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氷魚の母
氷魚の母・・八重子
八重子は重病を抱えていてかなりやせているが、まだまだ氷魚よりはよほどしっかりしていた。
八重子は若いころからかなり苦労していて仕事もしていた。13歳から郵便局で仕事をし、その後都会へ出て新聞社で手伝いをしていた。かなりの美人記者として憧れる人も多かったようだが、今は見る影もない。その当時の同僚がテレビで活躍しているのを食い入るように見る。八重子は同僚の新聞記者と駆け落ちをして仕事を離れ、その後苦労してひとつの地位を築き上げていた。報道局社長夫人として。
ひとつの時代が終わった・・・と八重子は感じた。自分の時代は終わった。
ダンス、歌声、スカート、パーマネント、華やかな笑い声が横切る。
娘の氷魚は30代なのに幼い。彼女は母親である自分がまさか死ぬとは思ってもいないようだ。