其ノ九 疑念
一方その頃、逸れてしまったレネはというと、
人ごみに揉まれ、エリスの背を見失い、
「・・・・・・はぁ」
独り、溜息をついていた。その後すぐに辺りをキョロキョロと観察しだす。人ごみで視界は遮られ、小さなレネにとっては辺りを見まわすだけでも一苦労だった。その時、
チラリと視界の端が、ホームの柱の下にあるベンチを捉える。レネは人ごみの中、そちらへ向かって歩き出す。そして、ベンチの前まで行くと、そこに腰掛け足をブラブラさせた。
レネはエリスと逸れた場所で待つ方が、無駄に動いて入れ違いになるより良いということを、ちゃんと分かっていたのだ。
一方のエリスは、
一体何処でレネと逸れたのかも分からないため、来た道を引き返して歩いていた。
大量に行きかう人々をなるべく避けて歩くため、壁沿いに進む。
壁際には、浮浪者や家のない者などが、力なくもたれていたりした。そんな中、エリスは歩み、
そして―――――、
「!」
目の端に、何かを捉えた。それは、
壁に貼られた、一枚の紙だった。
賞金のかかった罪人が写されている紙。その紙の写真に写されている少女。それは、
まぎれもない、レネだった。
蒼い髪と蒼い瞳。違うのはまだ少し今より幼いということだけ。
内容によると、
エイレネ(当時五歳)は、家族である父、母、姉、妹の四人を殺害し、逃亡したらしい。
「・・・・・・・・・・・・」
黙ってエリスはその紙を見ていたが、すぐに目を離し、歩きだした。
しかし、その目は僅かに陰りを帯びていた。
二人の乗る汽車がホームに着く頃、
「あ」
ベンチに座り、ボ〜っとしていたレネが、ふと声を上げた。そして、すくっとベンチの上に立つと、エリスの姿をしっかりとその目で捉える。
エリスもすぐにレネの姿に気付いて、こちらへ駆けよって来た。
「急ぐぞ」
エリスはレネの手を取り、急ぎ足で汽車に乗り込んだ。
ピ―――
鋭く長い汽笛の音とともに、二人が乗った後、すぐに扉が閉められる。二人は乗り込んだ扉に近い席に向かい合って座る。レネはじっと外を眺め、エリネはレネを見ていた。
―――あの紙は何なのか?家族を殺したとは?
「レネ」
エリスが名を呼ぶと、レネはエリスを蒼い瞳で見返してきた。
「汝、犯罪者なのか?」
暫くの沈黙。エリスはじっとレネを見、レネは少し目を伏せていた。
そして、
「違う」
きっぱりと、そう言った。が、
「しかし、世間ではそうなっている」
と付け足す。
「・・・・・・何故だ?」
「―――話すとしたら、最初から話した方が良い」
レネはそう前置きして、ゆっくりと自分の“本当”の身の上を語りだした。
次回、レネの過去が明らかになりますよ!!
さて、最近色々とありまして、投稿がなかなかできていません。。。
すいません。しかも、最近全然、というか、全く私の小説を読んでくれている人がいない。。。
と、ブルーになっていたのですが、アクセス数グラフの方の不具合で、出ていないだけでした☆
読者がいる、ということはやっぱり作者にとって、一番の糧となりますね☆