8/24
8
きっと最低限の信頼は得られている。
私は作業の終了を告げ、彼女につい立ての後ろで服を着るように指示した。
彼女はそれに素直に従った。
私は彼女が見えなくなった隙に、あらかじめ用意していたピューターの魔法瓶からコーヒーをカップに入れた。
彼女のコーヒーにだけ、懐から出した小瓶の中の液体を入れる。
睡眠薬だ。
彼女が着替え終わる前に慌ててスプーンで混ぜる。
くそっ。
少し、こぼしてしまった。
ハンカチで拭き取る。
ささいな失敗にイラついて、あたふたしていると突然。
「え!?」という彼女の声がした。
まさか彼女が、つい立ての陰から私の細工を覗いていたのではあるまいか?
血の気が引く思いで、つい立てを見たが彼女はこちらに顔は出していない。
大丈夫、大丈夫だ。
とにかく落ち着け。
「どうしました?」
私はハンカチをポケットに戻しながら、できるだけ冷静を装って訊いた。
「いえ!! 何でもありません」