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幕間 2

WSCで聖稜館へ行くための方法を模索した後、昼食休憩としてログアウトした将暉。そこにはちょうど来客の姿があった。


 昼食のために無事忌々しい世界からログアウトし、平和で傷の残った世界に帰ってきた。


 優しく日の光に包み込まれた写真盾を眺める。


 どうして俺はこの真実に気づいてしまったのだろう。


 俺は昔から情報が揃ってさえいればあらゆる真実を『視る』ことができた。例えば盗まれた同級生の上履きや細やかな嫌がらせの数々、教師の不満や先輩の自殺の真相。そして、大人の汚い欲望にまみれた両親の事故すらも。


 この言わば特殊な体質のせいで俺は見たくもない人の暗い面を大量に見てきたのだ。とはいえ昨日の祭りの一件でシンジの行動を正確に咎められたのはこれのお陰でもある。


 こんな俺だからこそ『真を知る者』なんて仰々しい限定称号をもらったのかもしれないが。


 厭世的になっていると、ふいにドアのノックする音が聞えた。


「将暉、お客さんだよ」


 声の主は祖母だ。どうやらちょうどいいタイミングでログアウトしたらしい。


 適当に返事をして外行きの服に着替えると素早く部屋を出て玄関へ向かった。階段を降りる途中で祖母と来客の話し声が聞こえる。数は一人。同い年くらいの女か。


 この時点で大体来客の正体には察しがついた。


「将暉君。こんにちは」


 来客の二人が俺に気付いて声を掛けてきた。


 俺も軽く手を挙げて返す。


 来客の正体は柏木優衣。背まである黒髪に端正な顔立ち、そして穏やかで優しい性格とまあ何とも男子に人気のある人物だ。祖父母宅の隣に住んでおり、彼女の両親と俺の母親が同級生だったため引き取られる前から交友はあった。


 中学の時はもう一人の友人である井上雄太と一緒に三人で行動することが少なくなかったし、俺を含む三人とも同じ高校なのでこの縁はもう少し続きそうである。


 ここで俺は改めて彼女が来た目的を考える。


 玄関で立ち話するということは遊びに来たわけではない。


 かと言って買い物に行く誘いならスマホで連絡すればいい。


 つまり、直接来る必要があり、かつ俺に事前連絡が要らない内容。祖母が呼んできたのは単に俺の知り合いが来たということからだろう。


 そしてコイツは料理やお菓子作りを趣味の一つとしている。今は昼間でそこまで手の込んだ料理は作っていないだろうから最も可能性が高いのは……。


 祖母が何かを持って台所へ向かうのを確認して俺は柏木に訊いた。


「何かケーキでも焼いたのか?」


「ふふ。さすが将暉君ですね」


 そう口元に手を当てて微笑む姿は実に絵になる。雄太が惚れているのも無理はないだろう。


 俺の思考に気付くことも無く和やかに柏木は続ける。


「今日はガトーショコラを作りました。会心の出来ですよ」


「それは楽しみだな。ありがとう」


「いつもお世話になっているお礼です。また依頼が溜まってきているので今度お手伝いをお願いしてもいいでしょうか?」


 依頼ね。


 柏木は表向きはただのお淑やかな少女だが、コイツの部屋は一般的な少女のものとはかけ離れている。いや、一般人とはというべきか。


「ネット上の探偵ごっこなんていつまで続けるつもりだ?」


「人助けになるんですし、いいじゃないですか」


「くれぐれも警察沙汰にならないように気をつけろよ」


「分かってます」


 やはり花のようにほんわかと微笑む姿からは裏の顔が想像できない。


 まあ限度を守るならもう少し手を貸すか。それに俺が断わりにくい状況を作り出すのが直接来た目的だろうし、そもそも元凶は俺だしな。


 俺が了解の意を伝えると柏木は礼を言う。詳細は後日メールするとのこと。


 その後、近々控えている高校の入学式について適当な情報交換をしてから柏木は帰っていった。


 昼食後に食べたガトーショコラは程よい甘さと苦みで俺は満足しながら自室へと戻ったのだった。


やや日にちが空いてしまいました。……というのも、またしても大幅な推敲をしていましたので(言い訳)。

応募していた新人賞では一次審査最通過止まりでしたが、低限の日本語は書けているとポジティブにとらえて執筆しています(笑)

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