはしている」
あの日の記憶が、エリスの中にまざまざと浮かび始める。
そして、
「レネ」
「何だ?」
「我も――我と、同じように家族を殺されてしまった、汝に話しておこうと思う……。我の、過去の話を」
ついに、レネの過去を書きましたよ―――!!
そしてそして、さらに次回はエリスの過去が明らかにっっ!!!
何故エリスは仲間である妖魔を狩るのか、何故仲間呼ばわりされたくないと言うのか・・・・・・。
などなど・・・。
が、しかし、この金土日は、県の陸上のほうに行ってまいりますので、明日、明後日、し明後日は当分書けません。
テスト期間以来のご迷惑をおかけします。
でわ・・・。