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やっと呟きが途切れたと思ったら、すぐにまた始まる。
何だ、これは?
いささか度を越してやいないだろうか?
だが一度、つい立ての向こうは見ないと決めたのだ。
私は努めて優しい口調で「松岡さん」と呼びかけた。
「は、はい!! 少し待ってください」と彼女。
落ち着け。
彼女は確かに、つい立ての向こうに居る。
何も問題はない。
私の企みは揺るがない。
その後、しばらくは彼女の呟きが続き、そしてようやく服を着た彼女がつい立てから姿を現した。
私は妙な違和感を覚えた。
確かに彼女だった。
まごうことなき、松岡七奈嬢であった。
ではあったが、少々、言葉では説明しにくいのだが何というか。
少し。
ほんの少しだけ。
弱々しく頼りなげであった彼女の表情が、きりりと引きしまっているように思えた。
だから何なのだ。
そう言われれば、そうではある。
単に高額報酬のヌードモデルという大役を果たしたので、彼女の緊張が解けただけではないのか?




