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魔法の練習

 俺がこの世界に転生して早くも4年が経った。


 転生した時は一歳だった俺も現在では5歳であり、一人で歩けるようにもなった。前世の記憶がある分、まだまだ動かしにくいが、それは今後に期待である。


 そして、その5年間の間で分かったことが沢山ある。まず、俺自身について。前世での名前はクラインだったが、今世での名前はアーレイン。愛称はレインで、両親や村の人にはそうやって呼ばれる。


 家族についてだが、俺の両親は、父はとうもろこし農家、母はパン屋をやっているらしい。父が汗水垂らして作ったとうもろこしを、母が製粉したり、時には乾燥させたり、そしてこねて焼いてパンを作っているそうな。ちなみに、畑の規模がかなり大きくて、村の中では小金持ち程度に収まっている。

 でも、家族ルールとして、服装や食事は基本的に平々凡々だ。無駄に着飾って村人からの反感や嫉妬を買うよりは、よっぽど賢い選択だと言える。


 名前は父がセリアスで母がフローラと、どちらも綺麗な響きの名前だ。その点、俺も変な名前はつけられなかったんだけどな。例えば……キャベチとか。前世にいたんだよな、キャベチ。


 今度は俺の住む村だ。その名をカリア村といい、王都などの主要都市とは近いとも遠いとも言い難い、微妙な位置に属している。貿易商がたまに通りかかったりすると寄り道してうちのとうもろこしを買っていってくれる時もある。


「……そう考えると、ここは転生先として中々いい場所だったと言えるかもな。さて、そろそろ再開するか」


 俺はここ最近、夜は布団の中で魔法の練習をしている。深夜であるため、決して起きているのを悟られてはいけない。一度それをして母親から非常に鋭いお叱りが飛んできたからだ。中身は大人とはいえ、中々に辛いものだったため、二度同じ過ちを繰り返さないために布団の中で、なのだ。ちなみにやらないと言う選択肢は無い。


 実は、この時代の常識では、子どもは魔法を使えない。7歳になると行われる『洗礼の儀式』にて初めて才能の有無が発覚し、王都にある魔法学院に入学してようやく魔法を学べるようになるのだ。


 また、魔法を使用する際に用いる『魔力』は人によって個人差があると言われ、その保有できる量は才能のみによるところだと思われている。確かに個人差こそあるが、保有量は決して才能だけではない。努力によっても変化する。むしろこっちの方が大事だ。


 この方法は転生前の俺が、当時の国王に依頼されて見つけた魔力増強法なのだが、戦争などの争い事がめっきり減ってしまった今の世の中では、別に子どもの頃から無理に育てる必要は無くなったのだろう。


「……まぁ、今の世の中が平和な証拠だし、俺としては嬉しい限りだが」


 ちなみに、今の目標は、魔法学院へと入学することだ。学院への入学は、友達づくりのテンプレートだから、何としても学院へ行きたい。


 ……大事なことだからな。最重要事項と言っても過言ではない。


「さて、そろそろ魔力切れか? 今日のラストスパートだ」


 俺は、身体に残った魔力をすべて消費しきってから眠りについた。魔力が切れると眠くなるから、丁度いいのだ。ちなみに、風魔法である。他は布団の中じゃできない。


「おやすみ……なさい」


 母に、挨拶はしっかりしろと言われているのでね。


 ------------------------


 翌日。


「ついに……ついにやったぞ!」


 と、俺はガッツポーズを作る。何があったのか簡単に説明すると、両親の説得に成功し、ようやく一人で家の外へ出る許可が降りた。もちろん、村から出るのなら、日が落ちる前に帰れとも釘を刺されているが。


 そんな俺は、外でやりたかったことがある。……無論、魔法だ。


「……前世では氷魔法が多かったし、炎魔法にも手を出してみるか」


 前世の俺は賢者なのでありとあらゆる魔法に精通していた。こんな考えがあったのだが、流石にこの身体では家の中で炎魔法を制御するのは難しかったのだ。一歩間違えば大火事になりかねないので控えておいたのだが、外に出ることができた今、やらない手はない。


「よし、この辺なら大丈夫かな」


 村外れの誰も住んでいないボロ屋の裏に、石畳の広場のような場所を見つけた。ここなら、誰かに見られる可能性も低いし、可燃物も少ないしで、安心して練習ができる。


「じゃあ早速……『灯火(トーチ)』」


 片手を差し出し、そこへ火を灯す。成功だ。その名の通り周囲を明るく照らす小さな炎を生み出す魔法で、攻撃には向かない。ただし、迷宮探索などでも重宝する魔法なので、地味に使う機会がある魔法だ。


「ついでに他の属性も試してみて、どの属性をメインにするか決めるか」


 その後も色んな属性や効果を持つ魔法を試してみたのだが、結局のところ、すぐにうまく扱えたのは炎、氷、風の3種類だった。他の水や雷、土、光と闇、回復と補助の魔法はまだまだ難しいようだ。この身体の適性にもよるが、5種類くらいは出来たらいいな、と思う。前世は全て使えただけにちょっとだけ悔しい。


「……とは言っても、今回は家族や友人を守れるレベルまでで良いな。魔王とか冥王とか倒さなくていいし」


 とか何とか思いつつも、守るために使う力。実体を伴うタイプの土魔法や、回復系が欲しかった。こればかりは仕方がないので、練習するしかない。今日は、そろそろ日も傾き始め、門限も迫ってきているので、魔力の残滓などを消してから家路に着いた。


 村はそこまで広くないためすぐに帰ることができた。扉を開けて中へ入る。


「ただいまー」


 と声を張って自分が帰ってきたことを知らせる。すると、パタパタと音を立てて、小さな黒い影が玄関へ飛び出してきた!


「レインおかえりー!」

「おぉ、ティア。ただいま。()()()こっちなのか?」

「うん。でも、レインがいるから、寂しくないよ!」


「……それは良かった」


 背中の中ほどまでの長さの艶やかな茶髪を揺らし、クリっとした栗色の瞳とその小さな身体に愛嬌を感じさせるこいつは、俺の唯一の幼馴染み、ティアだ。俺の家の隣に家族と住んでいる。ちなみに兄弟や姉妹はいないらしい。そこんところは俺と一緒だ。


 まだ幼いからなのか、明るい性格で、人当たりも良く気遣いが出来る。

 しかし、天然である。年上の男の子の集団に入り込み、気まずい空気を生ませちゃうような奴だ。俺は中身が大人なので大丈夫なのだが、他のやつはそうも行かない。動くたびにぴょこぴょこと揺れ動く赤みがかった茶髪のお団子や、くりっとした瞳は愛嬌があり、大変可愛らしい容姿をしているのだ。幼馴染み補正を抜きにしても十分可愛らしい様子である。村の大人たちからは、『カリア村の太陽』とも言われたり言われなかったり。


 ちなみに、俺はロリコンではないので、多少ほっこりする程度である。村の男子たちは違うようだが。


 喜色満面な笑みを浮かべながらじゃれてくるティアをいなしていると、奥から俺の母、いや母さんがキッチンから顔だけ出して言った。


「今日もティアちゃんのご両親は仕事で居ないそうよ。レイン、ご飯ができるまでティアちゃんの相手をお願いしていい?」

「分かった。出来たら呼んでね」


 実は、ティアの両親は、どちらも王都で働くエリートなのだ。父親は騎士団の副官で、母親も同じく騎士団の魔術師であるらしい。それでも王都へ移住をしないのは、ひとえに愛娘のためらしい。

 その愛され少女曰く、「レインと離れるのは嫌!」だそうだ。それを聞いた時は、久しく感じたことの無い感情に、顔を真っ赤にしたのを覚えている。普通に恥ずかしった……。


「ねぇねぇレイン、あの本の続き読もうよ」

「いいね。前は森の奥に進んだところまでだったよね?」

「うん!」


 そんな会話を交わしつつ、俺に部屋で二人して絵本鑑賞に勤しんだ。夕食は母さんの手作りシチューだったのだが、これがまた美味しい。その時の話題はなぜか『夢』についてで、母さんと父さんは俺たちを立派に育て上げることで、ティアの夢はというと……


「レインのお嫁さん!」


 ……だそうだ。これには流石に驚いた。さらに言えば、本来ならティアの父親が言われるべき言葉を奪ってしまったような気分になって、ちょっと申し訳なかった。

少しでも面白いと感じて頂けたら、

ブックマークや評価、感想などよろしくお願いします。

作者は狂喜乱舞します。

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