序章 月光のそそぐ丘で
双子月、アルテミスとダイアナが煌々と輝く夜。アルテミスとダイアナは双方共満月である。煌く青い月アルテミスと、輝く黄の月ダイアナは、僅かに重なっていた。
二つの月の光りが照らすある小さな丘。その上には、大樹がそそり立ち、風に木の葉がさわさわと音を立てている。
その大樹の上。そこに女性がいた。女性は年の頃にして十代後半ほど。漆黒の長髪は風で優雅になびく。服装は風変わりで、白に黒のフリルのついたブラウスを身に着け、その上から裾の広い和風のワンピースを纏っていた。こちらは、淡いグレーに、袖口と襟の部分が黒をしているものだ。
「運命の糸を紡ぐクロト、その運命を割り当てるラケシス、逃れえぬ定めであるアトロポス、汝等は、何故我にこのような運命を与えたのだ―――?」
ぎゅっとその女性は右手で拳を握る。
サアアァァァァァ。
風が丘の上に吹きわたり、女性の髪を乱舞させた。女性は顔を歪ませ、何処を見るでもなく、視線の先に広がっている山々を睨んでいる。
その炎のようであり、また血のようでもある真っ赤な瞳には、人間のものとは思えぬ鋭い光を宿していた・・・・・・。
I Love ギリシャ神話―――っ!!
って、すいません。登場そうそう叫んじゃって。
しかし、私はギリシャ神話が大好きです(ソレガ何?
今回出てきた「クロト」「ラケシス」「アトロポス」とは、ギリシャ神話に出てくる、「モイライ(運命の三女神)」のことなのです。
そしてそして、かの有名な、「アルテミス」!ギリシャ神話に登場する、太陽神「アポロン」の姉と呼ばれる月の女神です。「ダイアナ」のほうは、ローマ神話に登場する月の女神です。
と、そんなこんなギリシャ神話について語っている作者ですが、今後とも、どうかお付き合いお願いいたします。