9/24
9
彼女にしては(彼女と出逢ってまだ、それほど経ったわけではない私が言うのもおかしな話ではあるが)、はっきりとした力強い声で答えが返ってきた。
私は、つい立ての向こうを覗き彼女の様子を確かめようか一瞬、迷った。
ここまできて、彼女の信頼を失う事態は最も避けたい。
何があったのか確かめたい好奇心と、彼女に私の慌てぶりを見せ警戒させてしまうリスクを頭の中で咄嗟に天秤にかけた。
私は、ぐっとこらえた。
何かが起こったとしても、ここは私の屋敷の中だ。
そんな致命的なことは起きない。
それよりもこの後、彼女にコーヒーを飲ませるほうが重要だ。
そのためには、私がどんな状況でも紳士であると彼女に思わせるのが都合が良い。
よって、つい立ての向こうは見ず、このまま声だけをかけるのが最善の策である。
私はそう結論を出した。
すると。
今度は彼女が何やらブツブツと言っているのが聞こえてきた。
それもかなりの間、延々と呟いているのだ。